証人尋問とは?回答の注意点|陳述書の重要性や作成・提出方法も解説
監修者ベストロイヤーズ法律事務所
弁護士 大隅愛友
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裁判の際、訴訟の勝ち負けに重要な影響をもたらすのが書証です。
証拠となる書面があれば有利になりやすく勝訴にぐんと近づく一方、決定的な書面がない場合に重要な役割を果たすのが「証人尋問(しょうにんじんもん)」です。
証人尋問の前には基本的に、裁判所から「陳述書」の提出が求められます。
陳述書には尋問の際の前提となる事実や証言を記載するため、陳述書自体が重要な証拠書類となるものです。
この記事では、そもそも「証人尋問」が重要と言われる理由や内容、証人尋問で回答する際の注意点、さらに「陳述書」の役割や作成・提出方法を詳しくご紹介します。
1. 証人尋問とは?証人へ質問し事実証明をする機会のこと
「証人尋問」とは、事件の当事者や証人へ検察官や裁判官、弁護人が法廷にて直接質問をする、証拠調べの最終段階です。
証言にあたる供述内容や口ぶり、態度はすべて証拠となり、その様子は調書化されます。
紛争の原因や経緯、本人や証人の心情、考え、思いなどが重要な証拠として残されるため、事前準備の有無は結果の勝敗を左右する要因のひとつです。
なお、詳しく後述している「陳述書」は、証人尋問を効率的かつ自分有利に進めるために重要な書類となります。
1-1「証人」とは?
「証人」とは当事者以外の存在であり、体験した事実や認識している過去の状況を供述する人のことです。
「当事者」とは被告人や弁護人、検察官を意味し、証人には出頭や証言の義務が課せられています。
証人として召喚された人物は、病気や遠方に住んでいるなど正当な理由なくして出頭しなかった場合、1年以下の懲役または30万円以下の罰金(刑事訴訟法151条)に処される可能性もあります。
1-2 「尋問」とは?
「尋問」とは、裁判所にて裁判官や弁護人、検察官が口頭で質問をおこなうことです。
証人は質問に対して口頭で答える必要があります。
証人は証人尋問にあたり信頼性を確立するため、「私は真実だけを述べている」として「宣誓」をおこなわなければなりません。
宣誓をしたにもかかわらず虚偽を述べた場合には、偽証罪(刑法169条)に処され刑事罰の対象となります。
2. 証人尋問の流れをステップで解説
証人尋問の当日は、下記の流れで進むことが一般的です。
①必要書類へ署名捺印
②主尋問
③反対尋問
④再主尋問
⑤補充尋問
それぞれのステップごとに解説します。
2-1 必要書類へ署名捺印
証人尋問のため待合室で待機しているあいだ、「証人出頭カード」や「宣誓書」へ必要事項の記載を求められます。
「証人出頭カード」には氏名と住所を記載します。
「宣誓書」には「良心に従って真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓います」と書かれていることに同意できれば署名捺印しましょう。
公判が始まると、証人待合室や傍聴席にて自分の番が来るまで待ちます。
自分の番が来たら証言台の前に立ち、裁判長から確認される氏名や生年月日などに間違いがなければ「はい」と返事をし、署名捺印した「宣誓書」を読み上げます。
2-2 主尋問
「主尋問」では、証人申請をした当事者が証人に対し、尋問をおこないます。
たとえば原告代理人が証人へ質問することで、証人の供述を裁判官へ聞かせるイメージです。
主尋問は味方どうしでシュミレーションをおこない回答の練習ができるので、問題なくスムーズにおこなえるでしょう。
事前に「陳述書(内容や重要性は詳しく後述)」にて証言を提出しているはずなので、供述内容については裁判官等へ知られた状態であるところに、重ねて口頭で供述する形になります。
裁判官は陳述書の内容や、そこに書かれていない事実を直接聞くことにより、供述内容の信用性を高め、状況理解を深めます。
【関連記事】民事訴訟での証人尋問とは?主尋問や反対尋問の目的・ポイントを解説
2-3 反対尋問
「反対尋問」では、相手方が敵の証人に対し、証言の事実性や信用性を崩すためにおこなう尋問です。
主尋問でされた証言に、矛盾や信用性の欠如があることを裁判官へ伝え、証言内容を崩すことが目的とされます。
証言内容に不自然な点や食い違いが生じている場合には目ざとく質問をするほか、代理人によってはきつい言い方で圧迫や挑発をするケースも多いです。
証人の敵となる相手方が、なるべく自分に有利になるよう、いかに証言を崩せるかが代理人の腕にかかっています。
【関連記事】民事裁判での反対尋問は重要?心構えや対策を弁護士が徹底解説!
