高次脳機能障害の慰謝料はいくらもらえる?|相場や増額ケースなど弁護士が解説

監修者ベストロイヤーズ法律事務所

弁護士 大隅愛友

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高次脳機能障害の慰謝料はいくらもらえる?|相場や増額ケースなど弁護士が解説

この記事でわかること

  • 高次脳機能障害の慰謝料の種類
  • 高次脳機能障害の慰謝料の相場
  • 慰謝料を計算する基準
  • 慰謝料を増額できるケース
  • 慰謝料以外の賠償金の種類
  • 慰謝料の請求を弁護士に依頼するメリット

交通事故に巻き込まれて高次脳機能障害となってしまった。

高次脳機能障害は、ご本人及びご家族にとって大変負担が重い障害です。将来に対して経済的な不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。

高次脳機能障害という後遺症が残った場合、被害者は加害者に対して慰謝料を請求できます。

高次脳機能障害は、仕事や日常生活にも大きな影響を与える障害であり、いくら慰謝料もらえるのかが気になるところですが、それは個人の事情や計算方法などによって大きく異なります。

ベストロイヤーズ法律事務所でも、後遺障害3級、7級、9級など各レベルの高次脳機能障害の慰謝料の請求を行ってきた実績がありますが、そのいずれも保険会社との激しい交渉が必要でした。

適切な慰謝料を請求するには、慰謝料の種類や慰謝料以外の賠償金があるなど、高次脳機能障害の慰謝料・賠償金について理解を深めることが大切です。

【関連記事】高次脳機能障害は弁護士で変わります|交通事故の後遺障害の等級認定から交渉までお任せ

1 高次脳機能障害の慰謝料は2種類

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交通事故で高次脳機能障害を負った場合、加害者に対して賠償金を請求することができます。

高次脳機能障害の賠償金の中で重要なのは、「慰謝料」と「逸失利益」と「介護費用」です。

高次脳機能障害の場合、請求できる慰謝料には以下の2種類があります。

入通院慰謝料(傷害慰謝料)
②後遺障害慰謝料

1-1 入通院慰謝料

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入通院慰謝料とは、入通院の際に生じる精神的な苦痛に対して支払われる、賠償金のことです。

交通事故によって高次脳機能障害を伴う重傷を負った場合は、脳挫傷など外科手術が必要な治療を先に行い、入院しながらリハビリ治療を実施することになります。

入通院慰謝料は、これら治療にかかった日数などを基に算出されます。

1-2 後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料.jpg

後遺障害慰謝料は、後遺症が残りそのことによって精神的苦痛を強いられた被害者に対して支払われる賠償金のことです。

治療を続けていると、「治療してもこれ以上良くならない」という状態に達することがあります(「症状固定」)。

その場合、実質的にケガを治すための治療は完了となり、残った症状は「後遺症」とみなされます。

後遺障害慰謝料が対象としているのは、後遺症が残っているとみなされた被害者です。後遺障害慰謝料を受け取るには、後遺障害と認定される必要があります。

【関連記事】交通事故の日常生活状況報告書の書き方|高次脳機能障害の後遺障害の申請

高次脳機能障害の場合、症状固定と診断を受けても、後遺症が残っているという場合がほとんどです。そして、後遺障害認定で高次脳機能障害と認められた場合は、慰謝料は高額になる傾向にあります。

次からは、高次脳機能障害の慰謝料の相場について解説します。

2 高次脳機能障害の後遺障害の慰謝料の相場 

高次脳機能障害の後遺障害の慰謝料の相場.jpg

後遺障害慰謝料の相場は、後遺障害等級によって異なります。

さらに、後述する3つの基準(「自賠責基準」「任意保険基準」「裁判基準」)によっても差が出ます。

2-1 等級ごとの慰謝料の相場

後遺障害等級は1級から14級まであり、等級が小さくなるにつれて重くなり、1級が一番重い後遺障害です。

ここでは、“3つの基準”の中の自賠責基準と裁判基準を用いた慰謝料の相場(2020年4月1日以降に発生した事故)をご紹介します。任意保険基準による相場は、各社によって基準が異なることなどの理由から割愛します。

