民事訴訟での証人尋問とは?主尋問や反対尋問の目的・ポイントを解説

監修者ベストロイヤーズ法律事務所
弁護士 大隅愛友
監修者ベストロイヤーズ法律事務所
弁護士 大隅愛友
使途不明金や不動産の評価等の専門的な遺産調査や、交渉・裁判に力を入れて取り組んでいます。
相続の法律・裁判情報について、最高品質の情報発信を行っています。
ご相談をご希望の方は無料相談をお気軽にご利用ください。
裁判における山場と言っても過言ではない「証人尋問」。
証人尋問にて、原告と被告それぞれが証言を主張することにより、その内容は証拠として記録されます。
証人尋問は、事前に準備ができるものです。
反対に、準備不足の状態でのぞむことが、不利な結果へとダイレクトに繋がってしまいます。
証人尋問はおもに「主尋問」「反対尋問」「補充尋問」という3つの尋問により構成されており、各尋問の制限時間内に、原告側と被告側それぞれから証人が尋問を受けます。
この記事では、証人尋問の概要やその構成、主尋問・反対尋問の目的やポイントを、詳しくご紹介します。
1. 法廷での証人尋問とは?証人による供述を証拠とする機会です
「証人尋問」ではその名のとおり、原告あるいは被告にとって証人となる人が法廷に呼ばれ、尋問(質問)をされます。
民事裁判で尋問をする人とは、味方である弁護士や、相手側の弁護士、さらには裁判官です。
裁判の結果を左右する「証拠」にはおもに「人的証拠」と「物的証拠」の2つのタイプがあり、証人尋問は「人的証拠」として重要な意味を持ちます。
・人的証拠(人証):裁判にて当事者や証人などによる供述や証言などの人による証拠
・物的証拠(物証):証拠資料となる物体や書面などの物理的証拠
「証人尋問」は裁判における、証拠を提示するためのほぼ最終的な機会であり、原告と被告いずれも本気で準備する必要があります。
2. 証人尋問の目的と必要性とは?
証人を法廷に呼ぶことで、自分が有利になるための供述を証人にしてもらうことが、証人尋問の目的です。
その供述を引き出すための質問を、味方の弁護士が問いかけるかたちでスタートします。
一方で相手側は、その供述内容を崩すための不親切な質問をして対抗するのが、証人尋問のおもな流れ、とイメージしておくとわかりやすいでしょう。
法廷でなされた証言は公の場で公言されたものとして、調書化(文章化)されて残り、証拠となります。
・証人や本人の想い
・法廷での態度や対応
・詳細な経緯
上記のような内容はすべて調書化される対象であり、裁判官の判断を左右しうる証拠です。
つまり、供述内容だけが裁判の結果を左右するわけではないため、証人の役目は非常に大きく、弁護士とは事前に入念なシュミレーションをしておく必要があります。
2-1 証人尋問に呼ばれる「証人」とは?
証人尋問をおこなうためには、証人となる人をあらかじめ申請します。
証人には真実で自分に有利な発言をしてもらうために、事前準備の上で尋問を受けてもらうことになります。
なお、証人として選ばれた人は法律上、強制的に出廷させることはできます。
しかし、証人尋問の目的が証人による有利な供述であることを踏まえると、こころよく引き受けてくれる人を選ぶのが得策です。
法廷での供述という、一般人にとって慣れない状況による心的負担や、準備や当日にかかる時間的負担があることを理解したうえで、証人として協力してくれる人物に依頼する必要があります。
なお、誰を何人、証人として採用するかという点については、裁判所に権限があります。
弁護士にはなるべく早い段階で、自分の強い味方となってくれる証人の存在を伝え、裁判所へ申請をしてもらうようにしてください。
3. 証人尋問の流れを解説
証人尋問は、下記の構成で進められることが一般的です。
①主尋問
②反対尋問
③補充尋問
それぞれの内容を流れに沿って、簡潔にご紹介します。
3-1 主尋問
「主尋問」では証人を用意した側から証人へ、事前に準備したとおりの質問をすることで、引き出したい証言を法廷の前で述べてもらいます。
事前準備さえしっかりしておけば、そのとおりに進めるだけで問題ありません。
3-2 反対尋問
「反対尋問」では、相手側の弁護士が証人へ、証言を崩すための質問をします。
事前のシュミレーションでは予想できない質問がされる可能性もあるため、弁護士との事前の相談が重要です。
3-3 補充尋問
補充尋問では、主尋問と反対尋問を経て裁判官から質問があります。
ここでの質問は裁判官が重視している内容が反映されている可能性が高いため、慎重に答える必要があるでしょう。
4【証人尋問】主尋問とは?目的は証人の供述を引き出すこと
「主尋問」は、証人尋問の際に法廷でまずおこなわれる尋問のことです。
証人を用意した側が、自分の証人に対して質問を投げかけることで、必要な証言を法廷の前で公にしてもらいます。
つまり、証人を用意する側はあらかじめ、どのような質問をしてどんな回答をして欲しいのか、弁護士の指示のもと入念に打ち合わせをすることができます。
この主尋問をうまくできない、となれば証人尋問をする意味がなく、事前準備の不足が原因で裁判の結果を悪化させることもじゅうぶんにありえます。
