相続の調停を有利にする服装・持ち物とは?配偶者や子どもの付き添いは可能?
監修者ベストロイヤーズ法律事務所
弁護士 大隅愛友
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相続の調停(遺産分割調停、遺留分調停など)のため家庭裁判所へ足を運ぶとき、どのような服装や持ち物でのぞめば良いでしょうか?
調停を申し立てて、裁判所から調停の日を指定された後にふと悩むことが多いポイントです。服装や持ち物は、相続の調停を有利に進める(不利にならない)ために重要です。事前にしっかりと準備しておくことが大切です。
とはいえ、基本的にはそれほど難しく考える必要はなく、オフィスカジュアルやスーツなどの派手すぎない服装をしておけば問題はありません。
ただし、持ち物に関しては事前に揃えておく必要があるものも多いので、この記事で確認をしながら準備を抜け目のないよう、用意していただくことをおすすめします。
この記事では、相続の調停を有利にしたい(不利にならないようにしたい)人がすべき服装や持ち物、相続調停中のふるまいについて詳しく解説します。
また、配偶者や子どもなどの関係者の調停への付き添いの可否に関してもお伝えするので、これから相続調停の申立てや期日がある方はぜひ参考にしてみてください。
1 相続調停とは?当日の流れを解説
1-1 相続の調停の種類
相続に関係する家庭裁判所の調停手続きは多数ありますが、件数が多いものとしては以下のようなものがあります。
・遺産分割調停
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・遺留分侵害額請求調停
【関連記事】遺留分侵害額請求の調停とは?手続きの流れやポイントについて弁護士が解説
・遺言無効調調停
・その他の家庭裁判所での手続き(検認)
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1-2 調停できちんとした服装をすべき理由
相続の調停の当日に服装を気にすべき理由は、話を聞いてくれる調停委員、調停官に良い印象をもってもらい(悪い印象を持たれない)、きちんと自分の言い分に耳を傾けてもらうためです。
裁判所では、服装なんか関係なく、自分の言うことをそのまま信じてもらえる、言い分を聞いてもらえるんじゃないの、と思う方もいるかもしれません。
しかし、調停では、はっきりとした証拠がないことが多く、相反する当事者の話を聞きながら、出来る限り事実(真実)と思われる内容をベースとして手続きが進められます。
調停委員は、客観的な証拠に加えて、申立人と相手方の服装や言葉遣い、話の内容等から、この当事者は、誠実であるから出来る限り耳を傾けよう、または、嘘をついている・問題があるから注意しながら話を聞こうと考えながら調停を進めることになります。
いずれの立場に立てるかで、その後の調停の審理に大きな影響が出てしまいます。
また、調停委員、調停官は、いずれも法服またはスーツで手続きに臨みます。調停手続き自体も裁判所で行われる公的な手続きです。手続きの性質や話を聞いて下さる調停委員の方への敬意を示す意味でも、TPOをわきまえた服装が大切になります。
1-3 調停手続きの流れ
遺産分割調停等の当日の流れは、下記の通りになります。
①指定された日時に家庭裁判所へ行く
②調停の出席者として受付窓口へ出向く
③当事者はそれぞれの調停の待合室へ入室する
④調停委員に呼ばれるまで待機する
⑤調停委員に呼ばれたら調停室で話をする
⑥調停での話が終わったら待合室へ戻る
⑦もう一方が調停室に呼ばれ話をする間は待機する
なお、当日は申立人と相手方が顔をあわせることがないよう待合室はわかれており、調停じたいも別々におこないます。
どちらか一方が調停で話をしている間は相手方が待合室で待機し、呼ばれたら調停に出て話をする、という流れを繰り返すことで、話に進めていくのが主な流れです。
基本的に調停に呼ばれるのは「申立人」が先であることが多く、もし当日に調停での結論が出ない場合には、次の調停の日時を調節してその日は終了となります。
【関連記事】遺産分割の調停期間はいつまで?有利に進めるコツと早期解決のポイント
2 相続の調停で当事者同士は顔をあわせない!話の相手は「調停委員」
2-1 相続の調停での話し合いの進め方
相続の調停では、調停にて「調停委員」を通して、相続人間の話し合いが整うことで、相続が成立します。
「調停委員」とは、相続調停において相続人のあいだに入り、中立の立場で相続人が合意できる提案をする存在です。
相続人同士が相続調停で直接会ったり、顔をみあって話し合いをする必要がないように、「調停委員」が代わりに話を聞いてくれるという仕組みになっています。
この調停委員を「味方につける」こと、あるいは「良い印象を持ってもらう」ことは、相続調停における結果を有利に導けるかどうかの分かれ道になる、と言っても過言ではありません。
つまり調停での服装は「調停委員に見られるもの」として意識しておきましょう。
2-2 相続の調停に親や子供は参加できる?
