交通事故に遭ってしまい過失割合で争っていたり、保険会社との話し合いがうまくいかないなど示談に納得いかない事があります。
そのような時の解決手段の一つが裁判です。
では,裁判を起こすとなると,
「裁判期間はどのくらいかかるのだろう?」
「頻繁に打合せなどにいかないといけないのか気になる…」
このようにお考えではないですか?j
交通事故で1000件以上の相談実績を有する大隅愛友弁護士が交通事故の「交通事故の裁判期間」について徹底解説します。
交通事故で裁判にかかる全体の期間は平均13.3か月です。
訴状を作成して,提出してから1~2ヶ月後に第1回口頭弁論を行い,月1回ほどのペースで争点整理・証拠提出が約5か月間あります。その後和解成立すればその時点で終了。不成立であれば尋問を行い1~2ヶ月後に判決となります。この記事をお読みいただくことで、全体の期間と流れ,ケースごとの期間を把握できると思います。
ぜひこの記事を参考にしていただき、弁護士への相談を検討していただければ幸いです。
1.交通事故の裁判にかかる期間は平均13.3ヶ月
交通事故の損害賠償をめぐる裁判で、審理の終了までにかかる平均期間は13.3ヶ月です なお、これは訴訟中に和解した事案も含んだ期間です。 判決の出た裁判に限定すると、平均期間は18.6ヶ月となります。また、訴訟は第一審で終わるとは限りません。
控訴審・上告審と訴訟が展開していくと、さらに訴訟期間は長くなります。
ここでは、平均審理期間や裁判の流れとそれぞれの段階での期間を説明します。
平均審理期間
下記は,裁判を起こしてから終結するまでの平均審理期間です。
平均審理期間 |
割合 |
---|---|
6ヶ月以内 |
16.7% |
6ヶ月超1年以内 |
39.1% |
1年超2年以内 |
36.7% |
2年超3年以内 |
6.0% |
3年超5年以内 |
1.4% |
5年を超える |
0.1% |
※ 「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」【資料2-2-1】より
※ 令和2年に結審した事件の統計
およそ55.8%の裁判が1年以内に、92.5%の裁判が2年以内に終了していることがわかります。
交通事故の裁判の流れと手続き
交通事故の全体の流れと期間がこのようになります。
2.裁判のそれぞれの段階でかかる大体の期間
ここでは,それぞれの段階ごとの期間を表しています。
おおむねの期間 |
|
---|---|
訴状作成~訴状提出 |
1か月 |
訴状提出~第1回口頭弁論(争点・証拠の提出) |
1~2ヶ月 |
第1回口頭弁論~和解協議 |
裁判により異なるが 月1回ペース |
和解不成立の場合、尋問~判決 |
1~2か月後 |
訴状を送付してから第1回目期日までの期間は1ヶ月~2ヶ月以内
裁判を行うことを示すためには、まず裁判所に訴状を提出します。訴状作成は,通常1か月ほどで弁護士に任せることも可能です。事件を担当することになった裁判官が内容をチェックします。形式的に不備がなければ裁判手続きを行う日時を指定され通知が届きます。訴状を提出してから1~2ヶ月後に第1回口頭弁論期日があります。
第1回口頭弁論は平均で1.7回行われ、間隔は平均1.9ヶ月。終了するまで5か月ほどかかる
口頭弁論とは、当事者またはその代理人が法廷で、裁判官に主張を述べることです。
裁判では、口頭弁論を繰り返して、双方の主張と争点を明確にしていきます。
交通事故の民事裁判では、口頭弁論は平均で1.7回行われ、間隔は平均1.9ヶ月です。
口頭弁論などの審理の期日は、約1ヶ月ごとに1回の頻度で開催され、ほとんどの案件のうち約80%以上が3回以内に終了していますので、口頭弁論や争点整理、証拠調べ・尋問手続きなどの審理自体が終了するまでに5か月ほどの期間を要することになります。
口頭弁論 |
平均 |
---|---|
平均口頭弁論期日回数 |
1.7回 |
平均期日間隔(月) |
1.9ヶ月 |
※ 「裁判の迅速化に係る検証に関する報告書」の【資料2-1-1】より
※ 令和2年に結審した事件の統計
また、初回の口頭弁論は訴状や答弁書、証拠書類などの確認で完結し、5~10分で終わってしまうことも多いです。口頭弁論の最後に、次回口頭弁論の日程調整が行われます。
