遺言無効確認訴訟とは?納得できない遺言書に対抗できるのはどんな時?

監修者ベストロイヤーズ法律事務所

弁護士 大隅愛友

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遺言書の内容に不満がある、故人本人が書いたとは思えない場合、遺言無効確認訴訟を起こすことが可能です。

その遺言書が本当に有効なものかを法的に確認するためにも、必要な手続きを理解しましょう。

本記事では、納得できない遺言書に対して、どのような法的措置を取ることができるのかを解説します。

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1 遺言無効確認訴訟とは

遺言無効確認訴訟は、故人の遺言書が無効であることを証明してもらうための手続きです。

裁判所で法的に判断されるので、相続人の間でのトラブルや不法行為を防ぐことが可能です。

遺言無効確認訴訟によって遺言書が無効であることが証明できれば、遺言書に書かれている内容での財産の分配を防ぎ、法的に定められたルールで再度財産を分配できます。

反対に、遺言書が有効だと主張するために裁判を起こすことも可能です。

この場合は遺言有効確認訴訟と呼ばれることもあります。

1-1 遺言無効確認訴訟の管轄

遺言無効確認訴訟の管轄は、故人の住所を管轄する地方裁判所や簡易裁判所です。

ほかにも、被告とされる人物の住所を管轄している裁判所で行われることもあります。

遺言無効確認訴訟は誰でも起こすことが可能ですが、ある程度財産の規模が大きい人が起こすケースが多いです。

規模が大きな裁判になると、地方裁判所が管轄することも少なくありません。

1-2 遺言無効確認訴訟にかかる費用

遺言無効確認訴訟にかかる費用は、財産の種類によって異なります。

財産の処分や寄付の場合は、その金額に原告の法定相続分が訴額として請求されます。

相続人を排除する場合は、相続財産と原告の法定相続分が訴額に換算されます。

また、遺言が財産に関係ない権利関係のものだった場合は、一括で160万円と定められています。

これらは収入印紙を購入して納める必要があります。

ほかにも、予納郵券費用が5,000~6,000円かかり、原告が増えるごとに2,000円ずつ追加されます。

弁護士を雇う場合はこれらの費用に加え、成功報酬や着手金なども必要です。

1-3 遺言無効確認訴訟に必要な期間

遺言無効確認訴訟が終わるまでの期間に明確な基準はありません。

ですが、一般的に準備に数か月、第一審に1~2年、控訴された場合はさらに1年、上告審があればさらに半年ほどかかるのが一般的です。

そのため、トータルで3年程度はかかることを覚悟しておかなければなりません。

遺言無効確認訴訟の結果遺言の内容が無効と決定された場合、その後相続人の間で分割協議を行う必要もあります。

分割協議は相続人全員で行う必要があり、遠方から来ることが難しい人がいる場合は何度も集まるために長い期間がかかります。

1-4 遺言無効確認訴訟の審理のポイント

遺言無効確認訴訟で裁判所が重視するのは客観的な証拠です。

第三者が偽造した可能性がある場合は、過去の本人の日記や周辺の人物との手紙、メモなどを集めて提出します。

その結果、遺言とまったく違った意思があったと認められれば遺言は無効と判断されます。

筆跡鑑定が行われることもありますが、筆跡は変わる可能性もあるため、筆跡鑑定だけでは証拠としては弱いです。

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また、遺言作成時に生前の故人に遺言能力があったかどうかも証拠から判断されます。

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これは病院のカルテや介護施設の記録、さらに役所の介護認定などが重要な証拠です。

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身の回りの世話をしていた人の日記や、介護、看護のために購入したアイテムの領収書なども証拠として提出することが可能です。

2 遺言無効調停との違い

遺言無効調停は、訴訟の一段階前の行動です。管轄は地方裁判所ではなく、家庭裁判所です。

遺言無効確認訴訟に進むためには、この遺言無効調停のステップを踏む必要があります。

まずは遺言書が正しいものかどうか相続人の間で話し合い、交渉で解決しない場合は遺言無効調停に進みます。

調停では裁判員ではなく調停委員が相続人の間の仲介を行い、双方が合意できる段階を探していきます。

ですが、調停で話し合いを進めた結果解決しなかった場合は訴訟に展開していきます。

最初から財産の金額が莫大だったり、明らかに調停で解決するレベルではないと判断されたりした場合は、最初から遺言無効確認訴訟に進むケースもあります。

3 どんなシーンで遺言無効が主張される?

