追突事故を弁護士へ依頼する3つのメリット|適正な慰謝料増額のために

監修者ベストロイヤーズ法律事務所
弁護士 大隅愛友
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慰謝料の増額、後遺障害認定のサポートを中心に、死亡事故から後遺障害、休業損害の請求に取り組んでいます。
交通事故の被害者救済のために、積極的に法律・裁判情報の発信を行っています。
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この記事でわかること
- 追突事故は弁護士へ依頼すべき3つの理由
- 追突事故の被害者は交渉で自分の保険会社を利用できない
- 追突事故でよく争われる問題
- 追突事故の慰謝料の基準と相場
- 追突事故の弁護士費用
追突事故は、交通事故の事故類型の中で約3割と非常に大きな割合を占めています。
(出典:内閣府 交通事故白書)
常日頃、安全運転を心がけていても、後続車に追突されるリスクは防ぎようがありません。
追突事故の場合、被害者には一切の過失がないため、加害者側に慰謝料を満額請求することができます。ただし、被害者側の保険会社には示談交渉を依頼できないため、交渉が難航するおそれがあります。
したがって、追突事故の被害に遭った場合は、弁護士に依頼して交渉してもらうことをお勧めします。
この記事では、追突事故の交渉・裁判を弁護士に依頼すべき理由や、交渉でよく争われる問題、慰謝料の基準と相場、弁護士費用の目安について解説します。
1 追突事故は弁護士へ依頼すべき3つの理由
追突事故の被害に遭った場合、相手方との交渉や裁判を弁護士に依頼すべき理由は大きく分けて3つあります。
1-1 慰謝料の増額が見込める
交通事故に遭った際に請求できる慰謝料の算出方法の基準は、大きく「自賠責基準」「任意保険基準」「裁判基準(弁護士基準)」の3つに分かれます。
自賠責基準は交通事故の被害者に対し、法令で定められた最低限の補償を行うことを目的とした基準なので、慰謝料は少額になりがちです。
任意保険基準は、自動車の任意保険会社が独自に設けている基準のことです。保険会社によって基準は異なりますが、自賠責基準とほぼ同等か、それよりやや多いくらいが一般的のようです。
最後の裁判基準(弁護士基準)は、これまでの判例を参考に設定された基準のことです。
相手方の任意保険会社はできる限り慰謝料の減額を求めてきますが、弁護士基準なら実際の判例に基づいて慰謝料を算出、請求できるため、ほかの基準よりも多くの慰謝料を獲得できる可能性があります。
【関連記事】交通事故で慰謝料を最大限獲得するために知っておきたい知識を弁護士が徹底解説
1-2 交渉を一任できるため治療に専念できる
追突事故でむち打ちなどのケガを負った場合、被害者は病院で適切な治療を受けなければなりません。忙しい合間を縫って通院しつつ、加害者とも交渉するとなると、日常生活に支障を来すおそれがあります。
弁護士に依頼すれば、交渉のすべてを一任できるため、被害者はケガの治療に専念できます。
【関連記事】交通事故で保険会社が嫌がること6選|保険会社と対等にやり取りを行うためのポイント
1-3 後遺障害等級が認定されやすくなる
後遺障害等級とは、交通事故による後遺障害の程度に応じて認定される等級のことです。後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料や逸失利益などを請求できるようになり、より多くの慰謝料を得ることが可能となります。
ただ、後遺障害等級は申請すれば必ず認定されるわけではなく、一定の認定基準を満たしていることを証明しなければなりません。
等級認定は原則として書面で審査されますが、なかには基準が曖昧な部分も多く、提出する書類不足や記載の表現によっては適切な認定を受けられない可能性があります。
後遺障害等級の認定基準や過去の判例を熟知している弁護士に依頼すれば、適切な後遺障害等級の認定を受けられる確率が高くなります。
【関連記事】後遺障害が認定されたらどうなる?認定や示談の流れ、弁護士に依頼するメリットについて
【関連記事】後遺障害診断書のもらい方~手続きや取得のポイント
また、後遺障害が非該当とされた場合でも、異議申し立てを行い、再審査を求めることもできます。
【関連記事】後遺障害の異議申し立てについて~具体的な流れや成功するためのポイントを解説
2 追突事故の慰謝料の基準と相場
追突事故に遭った場合の慰謝料は、治療日数をベースとして、特定の基準をもとに算出されます。
【関連記事】慰謝料請求に重要な入通院日数の数え方と計算方法を弁護士が解説!