等級

相場(自賠責基準)

相場(裁判基準)

1級(要介護)

1,650万円

2,800万円

1級

1,150万円

2,800万円

2級(要介護)   

1,203万円

2,370万円

2級

998万円

2,370万円

3級

861万円

1,990万円

4級  

737万円

1,670万円

5級       

618万円

1,400万円

6級   

512万円

1,180万円

7級       

419万円

1,000万円

8級  

331万円

830万円

9級       

249万円

690万円

10級  

190万円

550万円

11級  

136万円

420万円

12級     

94万円

290万円

13級  

57万円

180万円

14級     

32万円

110万円

2-2 後遺障害の種類

①別表1の後遺障害

別表1 1級1号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの

別表1 2級1号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの

②別表2の後遺障害      

別表2 3級3号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの

別表2 5級2号
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの

別表2 7級4号
神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの

別表2 9級10号
神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

3 高次脳機能障害の慰謝料の3つの基準

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高次脳機能障害の慰謝料の計算には、以下3つの基準があります。
・自賠責基準
・任意保険基準
裁判基準弁護士基準

3-1 自賠責基準

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自賠責基準とは、自賠責保険によって補償する際に用いられる基準のことです。

自賠責基準は、最低限の補償を行うことを目的としていて、3つの基準の中で最も慰謝料が低いといわれています。

自賠責基準による慰謝料は、政府(内閣総理大臣および国土交通大臣)が定めた基準に則って支払われます。この場合の入通院慰謝料は、最大120万円です(後遺障害慰謝料については、前述した相場を参考にしてください)。

3-2 任意保険基準

任意保険基準.jpg

任意保険基準とは、任意保険会社が慰謝料の算出をするために、独自に設定している基準のことです。一般的には自賠責基準よりも高額で、裁判基準よりも安いといわれています。

任意保険基準は各任意保険会社によって異なるうえ、公表されていません

そのため、どのような基準で算出されているかは、実際に示談交渉を行うまで予測することが難しいでしょう(示談交渉において、各賠償項目に「弊社基準」と記載されているものが、その保険会社の任意保険基準にあたります)。

3-3 裁判基準(弁護士基準) 

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裁判基準とは、過去の判例を参考に設定されている基準のことです。弁護士が賠償金の算出に用いることから、弁護士基準とも呼ばれます。

3つの基準の中でも慰謝料が一番高額になるといわれているのが、裁判基準です。

任意保険会社は、他の企業と同じく営利目的の組織であり、できるだけ低額で示談に持ち込もうとする傾向にあります。弁護士は被害者の事情と、過去の判例とを照らし合わせて適切な慰謝料を計算します。このベースの違いが、金額の差に出ると考えられています。

以上、3つの基準について解説しました。高次脳機能障害の慰謝料は、高額になる場合がほとんどです。

そのため、1%違ったとしてもその金額に大きな差が出ることがあります。各基準の特徴を知り、どの基準を用いて慰謝料とするか慎重に検討することが望まれます。

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4 高次脳機能障害の慰謝料増額ケース

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高次脳機能障害の慰謝料は、増額されるケースがあります。

それは、①加害者側が悪質な場合、②被害者側に重大な結果が生じた場合のいずれかに該当したケースです。

4-1 加害者側が悪質な場合

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加害者の悪質な行動によって交通事故が発生したり、事故発生後の加害者の言動が悪質と判断されたりすると、慰謝料が増額される可能性が高くなります。

