補充尋問とは?重要性や準備の仕方、証人尋問の流れまで詳しく解説

監修者ベストロイヤーズ法律事務所

弁護士 大隅愛友

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「証人尋問では補充尋問が重要と聞いたけれど、どう対処すればよいかわからない」

「そもそも補充尋問って何をするの?」

などとお悩みではありませんか。

証人尋問のひとつである補充尋問は、裁判の勝敗にも関わる大変重要な意味をもつものです。

この記事では、補充尋問とは何をするのか、その重要性や証人尋問の流れまで詳しく解説します。

民事裁判で証人尋問を受けることなど、めったに経験することではありませんよね。

証人尋問に不安がある方はぜひ最後までお読みください。

(注)尋問は、厳密には第三者に行われる証人尋問と、当事者に行われる当事者尋問の2つに分けられる。

しかし、尋問の流れはどちらも同じように進むため、この記事では証人尋問としてまとめて解説します。

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1 民事裁判における補充尋問とは

ここでは、民事裁判における補充尋問とは何かを解説します。

1-1 補充尋問は証人尋問のひとつ

証人尋問は、主に以下の4つに分けられます。

  1. 主尋問
  2. 反対尋問
  3. 再主尋問
  4. 補充尋問

主尋問から順に進んでいきますが、補充尋問は最後に行われる証人尋問のひとつです。

1-2 補充尋問は裁判官が質問すること

主尋問、反対尋問が終わっても、聞き足りないことや確認したいことがある場合もあります。

このようなときに、裁判官が質問することを「補充尋問」というのです。

補充尋問での質問は、裁判の争点ともいえ裁判官がとくに確認したいことを聴くものであり、裁判において大変重要な場面になります。

2 民事裁判で補充尋問を経て訴訟終了までの流れ

民事裁判での訴訟は、以下の流れで進みます。

  1. 原告が訴状を裁判所に提出
  2. 被告が答弁書を提出す
  3. 口頭弁論で審理が進む
  4. 当事者の請求で証人尋問が行われる
  5. 判決または和解

順に解説しましょう。

2-1 原告が訴状を裁判所に提出する

原告(訴えを起こす人)または代理人の弁護士が訴状を裁判所に提出し、内容に問題がなければ受理されます。

2-2 被告が答弁書を提出する

被告(訴えらえた人)へ訴状が送られます。

受け取った被告は、指示に従い答弁書を提出しなければなりません。

答弁書とは、被告が訴状の内容に対する自分の言い分を記載するものです。

答弁書を提出せず、期日にも出頭しなければ訴状の内容を認めたことになるので注意が必要です。

2-3 口頭弁論で審理が進む

民事訴訟は口頭弁論で審理が進んでいきます。

口頭弁論とは、原告と被告が互いの主張を口頭で繰り広げることです。

2-4 当事者の請求で証人尋問が行われる

主張の確認や客観的証拠だけではわからない部分について、尋問が行われます。

しかし民事裁判では、証拠は原告と被告が自ら集めなければなりません。

そのため、当事者の請求により証人尋問が行われるのです。

証人尋問は以下の順番で進められます。

  1. 主尋問
  2. 反対尋問
  3. 再主尋問
  4. 補充尋問

順に解説しましょう。

(注)当事者尋問は請求がなくても裁判所の判断で行われます。

Ⅰ 主尋問

証人を依頼した側の弁護士などの代理人が行う尋問のことです。

依頼した弁護士が事前に準備しておいた質問をしてくれるので、安心して尋問に臨めます。

当然証人は、争点について理解があり、立証すべき事柄について証言します。

【関連記事】民事訴訟での証人尋問とは?主尋問や反対尋問の目的・ポイントを解説

Ⅱ 反対尋問

相手方の依頼した弁護士などの代理人からの尋問のことです。

反対尋問は、主尋問の内容の信用性をなくすために行います。

主尋問で証明した事実が間違っていたりうそをついていたりすることを実証しようとして、意地悪な質問をされることもあります。

【関連記事】民事裁判での反対尋問は重要?心構えや対策を弁護士が徹底解説!

Ⅲ 再主尋問

再主尋問とは反対尋問の後に、証人を依頼した側の代理人が主尋問に続き再度尋問することです。

再主尋問は、反対尋問でうまく答えられなかった質問などを当事者側から答えやすく質問し、証人の信頼性を回復させるために行うものです。

Ⅳ 補充尋問

それまでの尋問で確認できなかったことや、再確認したいことなどを裁判官が尋問することです。

2-4 判決または和解など 

訴訟終了は、おもに判決または和解です。他にも訴えの取下げや請求の放棄が行われることもあります。

3 補充尋問は裁判の勝敗にも関わる重要な局面

補充尋問は、単なる簡単な追加の尋問ではなく裁判の勝敗にも関わる重要な局面になります。

補充尋問での裁判官の発言に対する受け答えは、裁判の行方に大きな意味をもつのです。

3-1 補充尋問が行われるケース

補充尋問が行われるのは、おもに以下の4つです。

  1. 不足した尋問を補うために行う
  2. 確信が持てなかった事項を確認するために行う
  3. 確信した事項の再確認のために行う
  4. 裁判官の判決に関する心証の開示のために行う