ここでは追突事故の慰謝料の基準と、おおよその相場について解説します。
2-1 慰謝料の基準
「1-1 慰謝料の増額が見込める」でも説明した通り、慰謝料の算出基準には自賠責基準、任意保険基準、裁判基準(弁護士基準)の3つがあります。
自賠責保険の慰謝料は1日4,300円と定められており、これに対象日数を乗じて計算します。
対象日数は被害者の傷害の状態や実治療日数などをもとに、治療期間内で決められます。任意保険基準は、各保険会社が任意で基準を定めています。
どの保険会社も自社の基準は非公開としているため、慰謝料の目安を明確に知ることはできません。
弁護士基準は、公益財団法人 日弁連交通事故相談センターが発行している「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準(通称:赤い本)」をもとに算出されるのが一般的です。
赤い本は毎年2月に改訂版が発行されるため、その年によって基準が変わる場合があります。また、赤い本に掲載されている慰謝料算定表は、通常の怪我用で用いる基準(別表Ⅰ)と、他覚所見がないむち打ち症等の場合に用いる基準(別表Ⅱ)の2つに分かれています。
別表Ⅱは軽い打撲やねんざ、むち打ちのみの症状に用いられるものです。一方の別表Ⅰは、それ以外の通常の怪我の場合に用いられます。軽症用は重症の基準の約7~8割の金額が適用されています。
なお、いずれの基準も過失の有無や割合の影響は受けませんので、通常の事故でも追突事故でも同じ基準が用いられます。
2-2 慰謝料の相場
慰謝料は治療日数や症状の度合いなどをもとに、それぞれの基準に応じて算出されるため、「相場はこのくらい」と断言することはできません。
ただ、4-1でご紹介したそれぞれの基準をもとにすると、おおよその相場は以下のようになります。
ケース1:通院2ヶ月の場合
自賠責基準:1日4,300円×60日間=25万8,000円
任意保険基準:約25万
弁護士基準:約36万円(別表Ⅱ)
ケース2:入院1ヶ月、通院3ヶ月の場合
自賠責基準:1日4,300円×120日間=51万6,000円
任意保険基準:約60万円
弁護士基準:約115万円(別表Ⅰ)
重ねての説明になりますが、上記はあくまで目安であり、実際の慰謝料の金額は症状の度合いや治療日数、各保険会社が採用している基準、過去の判例などによって左右されます。
ただ、上記の目安からもわかる通り、慰謝料の相場は弁護士基準が最も高額になると考えられます。
より多くの慰謝料を獲得したいのなら、弁護士への依頼がおすすめです。
更に、飲酒運転、ひき逃げなどの特別な事情がある場合には、慰謝料が加算されることもあります。
【関連記事】飲酒運転の交通事故の示談金の相場|慰謝料の金額を増額できます
【関連記事】当て逃げはすぐに警察へ。法的な責任と賠償金を弁護士が解説!
3 追突事故の被害者は自分の保険会社を利用できないから弁護士へ依頼
追突事故に遭った際、被害者が特に注意しなければならないのは、自身が加入している任意保険会社を利用できないことです。
弁護士法第72条では、弁護士または弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で訴訟事件などの法律事件に関して鑑定、代理、仲裁、和解などの取り扱いを業とすることを禁じています。
さらに同法第73条では、誰であれ、他人の権利を譲り受けて訴訟、調停、和解そのほかの手段によってその権利の実行をすることを業とすることを禁止しています。
双方に過失がある交通事故の場合、それぞれが相手方の任意保険会社に対して損害賠償を請求することになるため、保険会社自身が賠償責任を負うことになります。
このケースでは、保険会社は自らの賠償責任を果たす目的で示談を行うので、「報酬を得る目的」で業を行っているとはみなされません。
ところが追突事故の場合、被害者側の過失割合はゼロになりますので、加害者から任意保険会社に損害賠償が請求されることはありません。
被害者側の任意保険会社は追突事故とは全く無関係の立場になるため、被保険者の示談交渉を行った場合、弁護士法第72条および第73条違反となってしまいます。追突事故に限らず、被害者側にまったく過失がない場合は、原則として任意保険会社に示談交渉を依頼することはできないので注意が必要です。
4 追突事故の交渉でよく争われる問題
追突事故の被害者が加害者側と交渉する際、よく争われる問題を2つご紹介します。
4-1 治療日数の問題
追突事故の被害者は、むち打ち(頸椎ねんざ)の症状を訴える方が多く見られます。むち打ちの平均的な治療期間は2~3ヶ月と言われていますが、症状には個人差があり、なかには完治や症状固定までに半年以上の期間を要するケースもあります。
