遺産分割調停(相続調停)を無視するデメリットは?

監修者ベストロイヤーズ法律事務所

弁護士 大隅愛友

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相続問題があると突然「呼出状」が届き、遺産分割調停(相続調停)を申し立てられたことを知る、というケースがあります。

しかし、調停がおこなわれるのは平日であるうえに、初回の呼び出し期日は申し立てた側によって指定されるものであるため、都合がつかないこともあるでしょう。

結論、遺産分割調停に正当な理由無く欠席した場合、法律上は5万円以下の過料を処される可能性はあります。

しかし実際のところ過料が処されるケースはかなりマレなので、実質「任意」で出席するものであると認識して良いでしょう。

とはいえ、出席しないデメリットはいくつか存在するため、できるだけ出席すべきです。

この記事では、遺産分割調停(相続調停)を出席することのメリットや、無視することのデメリットについて、詳しくご紹介します。

さらに、「本当は遺産分割調停に出席したい」という場合の解決法までお伝えするので、安心して読み進めてみてください。

1 遺産分割調停とは?

遺産分割調停」とは、「遺産分割協議」にて一同の合意が得られなかった場合に発展する手続きです。

遺産分割協議書と遺産分割調停はいずれも、相続人全員の同意がなければ成立しません。

そこで、遺産分割協議書にてすべての相続人が合意しない場合には、遺産分割調停にて合意のための主張をし合い、全員が合意できる結果を導き出すというのが主旨です。

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1-1 遺産分割調停を無視するとどうなる?

遺産分割調停へ相続人のうち1人でも出席しなかった場合には不成立で終了となり、その場合には自動的に審判(家事事件手続き法272条1項)へと移行します。

審判は調停とは異なり話し合いの場ではないため、それまでの主張や証拠に基づいて裁判官が判決をくだすという流れです。

つまり、相続調停を無視し続けても話自体は勝手に進められてしまうため、結果的に参加しなかった人は不利な結果になる傾向があります。

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1-2 自分は関係ない相続!遺産分割調停は無視しても良い?

たとえば、自分の相続分以外の部分で他の相続人が争っている場合、一見すると自分は関係ないことのように見えるため、遺産分割調停を無視したいと感じるかもしれません。

しかし、遺産分割調停は原則、当事者が全員出席しなければならないものです。

無断で欠席してしまうと、裁判所は状況を正しく判断しにくくなり、関わるすべての人に迷惑をかけます。

とはいえ、どうしても出席したくない、あるいは出席できない場合には、事情を記載した「答弁書」を裁判所へ提出しましょう。

期日を最低限に減らしてもらえるなど、対応をしてもらえる可能性があります。

2 遺産分割調停(相続調停)を無視したい!欠席の正当な理由とは?

遺産分割調停(相続調停)を正当な理由なく欠席、および無視をした場合には、5万円以下の過料制裁を受ける可能性があります。

そこで「遺産分割調停を無視したい」と考える人には、下記のような理由があげられることが多いはずです。

・他の相続人に会いたくない

・遠方で足を運べない

・日程が調節できない

・相続に時間をとりたくない

・申立人の主張に意義がない

結論、「他の相続人に会いたくない」などは角が立つためおすすめしませんが、上記は正当な理由としてじゅうぶんと言えることが多いです。

「正当な理由」の範囲は穏やかに示されるため、たとえば「仕事がある」「育児でいそがしい」などと言えば、ほとんどの場合に5万円の過料を心配する必要はありません。

ただし、デメリットも確認したうえで対応を考えるべきでしょう。

3  遺産分割調停を無視するデメリットとは?

