未支給年金は相続財産になる?年金の種類による違いを弁護士が解説

監修者ベストロイヤーズ法律事務所

弁護士 大隅愛友

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未支給年金は相続財産になる?年金の種類による違いを弁護士が解説

「親が亡くなった後に年金が振り込まれたけど、どうすればいいの?」

「未支給年金を受け取ると、相続財産として相続税を払わないといけないの?」

「年金の種類によって相続財産になるかならないかの違いがあるってほんと?」

などと、お悩みではありませんか。

大切な家族が亡くなると、深い悲しみの中でも多くの手続きをしなければなりません。未支給の年金も、はやめに手続きをとる必要があるのです。

また受け取った未支給年金が相続財産になるかどうかで、納税の仕方も変わってきます。間違えれば大きなトラブルになることも。

この記事では未支給年金は相続財産になるのか、また公的年金の未支給年金が請求できる条件や手続き方法まで、弁護士が詳しく解説します。

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1 未支給年金は相続財産になるのか?

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未支給年金が相続財産になるかならないかは、どのような年金であるかによって変わります。

ここでは、未支給年金とはどのようなお金なのか、また年金の種類による違いを解説しましょう。

1-1 未支給年金とは

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未支給年金とは、亡くなった人が本来受け取れるはずの年金のことをいいます。

公的年金は、前月と前々月分を後払いする仕組みです。そのため、亡くなった時点では誰でも必ず受け取れていない年金が発生することになります。

亡くなった人に受け取る権利があるにもかかわらず、まだ受け取っていない年金のことを未支給年金と呼ぶのです。

1-2 未支給年金は相続財産になる?ならない?

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未支給年金は、年金の種類によって相続財産になる場合とならない場合があります。

年金の種類は、大きくわけて以下の3つです。

  • 公的年金:相続財産にならない
  • 企業年金:相続財産になる
  • 個人年金保険:相続財産になる

ここからは、年金の種類による違いを解説します。

①厚生年金や国民年金など公的年金は相続財産にならない

厚生年金や国民年金など公的年金の未支給年金は、相続財産になりません。
受け取った相続人の一時所得となるため、相続税はかからずに所得税の対象となるのです。

未支給年金の受け取り金額が、ほかの一時所得と合わせて50万円以上となる場合には確定申告が必要となります。

②企業年金は相続財産になる

企業年金の期間満了までの未支給年金は、相続財産とされて相続税の対象となります。企業年金は、簡単にいうと企業が社員に年金を支給する仕組みです。

企業年金を受け取っている間に受給者本人が亡くなった場合、未支給年金を受け取る遺族と企業には直接的な契約はありません。

亡くなった受給者から遺族が受給権をゆずり受けたかたちになります。これを「契約に基づかない定期金に関する権利」といいます。

「契約に基づかない定期金に関する権利」は、みなし相続財産として相続税の課税対象となるのです。

ただし、企業年金のうち死亡した月までの未支給年金については、公的年金の未支給年金と同じように一時所得扱いになります。

③個人年金保険の私的年金は相続財産になる

個人年金保険などの私的年金の未支給年金は、相続財産になります。

未支給年金の受け取り額が高額になる場合もあるので、相続税の納付にも大きな影響をあたえることも。

個人年金保険は、金融機関や保険会社の加入契約ごとに内容がことなります。

証書を確認したり保険会社へ問い合わせたりするなど、未支給となっている年金の受け取りができるのかどうかを確認する必要があるでしょう。

2 公的年金の未支給年金を請求できる条件

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ここからは、公的年金の未支給年金が請求できる条件を解説します。

(注)企業年金や個人年金の場合は団体や加入会社などによって条件が変わります。以下の窓口で確認してください。

  • 企業年金:企業年金基金、企業年金連合会など
  • 個人年金:加入先の金融機関や保険会社など

2-1 未支給年金を請求できる人

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未支給年金を請求できる人には、以下のようなふたつの条件があります。

①亡くなった受給権者の配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹とそれ以外の3親等内の親族であること。

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引用元:厚生労働省「紙上 Live 講義 未支給年金」
 

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②死亡当時、亡くなった人と生計をともにしていたこと。生計をともにすることとは、下表の通りです。

1

住民票上、同一世帯に属している

2

住民票上は世帯が異なるが、住所が住民票上同じである

3

住所は住民票上異なるが、現に起居がともであり、消費生活上の家計をひとつにしていることが認められる

参考:厚生労働省「紙上 Live 講義 生計同一に関する認定条件」

2-2 未支給年金をもらえないこともある?

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請求権者の範囲ではなかったり、生計同一関係が認められなかったりすれば未支給年金を受けとることはできません。

2-3 未支給年金の請求は早い者勝ち?