遺産分割や遺留分等の相続の調停では基本的に、調停へ相続人以外者の配偶者や子どもの他者が参加することは認められていません。
ただし、待合室までは同行することが可能です。
3 相続調停を有利にするための服装とは?
相続の調停では服装に決まりはなく、日頃から着ている服で訪れても良いと言われています。裁判所に問い合わせても、そのような回答を受けるでしょう。
しかし、基本的に男性はスーツ、女性はスーツあるいはオフィスカジュアル程度の服を選ぶのが無難です。たとえば、暑いからと言って日頃から身につけている短パンやビーチサンダルを選ぶのはおすすめできません。
なぜなら相続の調停では、
・遺産の範囲
・特別受益(生前に被相続人から金銭の贈与を受けたか)
【関連記事】特別受益の持ち戻しとは?持ち戻し免除との違いや期間を解説
・寄与分(被相続人の介護をしていた、被相続人へ金銭を援助した)
・遺産の管理状況
・遺言で遺産を受ける合理的な事情
など、金銭や権利に関わる内容を話し合うことが多く、軽率な印象を与えないように振る舞うことが大切です。先に述べたように、調停委員は、客観的な証拠に加えて、申立人と相手方の服装や言葉遣い、話の内容等から、この当事者は、誠実であるから出来る限り耳を傾けよう、または、嘘をついている・問題があるから注意しながら話を聞こうと考えながら調停を進めることになります。
そこで、場にそぐわない服装をしていることは、発言への信憑性を欠く要因になりかねません。
できる限り服装は整えて、正装と呼べる身なりで調停にのぞむことをおすすめします。
【関連記事】介護をした人が相続で受け取れる「寄与分」とは?条件や種類を詳しく解説
3-1 相続調停でNGな服装とは?
「絶対に着てはいけない」とは言えませんが、相続調停にのぞむなら避けておくのが無難な服装は、主に下記があげられます。
・ブランド物のきらびやかな服
・派手で主張が強い服
・はだけていて露出が多い服
・ラフすぎる服
相続の調停では「財産がない」「生活に余裕がない」などの主張をする傾向があります。
ブランド物で着飾っている様子は財産や生活の余裕を象徴してしまうため、主張と矛盾してしまいやすいです。
また、派手で主張が強い服装や、はだけていて露出が多く不謹慎であると判断されやすい服装は、調停委員に悪印象を与えてしまいかねません。
今の時代に服装のイメージをとやかく言うのはそぐわないかもしれませんが、あくまで相続調停での印象としては上記を参考にしていただくのがおすすめです。
3-2 相続調停を有利にするための身だしなみもチェック!
身だしなみとしては、清潔感があることが大切です。
たとえば、下記のようなポイントをおさえておくことをおすすめします。
・ボサボサの頭は整える
・派手な髪の色はひかえる
・ヒゲはしっかり剃っておく
・化粧は派手な色をひかえる
・アクセサリーはひかえめにする
とはいえ、服装に対して受ける印象は人それぞれ異なるものであり、正解はありません。
あくまで調停委員にとって違和感を感じさせる服装、悪いインパクトがありすぎるような服装はひかえる、というように考えておけばOKです。
4 相続調停に必要な持ち物とは?