争点整理・証拠提出の期日は1ヶ月に1回
口頭弁論で双方の主張や争点が明確になったら、次は口頭弁論の内容を踏まえ、双方が主張を客観的に裏付ける証拠を提出します。
裁判所は提出された証拠の確認をし、場合によっては尋問を行います。
尋問が行われる期日の回数は1ヶ月に1回、平均的な尋問人数は0.4人です。
なお、交通事故の裁判の場合、訴訟中に和解が成立せず、判決まで至るようなケースで尋問が行われることが多いです。尋問の対象者は事故の被害者および加害者であることが多く、尋問されることになれば出廷しなければなりません。
和解または判決。判決までとなると平均1年半くらい
裁判が終わる理由として代表的なものが、和解ならびに判決です。
裁判所の統計によると、交通事故の民事裁判は73.1%が和解で終わり、18.5%が判決で終わっています。
判決に不服なときは判決正本を受け取ってから2週間以内なら上訴できる
判決に納得がいかない場合、判決正本を受け取ってから2週間以内なら、より上位の裁判所に上訴できます。なお、1回目の上訴を控訴といい、控訴からさらに上訴することを上告と言います。
控訴する場合は、第一審の裁判所に控訴状を提出します。その後、控訴状を受理してから50日以内に控訴理由書を提出する必要があります。
裁判所が控訴理由書を確認し、開廷が妥当と認められれば、第二審(控訴審)が開始されます。ただし、控訴が棄却され、第二審が行われないことも珍しくありません。
第二審以降も、基本的には第一審と同じように裁判の手続きを進めていきます。当事者の双方が上訴をしなければ、判決が確定し、裁判が終了します。また、上訴しても棄却されてしまった場合も、判決が確定し、裁判終了となります。
3.裁判期間が短くなるケース
どうしたら、期間を短くできるのか。それは、和解です。和解は、裁判のどの時点でも行えます。
和解が成立した時点で裁判は終了し、和解調書が作成されます。裁判の途中で和解成立した場合、その時点で裁判は終了。終局まで平均1年以内。ここでは、どんなケースだと和解成立しやすいかを説明します。
もらい事故で過失がない
過失割合とは交通事故における互いの過失の度合いを割合で表したものです。
もらい事故とは,一般的に,被害者にまったく落ち度がなく,被害者と加害者の過失割合が0:10の事故をいうことが多いです。
もらい事故の典型例は,路肩又は信号待ちで停止中に追突されるケースです。
他にも,青信号で交差点に進入した際,信号無視をして交差点に進入した車と衝突したケースや,見通しのよい道路を直進中,反対車線を走行中の対向車がセンターラインをオーバーして正面衝突したケースも,通常,過失割合は0:10です。
後遺症がない
後遺障害が残ることなく完治した場合や、後遺障害非該当とされた場合でも裁判を起こすことができ交通事故で怪我をして入院・通院した治療証明書のみの証拠提出で論点整理の期間に時間があまりかかりません。
4.交通事故の裁判が長くなる原因
和解に応じない場合、弁論手続きの終結から判決言い渡しまでの期間は平均2.0ヶ月です。
ここでは、交通事故の裁判の期間が長くなる原因についていくつかの類型があるので説明していきます。
過失割合に争いがある
多くの交通事故では、被害者側にも過失割合がつくことになります。
被害者側に過失割合がつくと、その分損害賠償金が減額されるので、過失割合について争うことは非常に多くなります。とくに、交通事故が起こった状況について当事者双方の意見が食い違っていると、争いになることが多いでしょう。
具体的には、以下のような点が争点になることが多いです。
①当事者は信号を守っていたか
②当事者の車は速度を守った運転をしていたか
③当事者の車はウィンカーを出していたか
交通事故の状況は、車に搭載されているドライブレコーダーや事故現場周辺の防犯カメラ、警察が作成した実況見分調書、目撃者の証言などを通して証明していくことになるでしょう。
事故で被害者に後遺症が残った
後遺障害が残ると、損害賠償金が高額になりやすいため、争いが生じやすくなります。
また、後遺障害が残ったとき請求できる「逸失利益」は、被害者側と加害者側でとくに主張が食い違いやすい費目です。
なお、逸失利益とは、後遺障害によって減った将来的な収入の補償のことを言います。