遺言無効確認訴訟は、どのようなシーンで主張されるのかを確認しましょう。

「遺言書には納得できないものの、遺言書には絶対的な力があるから受け入れるしかない」と思っている方も多いのではないでしょうか。

以下のケースに該当する場合、遺言無効確認訴訟が認められる可能性があります。

3-1 故人が生前遺言能力がなかった

遺言書が有効と認められるには、故人に遺言能力があるかどうかが重要です。

遺言書が書かれた時期にはすでに認知症などで十分な遺言能力がなかったと認められる場合、遺言無効確認訴訟が認められます。

このケースは遺言無効確認訴訟のなかでも非常に多い例です。

認知症のほか、精神障害などで正常な判断能力がないと認められた場合にも、遺言無効確認訴訟が有効です。

3-2 証人がいなかった

遺言書のなかでも公正証書遺言、秘密証書遺言を作る際には、証人を2人以上用意する必要があります。

この証人は、いずれも相続人ではない人を用意しなければなりません。

公正証書遺言や秘密証書遺言の形を取っているのに証人が2人いなかった、もしくは法律で証人と認められない人が証人として挙げられていた場合、その遺言書は無効です。

遺言無効確認訴訟を行う必要はあるものの、証人がきちんと用意されているか、その証人は法的に認められている人物かをきちんと確認しましょう。

3-3 遺言書の形式が間違っていた

遺言書の形式が間違っていた場合も、遺言無効確認訴訟が認められることが多いです。

遺言書は本人が書いてさえいれば有効と思っている人も多いですが、実際には細かい形式があります。

書き方が間違っていた場合や、明らかに本人の筆跡ではない遺言書の場合も、遺言書の内容が認められず法にのっとった財産分配をされる可能性が高いです。

3-4 共同遺言だった

遺言書が共同で書かれたものの場合、無効になるケースが多いです。

また法律では、二人以上で書かれた共同の遺言は明確に禁止されています。

共同遺言をすると、一方が遺言を撤回しにくくなるなどの理由からです。

遺言書に二人以上の名前が書かれている、二人以上の意思が書かれている場合は無効なので、裁判所に遺言無効確認訴訟を申し立てましょう。

3-5 詐欺や脅迫によるものだった

故人が詐欺や脅迫によって遺言書を書いた可能性がある場合、遺言無効確認訴訟をして裁判所で法的な判断を仰ぐ必要があります。

他人から詐欺、脅迫をされて書いた遺言書は、本人の意思によるものではないとして法律では無効とされます。

また、遺言書を書いても詐欺や脅迫だった場合はその内容を取り消すことが可能です。

弁護士や探偵などに調査をしてもらい、詐欺や脅迫による遺言であることをしっかり主張することが大切です。

3-6 重要な事実を誤認していた

遺言書を書いた本人が重要な事実を誤認していた場合、遺言無効確認訴訟によって遺言書の内容が無効になる可能性があります。

本人が誤解したまま書いた遺言書は、相続人に平等な判断がされていないケースも多いです。

血縁関係があるのにないものとして遺言書を書いていたなどの場合は、遺言無効確認訴訟を起こすことでその事実を認めてもらい、法的な財産分配を受けられるでしょう。

3-7 公序良俗に反していた

その他、公序良俗に反する内容と認められた場合、遺言無効確認訴訟が認められる可能性があります。

社会常識に反している内容かどうかは裁判所が決定するため、どの点が問題かをよく主張することが大切です。

多くある例としては、故人の愛人や不倫関係にあった相手に財産を譲るなどの記載があるケースです。