未支給年金の請求は、早い者勝ちではありません。

未支給年金を受け取る遺族には、下表のように順位があり、先順位の高い人から優先されます。

未支給年金の請求は早い者勝ち?引用元:厚生労働省「紙上 Live 講義 未支給年金」

同じ優先順位の遺族が複数いる場合には、ひとりが代表して他の人の分まで受け取ることになります。

先に請求した人が、早い者勝ちで受け取れるわけではないのです。

2-4 未支給年金は死亡後いつまでもらえる?

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未支給年金を請求できる期限は、最後の年金支給日の翌月初日から5年以内です。

5年以内に請求しなかった場合、未支給分は時効となり受け取れなくなります。

また亡くなった人が、繰り下げ受給手続き中だった場合、時効の起算が65歳になってしまうのでできるだけはやく手続きをとりましょう。

2-5 未支給年金はいくらもらえる?

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未支給年金は、亡くなった月によってもらえる月数分が以下のように変わります。

  • 偶数の月に亡くなったとき年金額の1カ月分を請求できる
  • 奇数の月に亡くなったとき年金額の2カ月分を請求できる

労働省「紙上 Live 講義 未支給年金」

未支給年金はいくらもらえる?引用元:厚生労働省公式サイト「未支給年金お手続きガイド」

3 公的年金の年金受給者が死亡した場合の手続き方法

公的年金の受給者が死亡した場合の未支給年金を受け取る方法.jpg

ここからは公的年金を受給していた人が死亡した場合の、手続き方法を順に説明しましょう。

3-1 「受給権者死亡届」を提出し年金を止める手続きをする

年金を受給していた人が亡くなったら、「受給権者死亡届」を提出します

死亡したことにより年金を受け取る権利がなくなるので、年金を止める手続きが必要だからです。

「死亡届」を提出するだけでは年金は止まらないので、注意しましょう。(提出が遅れて、年金を多く受け取りすぎるとは返却が必要になります)

「受給権者死亡届」の提出期限は、以下のとおりです。

公的年金の種類

「受給権者死亡届」の提出期限

国民年金

死亡日から10日以内

厚生年金

死亡日から14日以内

 

「受給権者死亡届」の提出期限はとても短くなっており、提出を忘れると年金受給者が生きているとみなされ年金が振り込み続けられてしまいます。

年金受給者が亡くなったら、なるべくはやくに受給権者死亡届を提出して年金を止める手続きをしましょう。

3-2 「未給付年金請求の届け出」を提出

「未支給年金・未支払給付金請求書」を提出し、未給付年金請求の届け出をします。

請求権があるにもかかわらず、請求もれのために未支給年金を受け取れないケースもあるようです。

請求権のあるなしをしっかりと確認し、受け取る権利があれば忘れないように未支給年金の請求書を提出しましょう。

3-3 未支給年金手続きに必要な書類

未支給年金の請求には、「受給権者死亡届(報告書)」と「未給付年金・未支給年金請求請求書」の提出が必要です。
それぞれに必要な添付書類を以下で紹介します。

【未支給年金請求に必要な書類一覧】

提出が必要な届け出書類

添付が必要な書類

受給権者死亡届(報告書)

 

※日本年金機構にマイナンバーが収録されている人は原則不要

・亡くなった人の年金証書

・死亡の事実がわかる書類(どれかひとつ)

・住民票除票

・戸籍抄本

・死亡診断書のコピーまたは死亡届の記載事項証明書

未給付年金・未支給給付金請求書

・亡くなった人の年金証書・続柄が確認できる書類

・請求する人の生計が同じことがわかる書類

・受け取りを希望する通帳

・生計同一関係に関する申立書(請求する人が別世帯の場合)

※戸籍謄本・住民票は死亡日より後に交付のもの

参考:日本年金機構公式サイト「年金を受けている方が亡くなったとき」

「未支給年金請求」の書類提出先は、年金事務所または年金相談センターです。

ご不明点は、日本年金機構の年金ダイヤルおよび年金事務所で確認できます。

3-4 未支給年金が振り込まれるまで

未支給年金は、請求書類を提出し6カ月前後で振り込まれます。

【未支給年金の振り込み手続きの進み方】

  1. 未支給年金の請求書類提出
        ↓ 3~4カ月
  2. 「未支給【年金・保険給付】決定通知書」が日本年金機構から送付される
        ↓ おおむね50日
  3. 未支給年金振込完了

もし受給条件に該当しなければ、「不該当通知書」が送付されます。

4 公的年金の未給付年金は相続財産にならない|年金の種類によって注意が必要

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厚生年金や国民年金の未支給年金は、相続財産にはなりません

そのため一時所得となり、所得税の対象となります。一時所得は、特別控除の50万円を超える場合は確定申告が必要です。

また企業年金や私的年金の未支給年金は、相続財産になるので注意しましょう。

企業年金や私的年金の未支給年金であれば、高額になることも多く相続税の支払いに影響を与えることも。

このように未支給年金は、年金の種類により相続財産になるかならないかが決まります。

未支給年金を受け取るときは、相続税の対象か所得時の対象かに注意して手続きをすすめることが大切です。

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