この“悪質な行動”について明確な定義はありませんが、一般的には以下に該当する行為といわれています。

・無免許運転、ひき逃げ、酒酔い運転

・被害者に対して暴言を吐く

①無免許運転、ひき逃げ、酒酔い運転

これら3つの行為は、すべて法律に違反するものです。

無免許運転:自動車免許証を持たずに車を運転すること。道路交通法64条に違反

ひき逃げ:ケガをさせた被害者を置き去りにして現場を離れること。道路交通法第72条に違反

【関連記事】自転車のひき逃げはどうなるの?ひき逃げした・された場合の対処法を弁護士が解説

酒酔い運転:酒に酔った状態で車を運転すること。道路交通法65条に違反

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加害者のこうした悪質な行為が交通事故の発生につながり、さらに被害者を高次脳機能障害が残るほど深く傷つけたことから、慰謝料が増額される可能性が高くなります。

②被害者に対して暴言を吐く

交通事故後、加害者が被害者に暴言を吐いたり、脅すような言葉を浴びせたりすることも、悪質な行為とみなされます。

交通事故で傷ついているにもかかわらず、さらに暴言によって精神的苦痛を味わっているとみなされた場合は、慰謝料の増額が視野に入ります。

4-2 被害者側に重大な結果が生じた場合

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交通事故によって傷つくのは、被害者だけではありません。被害者の家族も精神的な苦痛を強いられることがあります。

家族が事故のショックによってPTSDを発症した場合
PTSDは“Post Traumatic Stress Disorder”の略で、日本語では 「心的外傷後ストレス障害」といいます。

惨劇を目の当たりにするなど精神的に強い衝撃を受けるような体験をすると、その時の記憶が突然よみがえり(フラッシュバック)、耐えきれないほどの恐怖に包まれたり、将来に絶望したりするといった症状が現れます。

被害者が交通事故で高次脳機能障害となり、それまでの生活が180度変わったことによって被害者の家族がPTSDを発症することがあります。

家族がPTSDを発症したことと、交通事故に因果関係があると認められた場合は、慰謝料が増額される可能性が高くなります。

5 高次脳機能障害の慰謝料以外の賠償金

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高次脳機能障害の賠償金は、これまでにご紹介した慰謝料以外にも以下のものがあります。

・逸失利益
・付き添い看護費
・休業損害

5-1 逸失利益

逸失利益とは、被害者が交通事故の後遺症がなければ得たであろう収入に対して支払われる賠償金のことです。

逸失利益は、以下のように算出されます。

「事故前1年間の基礎収入」×「労働能力喪失率」×「労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数」

・労働能力喪失率:交通事故の後遺症によって失われた労働能力の割合。労働能力の割合は、後遺障害等級によって異なる(参照:『労働能力喪失率表』)

・ライプニッツ係数:将来受け取る可能性のある収入を、前倒しで受け取る際に発生する利息を控除する係数のこと(参照:『就労可能年数とライプニッツ係数表』)

5-2 付き添い看護費

付き添い看護費とは、高次脳機能障害の介護に対して支払われる賠償金のことです。付き添い看護費に含まれるのは、治療中/治療後の介護費用です。

もし、後遺障害等級1級または2級(いずれも要介護)に認定された場合は、将来にわたり介護が必要であることが認められるため、将来にかかる介護費用の請求も可能です。自賠責基準と裁判基準の付き添い看護費用は、以下のとおりです。

 

自賠責基準

裁判基準

通院(1日あたり)

2,100円

3,300円

入院(1日あたり)

4,200円

6,500円

5-3 休業損害

交通事故のケガの治療で仕事を休むと、その分減給されることがあります。

減給分を補償するのが、休業損害です。休業損害が対象としているのは、治療を始めてから症状固定と診断される日までの期間です。

自賠責基準の場合、休業損害は休業日数に6,100円をかけて算出されます。裁判基準では被害者の実収入と休業日数を基に計算されるため、上限額は設けられていません。

【関連記事】主婦(主夫)でも休業損害を受け取れます|損をしない3つのポイントを弁護士が徹底解説

6 高次脳機能障害の場合の弁護士へ依頼するメリット

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高次脳機能障害の慰謝料を請求する場合、弁護士へ依頼することをおすすめします。

なぜなら、弁護士に依頼することによって以下のメリットを得られるからです。
・被害者請求での申立て
・裁判基準による交渉
・保険会社とのやり取りを全て任せられる
・裁判も対応してもらえる
・被害者参加も対応可能

