ネットに個人情報晒された!警察は動く?犯人を訴え慰謝料を請求する方法
誰もがスマホを1人1台持ちうる現代、ネットへのアクセスが簡単になったからこそ、個人情報を晒す行為は難しくはなくなりました。
他人には知られたくない個人情報を許可なくネットに晒すような行為は、「プライバシーの侵害」にあたる可能性があります。
ではプライバシーの侵害が起きたとき、警察は動いてくれるのでしょうか?
結論、プライバシーの侵害が犯罪に該当している場合には警察が動いてくれる可能性があります。
この記事では、そもそも「プライバシーの侵害」とはどのようなケースなのか、該当する犯罪とは何か、犯人を特定する方法や損害賠償を請求するまでの流れを、詳しく解説します。
1 ネットに個人情報が晒された!警察は動く?
本人の許可なしでネットに個人情報を晒す行為は、「プライバシーの侵害」にあたるケースが多いです。
しかし、プライバシーの侵害というだけでは刑事上の罪に問うことは難しく、警察は動いてくれません。
ネットに個人情報が晒されたケースで警察が動くのは、プライバシー侵害による犯罪が認められ、証拠があるケースです。
ここからは、「プライバシーの侵害」に該当するケースや、認められる犯罪の例を詳しく解説します。
1-1 ネットに個人情報が晒された!プライバシーの侵害とは?
ネットに個人情報が晒された場合、「プライバシー権」の侵害にあたるとされることが多いです。
一般的には「私生活上の事柄をみだりに公開されない法的権利(プライバシー権)」を侵害する行為をおこなうこと、とされますが、明確な基準はありません。
そこで多くの場合に、下記すべてに該当していれば「プライバシーの侵害」とされます。
①事実あるいはそう受け取れる内容である
②本人により公開されていない内容である
③本人が公開を望まない内容である
上記に当てはまる上で、犯罪が認められる場合には、警察が介入してくれることもあります。
・本名
・本人が特定できる顔写真
・住所
・犯罪歴
・前科
・住所
・指紋データ
・運転免許証の番号
・マイナンバー
具体的には、上記のような情報が本人の許可なく晒された場合には、プライバシーの侵害になるでしょう。
下記のようなケースは、プライバシーの侵害として問題になることが多いです。
✔️例
・芸名で仕事をしていたのにコメント欄で本名が明かされてしまった
・源氏名で働いていたのにSNSで本名を晒された
・電話番号がネット上に晒されてしまった
1-2 プライバシー侵害だけでは犯罪にはならない?
プライバシー侵害に対する刑事罰はない、つまり刑法上ではプライバシーの侵害を「犯罪」とはしていないため、訴える場合にはあくまで損害賠償請求など民事上の責任を問う形になります。
ただし、プライバシー侵害を含む犯罪性が確認される場合には刑事罰の対象となり、警察が動いてくれる可能性が高いです。
たとえば、実名が明かされたうえで下記のような記載があり、犯罪性があると認められる場合には、刑事罰の対象となるでしょう。
✔️投稿例
・〇さんの住所は〇、殺しに行くから待ってろ
・◯さんが不倫してた現場を見ました
・◯さんには前科があるから危険人物だよ
2 ネットに個人情報が晒された!プライバシー侵害の犯罪とは?
ネットに個人情報が晒されプライバシーの侵害をされた場合、下記のような犯罪に当てはまるケースであれば、警察が動いてくれる可能性があります。
①名誉毀損
②脅迫罪
③リベンジポルノ罪
上記に当てはまる場合には、警察の「サイバー犯罪相談窓口」から問い合わせをしてみてください。
①名誉毀損
ネットに個人情報をさらしたうえで、誹謗中傷などの行為がある場合には「名誉毀損」が成立することがあります。
下記に当てはまっている場合には、名誉毀損として「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」の刑事罰が課されるでしょう。
・公の場で開示した
・人の社会的評価を下げる可能性がある
・事実あるいはそう受け取られうる事柄である
・事実が本人により公開されていないまたはして欲しくない
公の場で、不特定多数の人からの社会的信用を損ねる発言をした場合、その事実の有無に関わらず「名誉毀損」に当てはまる可能性があります。
✔️投稿例
・◯さんは不倫経験者ですもんねw
・◯さんは犯罪者なんだから黙ってろ
・◯さんは詐欺師だから、話を聞いちゃダメですよ!
②脅迫罪
他人の身体や財産、名誉、行動の自由に対して脅迫をした場合には、脅迫罪として刑事上の罪に問われる可能性があります。
サイトやSNS上や、DMなどの手段で脅迫があった場合には、警察が調査に動くはずです。
✔️投稿例
・お前の住所を公開するぞw
・勤務先を晒しますよ?