2-4 再主尋問
「再主尋問」では、反対尋問で相手方に指摘された点や崩された信用を、味方である承認申請をした当事者や代理人が再度尋問をすることで回復させます。
証人である人は基本的に素人なので、反対尋問にうまく答えられなかったことや、答えに詰まってしまったこと、揺らいでしまった供述を復活させます。
ここでは味方による尋問になるため、証人が答えやすいかたちで質問をしなおしたり、意図が正しく伝わるよう証言を立て直すなど、代理人が手助けをしてくれるでしょう。
2-5 補充尋問
ここまでで、当事者である両者による尋問が終わります。
このとき必要があれば「補充尋問」として、裁判官から証人を尋問します。
再主尋問にて回復できなかった疑問点や、不明確となり浮上した事実などがあれば、裁判官から確認されるでしょう。
【関連記事】補充尋問とは?重要性や準備の仕方、証人尋問の流れまで詳しく解説
3. 証人尋問で回答する際の注意点
証人尋問では、相手の弁護人や裁判官、検察官からきびしい質問をされることが珍しくありません。
回答する際には、下記に気をつけておくと良いです。
①質問にだけ答える
②わからないことを無理に答えない
③常に冷静に回答する
④シュミレーションをおこなう
それぞれのポイントをご紹介します。
3-1 質問にだけ答える
証人尋問では、不用意な言葉が不利に動く可能性があります。
質問事項には簡潔に答え、不要な情報を説明しないことを強くおすすめします。
また相手の弁護人や裁判官、検察官によっては、回答以外に加えようとする説明部分に耳をかさないことも珍しくありません。
3-2 わからないことを無理に答えない
質問の意味がわからなければ、言葉を濁して答えるのではなく、「意味がわからなかったので、もう一度お願いします」と遠慮なく質問しましょう。
質問とその回答が噛み合わないと、何かを隠していると疑われる原因になるほか、相手に有利な情報を与えてしまうこともあります。
事実がわからない場合には、正直に「わかりません」と答えることがおすすめです。
3-3 常に冷静に回答する
反対尋問では、相手側を不利にさせるよう質問を投げかけます。
信用性を失わせるほか、不利になる言動を引き出そうとすることがあるため、腹が立つこともあるでしょう。
しかし、相手の挑発にのることなく常に冷静に回答することで、不利な情報を与えないことに注力しましょう。
3-4 シュミレーションをおこなう
証人尋問では限られた時間で、必要な証言をおこなう必要があります。
主尋問の練習をしておくのはもちろん、反対尋問での質問シュミレーションもしておくことで、事前に準備しておきましょう。
弁護士と打ち合わせをしておくことで、どのような質問をされうるのか、ある程度予測が可能です。
4. 陳述書とは?証人尋問に必要な「証言」です
「陳述書」とは、証人尋問の際にもっとも基礎となる、「真実を述べるための書面」です。
陳述書は本人が作成することも許されていますが、基本的には弁護士が専門家としてまとめます。
重要なのは、真実が分かりやすくまとまっていることです。
不要な内容や事実と異なる内容、矛盾が生じた陳述書を作成してしまうと、証拠の信用性が薄くなり不利になることが大いにありえます。
陳述書の作成要領としては、紛争の原因となる事実を下記のとおり横書きで作成するよう求められています。
▼陳述書の作成要領
・A4版用紙を縦方向に使用
・左側に3cmほどの余白を設ける
・時間の経過を追い日付順に記載
・それぞれの項目ごとに番号をふる
・どこで、誰が、誰と、何を、どうしたかを具体的に記載
・末尾に陳述書の作成年月日と本人の署名、捺印をする
なお、陳述書のコピーは他方当事者にそのまま送付されるため、開示をしたくない住所や勤務先などの不要な情報は記載してはいけません。
尋問の際に言い足りないことが残らぬよう書き記しますが、作成要領にしたがって記載する必要があります。
正直なところ、民事訴訟の多くはこの「陳述書」の内容ですでに勝負はついていることが少なくありません。裁判所はその要点だけを当事者本人や証人に質問することが一般的です。
4-1 陳述書を弁護士が担当すべき理由とは?
裁判所はそもそも、陳述書を素人に作成させるつもりはありません。
なぜなら素人は、判決に必要のない情報をダラダラと書いたり、感情部分をひたすらに綴ったりしてしまうものであり、分かりづらいからです。
陳述書は自身を有利にする書面になっていなければ意味がなく、必要事項が書かれていなければかえって不利に働くことも。
ほとんどのケースで弁護士が本人や証人に聞き込みをおこない、必要な事項をまとめます。
本人や証人は内容を確認し、必要に応じて加筆修正をおこなったうえで、署名・捺印をし裁判所に提出すればOKです。
証人尋問までに裁判所はあらかじめ陳述書に目を通し、それをもとに証人尋問がおこなわれます。
陳述書には明確性のある事実だけを記載し、あくまで「読みやすい」文書であることが重要です。
裁判所は1つひとつの内容を丁寧に確認するほど時間があるわけではないため、弁護士が陳述書を作成していない場合には、不利な証言が後を引き、結果につながる可能性が高まります。
5【まとめ】証人尋問は陳述書の準備が大切
証人尋問の目的は、判決や、犯罪事実の有無を判断するための証拠を調べることです。
証拠には人的証拠「人証」と物的証拠「物証」の2つがあり、証人尋問では人証を得ることで正式な判断がくだされます。
証人尋問での口頭でなされる証言は、判決内容や、刑罰の有無や量刑の判断に重要な証拠(人証)となるものです。
しかし口頭だからこそ、質問に対して咄嗟に不利な答えをしてしまうと、訴訟の結果を左右する要因にもなり得ます。
陳述書であらかじめしっかりと要点を伝えておくことや、弁護士と入念に打ち合わせをしておくことで、落ち着いて証人尋問にのぞむことができるでしょう。
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