6-1 被害者請求での申立て

弁護士に依頼すると、後遺障害の申請を被害者請求で申し立てしやすくなります。

被害者請求とは、後遺障害等級認定の申請方法の一つで、申請方法は他に「事前認定」があります。

後者は、必要な書類を任意保険会社が準備し、審査機関に申請します。前者は、被害者が自ら書類を準備し、審査機関に申請する方法です。

被害者請求には、加害者や任意保険会社を通さず賠償請求できるうえ、後遺障害に関する関連資料を添付しやすいというメリットがあります。

審査機関が後遺障害の認定に参考とするのは、基本的に提出された書類のみです。追加資料を提出しやすいということは、より症状の詳細を伝えることができ、適切な等級に区分される可能性が高まることを意味しています。

被害者請求では、被害者自身が必要な書類を全て準備するという手間があるのが難点です。

けれども、弁護士に依頼することで、被害者請求に関する手続きを代行してもらえます。弁護士に依頼すると被害者請求の申立てが容易になるという理由は、ここにあります。

6-2 裁判基準による交渉

弁護士に依頼することで、裁判基準による慰謝料を請求できることが可能です。

裁判基準は、自賠責基準や任意保険基準よりも高額になる傾向がありますが、裏を返せば十分な金額の慰謝料を請求できることを意味しています。

特に高次脳機能障害の慰謝料は高額になる傾向がありますので、後で「損をした」ということを防ぐためにも、弁護士に依頼することが得策です。

6-3 保険会社とのやり取りを全て任せられる

被害者が加害者から賠償金を勝ち取るまでには、治療を受けながら後遺障害等級の認定や保険会社との示談交渉といったプロセスがあります。これらに関する手続きは決して楽なものではなく、精神的にも肉体的にも大きな負担がかかりがちです。

弁護士は、被害者に代わり保険会社と示談交渉を行います。さらに、示談に必要な書類の準備も代行します。

弁護士を依頼すると弁護士費用が発生しますが、精神的な負担を軽減し、適切な慰謝料を受け取れる可能性があることを考慮すると、メリットの方が大きいといえるのではないでしょうか。

6-4 裁判も対応してもらえる

高次脳機能障害のように、賠償金額が高額になると、裁判に発展することが多くなります。

被害者にしてみれば、「裁判」と聞いただけで気が重くなりますよね。実際に、裁判に必要な書類の作成や手続きなど負担のかかる作業が続きます。それを弁護士に任せることは、大きな負担から解放されることにつながるでしょう。

6-5 被害者参加も対応可能

一定の重大事案の場合、交通事故のケースでも、被害者またはその遺族が加害者の刑事手続きへ参加すること(被害者参加)が認められます。

弁護士へ依頼することで、被害者参加についても、積極的に対応することが可能になります。

【関連記事】交通事故と被害者参加制度|死亡事故や高次脳機能障害で参加

7 まとめ

高次脳機能障害の慰謝料|弁護士・大隅愛友の解説.png

交通事故で高次脳機能障害になった場合の慰謝料について説明しました。

高次脳機能障害になった場合に受け取れる慰謝料には、①入通院慰謝料、②後遺障害慰謝料の2種類があります。

これらの慰謝料を適切に請求するには、裁判基準を選ぶことが無難です。裁判基準を選ぶということは、弁護士に依頼するという意味ですが、弁護士に依頼することで、

・適切な慰謝料の請求ができる
・慰謝料以外の賠償金についても請求できる
・裁判に発展した場合も対応してもらえる

など、慰謝料を請求する過程で被害者側が抱えがちな問題を解決してくれることが期待できます。

加害者から慰謝料が支払われるまでには、さまざまな手続きや、やらなければいけないこと(示談交渉や裁判など)が発生します。交通事故を専門とする弁護士に依頼して一つひとつ乗り越え、十分な慰謝料を手に入れましょう。

監修者

ベストロイヤーズ法律事務所

代表弁護士 大隅愛友

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