主尋問を受ける証人はリハーサルどおりに受け答えをすれば良いだけなので、心配する必要はありません。
4-1 主尋問は「陳述書」で事前準備が可能
近年の裁判では一般的に、「陳述書」と呼ばれる「証言のまとめ」を事前に裁判所へ提出することがほとんどです。
陳述書とは、どのような内容の証言をするのかをまとめた書面のことで、相手側も事前に内容を確認することができます。
・事件の全体像の把握
・予想される反対尋問への回答
・話し方による裁判官への印象
・提出する証言の真実性の証明
陳述書を作成する際には、上記のような裁判の全体像や流れを把握、そして予想します。
必要なことだけを洗い出し、裁判官に伝わりやすいよう作成しなければなりません。
また、発言内容は的確にコントロールし、その後の反対尋問にそなえます。
5【証人尋問】反対尋問とは?目的は証人の供述を崩すこと
「反対尋問」では、証人による主尋問の回答を受け、その反対の立場から尋問をします。
つまり、証言の矛盾があればそこを突き、相手の嘘や言い訳を見抜くことが基本的な反対尋問の目的です。
しかし、余計なことを言ってしまうことでかえって相手に有利な事実を引き出してしまうこともあり、その塩梅は弁護士の力にかかっています。
弁護士やその状況によって、反対尋問のやり方は異なります。
・感情的に責め立て相手を追い詰める
・理論的かつ冷静に言い詰める
・冷静に外堀を埋めボロを出させる
・警戒を和らげポイントを見つけ攻め込む
・あえて何も質問しない
どのような答えを聞きたいのか、どんな証言をされると困るのか、などの目的を把握したうえで、相手への精神的プレッシャーのかけかたまで調節しなければなりません。
その場で相手の性格や特性まで見極めて、どのように詰めるべきか判断する力も必要です。
反対尋問の内容次第で結果が大きく変わることもあるため、まさに弁護士の力の見せ所であると言われています。
6. 証人尋問の事前準備を解説
証人尋問は、証人を申請したい側の手続きと、事前準備から始まります。
証人尋問をしたいとき、事前におこなうことを順番に解説します。
6-1 証人へコンタクト
証人尋問をおこないたいとき、まずすべきことは、証人へのコンタクトです。
「証人尋問をしたいので、証人になってもらいたい」という旨を伝え、了承してもらう必要があります。
了承してもらったら、この後作成する「証拠申出書」へ証人の氏名・電話番号・住所を記載することを承諾してもらわなければなりません。
証人になるということは、法廷へと足を運ぶための手間と時間を用意してもらうということです。
また、証人尋問の事前準備として、主尋問や反対尋問のシュミレーションおよびリハーサルをしてもらう時間も必要になります。
証人は証人尋問へ出頭することで日当がもらえるのが原則ですが、準備時間や尋問に対する精神的ストレスを考えたうえで、お願いをする必要があるでしょう。
6-2 証人の申請
証人になってもらう人からの許可を得たら、当事者から裁判所へ「証拠申出書」を提出します。
裁判所は証拠申出書をもとに証人尋問をすべきかどうかを判断され、承諾された場合に証人尋問へとうつることができます。
証拠申出書には、下記を記載します。
・証人とする人の情報
・証人への尋問内容
・尋問の予定日時
証拠申出書を提出する際には、「陳述書」もあわせて提出します。
陳述書には、証人と事件の関連性のほか、証言内容も記載し提出するのが原則です。
【関連記事】証人尋問とは?回答の注意点|陳述書の重要性や作成・提出方法も解説
6-3 証人尋問準備
証人尋問で弁護士が証人へ、どのような質問をし、どのように回答すべきかを、入念にシュミレーション、およびリハーサルをします。
味方側の弁護士が証人へ、自分たちが有利となる供述を引き出すための質問を用意します。
質問に対する回答も準備し、証人は法廷にてリハーサルどおりに回答すれば良い状況を作っておくのが原則です。
一問一答となるので、証人が難しく考える必要はありません。
ここからは、証人尋問の流れを詳しくご紹介します。
7【まとめ】証人尋問は準備が大切。主尋問・反対尋問に備えよう
今回は、証人尋問の概要や、その準備の重要性をお伝えしました。
まずおこなわれる主尋問は、証人の供述を引き出し、自分有利に進めるために尋問がおこなわれます。
一方で反対尋問では、相手の証言にある矛盾や弱点につけ込み、その証言の真実性を崩す必要があります。
特に主尋問の事前準備の質によって、その裁判の勝敗が分かれることが多いです。
一方で反対尋問はその場での的確な判断力や、それまでに弁護士がつちかった経験値が、罪の有無や重さを左右するため、不得意とする弁護士は珍しくありません。
主尋問・反対尋問いずれにしても、事前準備は必要不可欠です。
信頼できる弁護士を味方につけて挑まれてください。
使途不明金や不動産の評価等の専門的な遺産調査や、交渉・裁判に力を入れて取り組んでいます。
相続の法律・裁判情報について、最高品質の情報発信を行っています。
ご相談をご希望の方は無料相談をお気軽にご利用ください。