ただし、故人の身の回りの世話をしていた愛人などは、一部財産の相続が認められるケースもあります。

4 遺言無効確認の手続きの流れを解説

遺言無効確認訴訟を起こすまでには、さまざまな手続きが必要です。

準備は大変ですが、遺言書の内容に納得できない場合は以下の手順で手続きを進めましょう。

4-1 証拠を用意する

まずは遺言書が無効であることを証明するための証拠を用意しましょう。

故人が遺言書を作成した時点ですでに認知症や精神障害を患っていたことを証明する、病院の領収書や医療記録などがあると有効活用できます。

また、判断能力の低下などを証明するために、医師に申述書を書いてもらう方法も有用です。

公正証書遺言や秘密証書遺言の形式だった場合、証人がふさわしくない、法的に認められない人物であることを証明する書類を用意しましょう。

遺言書が本人の筆跡ではないことを証明するには筆跡鑑定が必要ですが、筆跡の判断だけでは十分な証拠とならないケースもあるので注意してください。

4-2 遺言無効確認訴訟をする

遺言書が無効であることを主張するための十分な書類が揃ったら、遺言無効確認訴訟を行います。

遺言書と登記事項証明書、通帳などの写し、さらに相続人と故人の範囲が明らかにわかる戸籍謄本、さらに相続関係図などの提出を求められることもあります。

提出先は故人の住所を管轄する裁判所です。

遠方に住んでいる人は十分に時間に余裕を持って行動しなければなりません。

相続人がバラバラの場所に住んでいる場合、双方が合意すれば故人の住所の管轄以外の裁判所でも手続きを進めることが可能です。

4-3 遺言無効訴訟が審理される

裁判所で、遺言書や各証拠となる書類、相続人の証言から、内容の審理が進められます。

書類だけではなく相続人の証人尋問もあるので、裁判所に出向かなければならないケースもあります。

また、遺言書の内容に納得できていない人だけではなく、遺言書の内容のほうが有利な人はその遺言書が適切であると主張するために出廷することもあります。

裁判所は双方の意見を加味したうえで、法的な視点から客観的にその遺言書が適切な内容であるかどうかを判断します。

4-4 相続人間で分割協議をする

遺言無効確認訴訟が認められ、遺言書が無効だった場合は、相続人同士で財産の分割協議を行います。

その遺言書の内容に関わらず、法的な財産分配をしたり、相続人の間で納得できる形で相続を分配していきます。

例えば、法的には多くの財産を相続できる立場であっても、生前故人の世話を他人に任せっぱなしにしていた場合などは、本人が認めれば財産の分配を少なくすることが可能です。

故人の愛人や友人など、生前看護、介護をよくしていた、金銭的に支援をしていた人などが、分割協議の結果財産を得られる可能性もあります。

分割協議は相続人全員が参加し、全員が納得する必要があります。時間をかけ、しっかりと話し合うことが大切です。

4-5 敗訴の場合は遺言に従って遺産が分配される

遺言無効確認訴訟が認められず、遺言書が有効だった場合は、遺言書の内容に従って財産が分配されます。

法律では財産の分配配分は定められていますが、それよりも強い力を持つのが遺言書です。

故人の愛人や会社などに全財産を譲ると記載されており、それが適正な遺言書であると認められた場合、その通りに財産が分配されます。

ただし、法定相続人は遺留分を請求することも可能です。

その場合はさらに別の手続きをしなければなりません。

時間がかかり、複雑な手続きになるため、弁護士などプロに相談することをおすすめします。

5 遺留分侵害額請求とは?