相続調停で必要になる持ち物はいくつかあり、事前に余裕を持って準備しておくことをおすすめします。
下記にリストアップしているものは、基本的には持っていく必要があるものです。
①呼び出し状など裁判所から受け取った書類
②裁判所へ提出した資料の控え
③裁判所へ提出する書類
④身分証明書
⑤印鑑
⑥スケジュール帳
⑦振込先口座がわかるもの
⑧メモ帳と筆記用具
⑨電卓や水
調停に足を運ぶ前に、ぜひ上記をチェックリストとしてご活用ください。
では、それぞれが必要な理由や内容を詳しくお伝えしていきます。
4-1 呼び出し状など裁判所から受け取った書類
裁判所から受け取った書類は、基本的に全て持っていきましょう。
・呼び出し状
・裁判所で謄写(とうしゃ)した書類
家庭裁判所から届く「呼び出し状(調停期日通知書)」は、必ず調停当日に持参します。
呼び出し状では、下記の内容が確認できます。
・日時
・場所
・事件番号
・裁判所書記官の連絡先
・待合室のお知らせ
当日は呼び出し状に記載された上記の内容をもとに、調停に足を運びます。
4-2 裁判所へ提出した資料の控え
裁判所へ提出する資料はあらかじめコピーをとっておき、控えとしてまとめたものを調停の当日にも持参することをおすすめします。
・相続調停申立書(申立人)
・陳述書
・収入等の資料
調停委員は裁判所へ提出された上記のような資料を参考にしながら、結果を出します。
また、もし提出していなくても調停に関係する資料がある場合には、提出資料と別に控えも用意して持参しましょう。
申立人の場合には「相続調停申立書」、言い分をまとめた「陳述書」などもある場合には、コピーをして控えをしっかり用意してください。
4-3 裁判所へ提出する書類
家庭裁判所から提出をするように求められた書類は、しっかり用意しておきましょう。
また、証拠となる書類がある場合など、あった方が良いものがあれば控えと一緒に持っていくと良いです。
4-4 身分証明書
身分証明書は、調停をはじめるにあたり最初に確認される可能性があります。
運転免許証やパスポートなどを持っていきましょう。
4-5 印鑑
各種申請書類には、印鑑を押さなくてはいけなくなります。
かならずしも実印である必要はないですが、印鑑は用意をしていきましょう。
4-6 スケジュール帳
もし調停で決着がつかなかった場合、次回の調停の日程を調整する必要があります。
また、自分の過去の行動が確認できるので、自分のスケジュールがわかるものを持っていきましょう。
スマホなどにスケジュールを記録している場合には、スマホでも問題はありません。
ただし、調停中に音がなってしまうのは印象を悪くしてしまうため、スリープモードにしておくなどあらかじめ調節しておきましょう。
4-7 振込先口座がわかるもの
調停がまとまりそうで、代償金の支払いを受ける側の場合には振込先がわかるように「銀行通帳」を持っていくと、話がスムーズになります。
4-8 メモ帳と筆記用具
調停では、録音や録画をすることはできません。
調停委員から言われたことや、調停委員を通して教えてもらった相手からの意見、自分の発言した内容などは、メモをしておくことをおすすめします。
また、調停委員から次回までの課題を言い渡されることがあるため、メモ帳と筆記用具は持参しておくと便利です。
4-9 電卓や水
電卓と水は必須ではありませんが、持っておくと良いアイテムです。
まず電卓は、金額の会計が必要になったときに持っていると重宝します。
スマホの電卓を使うこともできますが、通知が来ていると気が散ってしまいやすく、おすすめしません。
また、調停委員によってはスマホをいじる姿を気持ちよく思わない可能性もあるため、気を落ち着かせて数字を打つためにも電卓を持っておくと良いでしょう。
水は裁判所でも自動販売機がおいてあり利用できることが多いですが、ねんのため持参しておくと安心です。
なぜなら、裁判にあたり多少なり緊張する人が多く、水があると心を落ち着かせたり、一呼吸を置きやすいからです。
緊張感のある環境で発言をすると、喉がかわいてソワソワしてしまいやすいため、水分補給をしながらのぞむことをおすすめします。
5 まとめ:相続調停を有利にする服装と身だしなみが大切
遺産分割や遺留分などの相続の調停では、服装に指定はないことをお伝えしました。
しかし、調停で対話をする調停委員は人であり、人として好感度を持てる方を無意識的に応援したくなる可能性があることから、服装にも気を配っておくことをおすすめします。
また、持ち物については忘れ物があると話がスムーズに進まず、長引かせる原因になります。
服装と身だしなみはなるべく誠実さを意識し、持ち物はしっかりと事前に準備をして後悔のないよう調停にのぞみましょう。
使途不明金や不動産の評価等の専門的な遺産調査や、交渉・裁判に力を入れて取り組んでいます。
相続の法律・裁判情報について、最高品質の情報発信を行っています。
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