一部の後遺障害が生涯収入に影響するかは、裁判の段階では明確に判断しにくいところです。
しかし、後遺障害によって生じる損害への補償額は、裁判の時点で決めてしまわなければなりません。
被害者側は「生涯収入に影響する」と主張することになりますが、加害者側は「仕事に影響はないので生涯収入に影響しない」などと主張するため、争いが生じるでしょう。
こうしたことから、後遺障害が残ると客観的に定められない事項についての争いが生じやすくなり、裁判が長引くのです。
事故で被害者が亡くなった
後遺障害同様に、死亡事故の場合も損害賠償額が高額になりやすいため、争いが生じやすい傾向にあります。また、遺族感情もあるため、互いに譲歩しづらい状況が生まれることが多いでしょう。さらに、交通事故の当日ではなくしばらく経ってから亡くなった場合は、「交通事故のせいで死んだと言えるのか」といった点で争いになることもあります。
上記のような場合、診断書や治療経過などの証拠品を用いて主張・立証していくことになるでしょう。
しかし、専門的分野の判断はむずかしく、証拠品も膨大になります。
その結果、裁判が長引いてしまうことが少なくないのです。
鑑定が実施された
鑑定とは、専門的知識と経験を持つ鑑定人に、判断や意見を求める手続きのことです。
交通事故の裁判では、裁判所の指名により鑑定が実施されることがごくまれにあります。
たとえば、被害者の怪我に関する医療的な鑑定や、ドライブレコーダーから再現CGを作成する鑑定などがあります。
鑑定が実施された場合、裁判にかかる平均期間は34.5ヶ月となります。
鑑定を実施しない場合にくらべて、平均期間が2倍以上になってしまいます。
鑑定が必要となるほど難しい専門的な分野で争っているため、裁判が長引くことになるのです。
なお、鑑定が実施される裁判は年間数十件程度です。
5. 交通事故の裁判期間中の時間拘束
ここまでで、訴訟の判決までの期間や和解することで裁判期間が短くなることがわかりました。では、実際裁判を自分で行う場合と弁護士に依頼する場合、拘束時間はどのくらい違いがあるのかを説明していきます。
自分で裁判を行う場合
裁判を提起すると平均して7~8回程度裁判所に出廷する必要があります。交通事故の裁判は平日日中にしか行われないので、お仕事をされている方などは7~8回も裁判所に出廷する時間を作るのは大変かと思います。裁判所は通常、1つの期日につき、30分~1時間程度の時間を設けています。ただし、本人尋問や証人尋問の期日はより長い時間が設けられ、場合によっては1日がかりになることもあります。
裁判に必要な訴状や書面などの専門的な書類、証拠集めをすべて自分でしなければならない為、大きな手間と時間がかかります。また、裁判になったら裁判所に出廷しなければいけない。
こちらについても、統計データがあり、以下の表のようになります。
交通事故の民事裁判の平均期日回数(第一審)
口頭弁論期日 |
2.1回 |
争点整理期日 |
5.5回 |
5.2 弁護士に頼む場合
事案や依頼後の状況によって異なりますが,スムーズに手続きが進めば1度もご来社されることがない場合もあります。また複雑な状況によってはご来社にてお打ち合わせさせていただくこともありますが,お電話やメールでもできますので都度,事務所に来社していただく必要はありません。
まずは、法律事務所にお電話もしくはメールで問い合わせをして相談してみましょう。
弁護士に依頼するまでの流れ
- 日程を調整して弁護士に無料相談をする。(大体1時間くらい)
- 弁護士が事故の内容などについてお聞きし、アドバイスや裁判の流れ、費用を説明します。
- 裁判をするかどうか判断する。
検討した上、弁護士に依頼する場合、交渉手続きや必要書類を弁護士に一任できる。
原則として当事者の方は裁判所への出廷が不要になります。
ただし、弁護士に依頼した場合でも、本人尋問期日は必ず出廷する必要があり、証人尋問や和解期日にも出廷を求められることがあります。
まとめ
交通事故における裁判の期間は、早ければ6か月以内、平均的には1年程かかります。裁判の途中で和解成立すればその時点で終了し,和解成立しなければ1年半くらいかかるでしょう。裁判の期間について不安がある、裁判そのものを悩んでいるならば、まず弁護士に相談することをおすすめします。