遺言書の内容に納得できず遺言無効確認訴訟を行ったもののその主張が認められなかった場合、遺留分侵害額請求を行うことが可能です。

【関連記事】遺留分の計算方法とは?権利者の範囲や遺留分侵害の対処法も詳しく解説

遺言書の内容のとおり財産を分配すると十分な金額を受け取れない人は、遺留分侵害額請求を検討してみましょう。

例えば、故人が生前好きだったアイドルに全財産を譲るという遺言書が認められた場合でも、遺留分侵害額請求を行えば、一定の財産を相続することが可能です。

ただし、遺留分の請求をできるのは、故人の配偶者や子ども、孫など、第一から第二順位の相続人までと限定されています。

兄弟姉妹は遺留分の請求ができないので注意してください。

【関連記事】遺留分は兄弟にはない|理由と遺留分なしでも財産を相続する方法

6 遺言無効確認訴訟をするならプロに相談

故人の遺言書に不満がある、本人が書いたとは思えない内容の場合、遺言無効確認訴訟を起こして内容を無効とすることが可能です。

ですがそれには客観的に遺言書を判断する証拠や資料が必要です。

プロに相談することで、正しい遺言無効確認訴訟の手続き方法や必要な書類集めなどに対応してもらえます。

遺言無効確認訴訟は、遺言書を無効にしたい人にとっては有用ですが、その遺言書の内容のほうが得をする人がいる場合はトラブルに発展する可能性があります。

相手が遺言有効確認訴訟を起こした場合には相手と戦わなければならないため、法的な知識が豊富な弁護士が味方になってくれると心強いでしょう。

遺言無効確認訴訟をプロに相談すると得られるメリットを紹介するので、お悩みの方は参考にしてみてください。

6-1 遺言無効確認訴訟には時間と手間がかかる

遺言無効確認訴訟には、時間と手間がかかります。

仕事をしながら遺言無効確認訴訟の手続きを進めるのが現実的ではないとして、諦めて遺言書の内容に納得しようと考えている人も多いのではないでしょうか。

ですが、弁護士に相談すると必要な証拠集めや裁判所での手続き、主張などを行ってくれます。

また、主張に対するアドバイスなどもしてくれるので、一人で考える時間を短縮することが可能です。

6-2 必要な弁護士費用は相続できた遺産の金額による

弁護士に相談するときに不安材料となるのがその費用です。

一般的に、弁護士を雇うために必要な資金は、相続した財産の金額によることが多いです。

相続した財産の何パーセントなど、後から請求金額が決まるケースも少なくありません。

また、最初から金額が決まっている場合でも15万円程度など、想定しているほど高くないケースもあります。

無料で相談できる弁護士事務所も多いので、遺言無効確認訴訟の手続きのほか費用面についても、気軽に相談してみましょう。

6-3 相続問題に強い弁護士に相談するのがおすすめ

弁護士に相談するなら、相続問題に強い弁護士に依頼するのがおすすめです。

弁護士事務所と一口にいっても、さまざまな得意分野があります。

企業間のトラブルなどに強い弁護士事務所もあれば、相続問題や土地の問題などに強い弁護士事務所もあります。

相続問題に強い弁護士事務所に相談すれば、豊富な過去の経験からスムーズに手続きを進めてもらえるだけでなく、裁判で有利になるアドバイスもしてくれるでしょう。

各弁護士事務所の過去の実績を確認したうえで、相続問題について相談できる事務所を選びましょう。

7 遺言書に納得できない場合は遺言無効確認訴訟を

遺言書の内容に納得できない、不満がある際には、証拠を集めて遺言無効確認訴訟を起こすことも検討しましょう。

重要な証拠を提出することで、遺言無効確認訴訟が認められ、納得のいく形で財産を相続できる可能性があります。

ベストロイヤーズ法律事務所では、相続に関連する相談に多数対応しています。

相続や交通事故を専門としているためそのジャンルに特化した弁護士が多く在籍し、速やかに問題解決に導いてくれます。

また、日本全国から相談でき、本格的な依頼が始まるまでは相談料はかかりません。

弁護士費用も成功報酬11%のみという低料金で、相談料や着手金を請求されることがありません。

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