③リベンジポルノ罪
元交際者や元配偶者など、体の関係を持ったことのある人が撮影した、性的な動画や画像が投稿される「リベンジポルノ」は、刑事上の処罰の対象です。
たとえばX(旧Twitter)では投稿者のアカウント凍結などの対応も行なっていますが、刑事法としても「リベンジポルノ防止法」にあたり処罰されることがあります。
✔️例
・性交中の動画や画像を投稿する
・裸体の動画や画像を投稿する
3 ネットに個人情報が晒された!犯人を訴え慰謝料を請求する方法
ネットに個人情報が晒された場合、一刻もはやく個人情報を消去したいと焦るでしょう。
しかし、警察に通報や慰謝料請求をしたい場合には、下記の流れで対処することをおすすめします。
①証拠を残す
②削除依頼をする
③犯人を特定する
④慰謝料請求
スムーズに進めば上記の流れで慰謝料請求ができますが、個人が情報提供を求めてもSNSやサイト側が応じてくれないことがあります。
情報提供を受けられない場合には、合計で2〜3回の裁判が必要になる可能性が高いです。
①証拠を残す
ネットで問題があったとき、被害届を警察に出すほか裁判を起こして損害賠償を請求するためには、証拠が必要になります。
スクリーンショットをとるほか、URLをひかえておくなど、できるだけ漏れのないように証拠を残しておきます。
①投稿内容のスクリーンショット
②犯人のIDひかえとスクリーンショット
③犯人のIPアドレス
④投稿日時
⑤サイトURLや投稿URL
犯人を特定するためにはIPアドレスをもとに、裁判所の手続きを利用する「発信者情報開示請求」を申し立てることができます。
犯人の個人情報を特定する方法は、後述します。
②削除依頼をする
個人情報が投稿されたサイトやアプリの管理人や専用問い合わせフォームへ、削除依頼のメールを送ります。
管理人や専用問い合わせフォームにて連絡が取れない場合には、プロバイダやサーバーへ削除依頼をする必要もあるでしょう。
多くのSNSでは、不適切な投稿を通報し、削除依頼ができるようになっています。
ただし、依頼に応じて管理者側がかならず消去をしてくれるとは限りません。
証拠対応をしてもらえない場合には、仮処分を申し立てるなど、裁判へ進む必要があるでしょう。
この場合にはサイトやSNS管理者へ裁判所から、投稿削除の仮処分命令を発してもらうことになります。
③犯人を特定する
サイトやSNSなどのコンテンツプロバイダ(コンテンツの運営者)から開示されたIPアドレスをもとに、プロバイダを特定します。
さらに通信事業者などアクセスプロバイダへ個人情報の開示を請求することで、犯人を特定することが可能です。
プロバイダも個人情報を保護しなければならないため、基本的には裁判所からの命令がない限りは開示要求に応じてくれません。
そこで「発信者情報開示仮処分命令申立」と呼ばれる裁判手続きをおこなうことで、裁判所から情報開示を命令してもらう必要があります。
なお、コンテンツプロバイダがIPアドレス情報を保存している期間の目安は、3ヶ月と言われています。
3ヶ月が経過するとIPアドレスがわからなくなり、投稿者の特定が難しくなるケースも多いため、訴えたい場合にはすぐ行動しましょう。
④慰謝料請求
犯人の特定が終わったら、刑事告訴や民事告訴、損害賠償請求をおこないます。
損害賠償の請求方法としてはおもに、下記が挙げられます。
・示談交渉:投稿者から示談金の支払いを受け訴訟をしないこと
・支払督促:裁判所から投稿者へ金銭の支払いを命じてもらうこと
・訴訟:投稿者に損害賠償を命じるための判決を求めること
支払督促については書面審査となり、簡易的な手続きで完了しますが、投稿者が異議を申し立てた場合には自動的に訴訟となります。
訴訟となる場合、被害者は証拠を提示して損害賠償請求権があることを立証しなければなりません。
個人が1人で裁判をおこなうことは現実的ではないため、弁護士に依頼をすることが一般的です。
4 ネットに個人情報を晒された!裁判にかかる期間とは?
ネットに個人情報を晒された場合、裁判を2〜3回おこなうことが一般的です。
そこで目安としては、犯人特定までに下記のような期間が必要となります。
・IPアドレスの開示請求(仮処分):2ヶ月前後
・個人情報開示請求(裁判):6ヶ月前後
犯人特定を済ませ、慰謝料を請求するためにかかる期間は合計で、1年ほどであると考えておくと良いでしょう。
5 【まとめ】ネットに個人情報が晒された!警察にも相談してみよう
ネットに個人情報がされされたとき、まずは証拠としてスクリーンショットをとっておくことをおすすめします。
相手のアカウントIDや投稿URLなど、可能な範囲で証拠をおさえておくことで、警察が動いてくれる可能性も高まるでしょう。
ネットに個人情報が晒され、どうしても許せないというときは、慰謝料を請求できるケースがあります。
慰謝料請求のためには、犯人を特定し、必要に応じて犯人の訴訟や裁判をおこなうことになるでしょう。
警察が対応してくれるかどうかは、直接確認してみるのが手っ取り早いです。
コンテンツプロバイダがIPアドレスを保存しているのは3ヶ月ほどなので、投稿の削除対応だけで納得できない場合には、スピーディーに行動することをおすすめします。