順に解説しましょう。

Ⅰ 不足した尋問を補うために行う

主尋問や反対尋問などで当然尋問していなければならない事項であるにもかかわらず、聴けなかったところを補うために尋問します。

Ⅱ 確信が持てなかった事項を確認するために行う

主尋問や反対尋問が終わっても確認ができなかったり、確信がもてなかったりした事項に対して尋問を行い確認します。

Ⅲ 事実の再確認のために行う

主尋問や反対尋問で出た内容の再確認や、心証に間違いがないかを確認するために尋問します。

Ⅳ 裁判官の判決に関する心証の開示のために行う

たとえば、裁判官が証言の信用性に疑問を感じている部分などを伝えることがあります。これは、裁判官の判決に関する心証を開示するために行われているのです。

(注)心証とは裁判官の認識や確信

3-2 補充尋問の目的

裁判官は、補充尋問前には、判決についてある程度心証を固めているものです。
その心証が正しいのかをさらに確認するためや、判決に対する心証を開示することを目的として補充尋問が行われています。

また、判決の前には最後の和解勧告が行われることが多いものです。

このときに、裁判官の判決に対する心証が開示されていれば、自分が勝訴側か敗訴側かがわかります。

勝訴側か敗訴側かにより、和解を受け入れたほうがよいのか、それとも和解せずに判決をもらうほうがよいのかが確認できるのです。

【例】

  • 勝訴側和解を受け入れずに判決をもらったほうがよい
  • 敗訴側:和解を受け入れたほうが得策の場合も。100対0になる判決は避けたい

また、補充尋問の答え方ひとつで、裁判官の心証が変わり裁判の勝敗に関わることもあるので注意が必要です。

3-3 補充尋問は準備不足になりがち

このように、非常に重要な意味をもつ補充尋問ですが、主尋問、反対尋問の陰に隠れ準備不足になりがちです。

当事者に対する主尋問や相手方への反対尋問は十分に準備を重ねるわけですが、それらに時間を取られてしまうと補充尋問の準備がおろそかになってしまいます。

適切な尋問対応や和解に対する対応をするためにも、補充尋問まで視野に入れてしっかりと準備することが大切です。

4 補充尋問の準備の仕方

補充尋問の準備には、おもに以下の3つがあります。

  • 弁護士に相談する
  • 証人尋問の心構えやコツを確認する
  • 補充尋問までを想定して証人尋問リハーサルを行う

順に解説しましょう。

4-1 弁護士に相談する

法的知識が豊富な弁護士に相談することで、冷静に的確な準備を進めることができます。

また経験豊富な弁護士なら、それまでの経験から先を見越したアドバイスをしてもらえるでしょう。

4-2 証人尋問の心構えやコツを確認する

証人尋問の心構えやコツを紹介します。

Ⅰ 証人尋問の心構え

証人尋問の心構えでは、自分の言いたいことではなく裁判官が聴きたいことを伝えようという気持ちが大切です。

しかし、証人尋問など普通はそうそう経験するものではありません。

法廷に出て証言台の前に立つわけですから、緊張してうまく答えられないのは当然です。

あまり心配せずに、できるだけ落ち着いて証人尋問に臨みましょう。

証人尋問では自分のペースで答えられるように、質問されたあと一呼吸おいてゆっくり自信をもって答えることが大切です。相手のペースに巻き込まれないように注意しましょう。

また、うそをついては絶対にいけません

Ⅱ 証人尋問のコツ

  • 覚えていないことははっきり「記憶にありません」と答える
    はっきり覚えていないことを思い出しながら「えっとー」「あー」「いやー」などと答えてしまうと、証人としての信頼性を疑われてしまいます。
    また、覚えていないことを想像して答えてはいけません。
     
  • 質問の意味をよく理解して答える
    質問の意味を取り違えて、的外れな答えをしてしまうと信頼を失ってしまいます。
    ゆっくり質問の意味を理解してから答えましょう。
    もし、質問の意味がわからなければ、意味がわからないことを伝え、わかるように質問しなおしてもらうことも大切です。
     
  • 意地悪な質問をされても落ち着いて答える
    反対尋問で、挑発的で意地悪な質問をされても、カッとせずに落ち着いて丁寧に答えることが大切です。
     
  • 質問された以外の余計なことを答えない
    余計なことを答えると、そこから波及した予想外の質問をされ答えに窮する可能性が出てきます。

4-3 補充尋問までを想定して証人尋問のリハーサルを行う

証人尋問では、緊張してうまく答えられないことも予想されます。

そのためリハーサルをするのは重要です。

まず主尋問については、質問に対する答え方の練習を、自信がつくまでやっておくとよいでしょう。
反対尋問も、予想される質問を想定した受け答えの練習が大切です。

さらに、必ず補充尋問まで想定して準備をしておきます。

リハーサルで弁護士から細かくレクチャーを受けておけば、安心して証言台に立てるはずです。

5 補充尋問で失敗しないためには弁護士と万全な準備を!

主尋問や反対尋問の準備はできても、補充尋問にまで手が回らないことはよくあるもの。

この記事で解説してきたように補充尋問は、判決の勝敗や和解勧告を受け入れるかどうかを決める重要な局面です。

うまく答えられなかったらどうしようと不安になることもあるでしょう。

しかし弁護士と万全な準備をしていれば、補充尋問も恐れることはありません。

民事裁判の補充尋問も含めた証人尋問に不安がある方は、ぜひ弁護士にご相談ください。

【関連記事】証人尋問とは?回答の注意点|陳述書の重要性や作成・提出方法も解説

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