【関連記事】交通事故の診断書の日数の記載の徹底解説|全治期間の意味から慰謝料との関係まで
治療の継続が必要か否かを判断するのは医師の役目ですが、保険会社は一般的な治療期間の目安をもとに、本来よりも短い治療期間での賠償金の支払いを打診してくることがあります。
交通事故によるケガが原因で入通院した場合、被害者は入通院慰謝料を請求できますが、慰謝料の額は入院・通院の日数をもとに算出されます。
本来よりも治療期間を短くされてしまった場合、入通院慰謝料も減ってしまい、被害者が不利益を被ることになります。
弁護士に依頼すれば、実際に治療にかかった日数をもとにした損害賠償請求を行ってくれるので、不当な治療費期間の短縮を防止できます。
4-2 治療費の打ち切り
追突事故で負ったケガの治療費は、加害者側の保険会社が支払うため、被害者が負担する必要はありません。
しかし、保険会社のなかには事故から一定期間が経過した後、ケガが完治しているか否かに関わらず、治療費の打ち切りを打診してくるところもあります。
適正な治療であれば、治療費を打ち切られた後でも後日費用を請求することは可能ですが、被害者側が一時的に治療費を立て替えなければならないため、経済的な負担が大きくなります。
弁護士に示談交渉してもらえば、担当医へ医療照会を行うなどして、まだケガが完治していないこと、今後も継続した治療が必要であることを証明してくれるため、治療費の打ち切り対策に役立ちます。
【関連記事】交通事故の「治療費の打ち切り」とは?不払いへの3つの対応方法を弁護士が解説
5 追突事故の弁護士費用
追突事故の示談交渉を弁護士に依頼した場合にかかる費用について解説します。
5-1 弁護士特約がない場合
追突事故の示談交渉を弁護士に依頼した場合の費用は、通常の交通事故の費用と同じです。
弁護士費用は大きく分けて「着手金」と「報酬金」の2つに分類されますが、かつては日弁連が定めた「日本弁護士連合会弁護士報酬基準」で統一されていました。
しかし、2004年4月1日に基準が撤廃され、現在は事務所ごとに独自の基準が設けられています。
そのため、弁護士費用の目安はいくらと一概に言い切れませんが、日弁連が公開している「市民のための弁護士報酬ガイド」では、以下のケースをもとに会員(弁護士)にアンケートを採った結果を、着手金と報酬金の目安として紹介しています。
【交通事故で重傷を負った被害者から損害賠償を請求された事例】
弁護士は1,000万円程度が妥当であると判断したものの、相手方の保険会社からは500万円が提示されました。被害者側が訴訟を起こし、その結果、1,000万円の勝訴判決を受けて任意に回収できました。
着手金
30万円(49%)
20万円(20%)
報酬金
50万円(35%)
70万円(18%)
着手金は依頼の時点で、報酬金は解決後にそれぞれ支払いますが、弁護士事務所のなかには着手金なしで依頼を受けてくれるところもあります。
5-2 弁護士費用特約がある場合
弁護士費用特約とは、任意自動車保険に付加できる特約のひとつで、交通事故の示談交渉を弁護士に依頼した場合の費用を保険会社が補償してくれる制度です。
弁護士費用特約で補償される弁護士費用の上限額は保険会社によって異なりますが、被保険者1人につき300万円に設定されているケースが多いようです。
上限を超えた分は自己負担となりますが、弁護士費用が300万円を超えるケースはさほど多くないため、大抵のケースでは実質無料で弁護士に依頼することが可能となります。
追突事故に遭ったら、自身が加入している任意保険に弁護士費用特約が付加されていないかどうか確認してみましょう。
【関連記事】「弁護士特約の利用は保険会社が嫌がる」ことなの?3つの理由と対応方法
6 まとめ
追突事故では被害者の過失割合がゼロになるため、自身が加入している任意保険会社に示談交渉を任せることができません。
自分で加害者側と交渉すると、日常生活に支障を来すおそれがあるうえ、治療日数や治療費の打ち切りなどでもめる可能性があります。
適正な治療をもとに、きちんと慰謝料を獲得したいのなら、弁護士に示談交渉を依頼することをおすすめします。
任意保険で弁護士費用特約を付加していれば、弁護士費用の全部または一部をカバーできますので、特約の内容も見直してみましょう。
【関連記事】交通事故を弁護士へ相談するベストのタイミングは?
慰謝料の増額、後遺障害認定のサポートを中心に、死亡事故から後遺障害、休業損害の請求に取り組んでいます。
交通事故の被害者救済のために、積極的に法律・裁判情報の発信を行っています。
全国からご相談を頂いております。ご希望の方はお電話またはwebでの無料相談をお気軽にご利用ください。