遺産分割調停を無視するデメリットは、おもに下記のとおりです。

①自分に不利な結果になりやすい

②相続人や調停委員からの印象が悪くなる

③訴訟起訴に発展する可能性がある

それぞれのデメリットについて、詳しく解説します。

3-1 自分に不利な結果になりやすい

遺産分割調停(相続調停)を無視することによるもっとも大きなデメリットは、自分にとって有利な主張ができなくなることです。

いくら相続人へ直接意見を伝えていたとしても、遺産分割調停という場で主張をしなければ、意見がないものと同様になります。

「介護をしていた」「会社に大きな利益を与えた」「生活費を負担していた」など、遺産を平等に分割されては不利益をこうむるという場合には、主張をする必要があるでしょう。

3-2 相続人や調停委員からの印象が悪くなる

当事者の話し合いを仲介するのは、「調停委員」と呼ばれる遺産分割調停では選任された人です。

一度でも呼び出しを無視し欠席してしまった場合、調停委員からの不信感をもたれやすく、印象が悪くなる可能性が高まります。

無断で欠席するというのは社会的にみてもモラル違反であり、欠席者の立場が弱くなってしまうのは当然と言っても過言ではありません。

また無断欠席は基本的に「相手方の意見に全面的に同意する」という意思表示と取られることもあります。

「自分が出席するにもおよばないほど、相手の主張は理にかなっていない」などの怒りの感情から、欠席を意思表示にしようと考える人がいますが、調停の場では通用しません。

自分有利に動かしたいのであれば、遺産分割調停にどうにか出席し、意見を主張する必要があります。

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3-3 訴訟に発展する可能性がある

遺産分割調停の呼出を無視し続けると、結果的には審判が必要になります。

また、審判とは別印、遺留分や遺産分割、遺産の内容の調整、遺言書の有効性などの話が他の相続人のあいだで腑に落ちていない場合、訴訟を起こされるかもしれません。

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訴訟となった場合に裁判所から届く「訴状」も無視し欠席してしまうと、相手がたの意見をすべて認めたことと判断されるため、大きな不利益をこうむる結果になる可能性があります。

その後裁判に発展すると、何年ものあいだ戦い続けなければならなくなるケースも珍しくはありません。

できるだけ遺産分割調停に出席し、この時点で話し合いをして終了してしまったほうが、その後の負担にならずにすむはずです。

4 遺産分割調停(相続調停)を無視したくない!解決方法とは?

遺産分割調停を無視することで、自分に不利な結果になる可能性があるほか、相続人からの印象が悪くなるなどの点が懸念されます。

そこで、遺産分割調停に自分自身が出席できない場合には、下記のように対応することが可能です。

①家庭裁判所に延期希望を出す

②遺産分割協議書で決着をつける

③代理人を用意する

④相続放棄あるいは譲渡する

他の相続人とのあいだにどれだけ不満を抱えているかによっても、ベストな選択肢は異なります。

それぞれの解決方法について、詳しく解説します。

4-1 家庭裁判所に延期希望を出す

初回に指定された期日でなければ遺産分割調停に出席できる、というのであれば、期日の延期あるいは2回目の遺産分割調停の期日を希望することができます。

事前に家庭裁判所へ連絡し、指定期日での出席が難しい理由とあわせ、代わりの期日を提示しましょう。

裁判所としては、このように積極的に動こうとする当事者に、悪い印象は抱きません。

呼出状を無視して何も連絡しないまま欠席するのがもっとも印象を悪くし、その後は結果にも響く可能性があるため、かならず事前に期日調整を希望する旨を伝えましょう。

4-2 遺産分割協議書で決着をつける

本来であれば遺産分割調停の前段階である「遺産分割協議書」に合意し押印すれば、当事者間で相続内容を決定することができます。

たとえ遺産分割調停の呼出を無視しても、審判や訴訟となり、自分に不利な形で決定してしまうだけです。

多少は妥協してでも当事者間で話し合いをまとめたほうが、時間と費用をおさえることができるかもしれません。

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4-3 代理人を用意する

代理人として弁護士を選任し、自分の代わりに調停に出席してもらうことができます。

弁護士を代理してでも出席すべきケースは、たとえば下記です。

・相続人とトラブルが起きている

・顔を合わせたくない相続人がいる

・伝えたい意思や主張がある

・相続に関する手続きに手間がとれない

弁護士を代理人にすることで、プロとして有利な主張をしてもらえることが期待できるほか、相続に関するその他の手続きについても任せられるのがメリットです。

一方で弁護士への依頼には費用がかかるのがデメリットであり、場合によっては主張を諦めたほうが金銭的な損失をおさえられるかもしれません。

選任するのであれば、相続トラブルに強い弁護士に依頼することをおすすめします。

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4-4 相続放棄あるいは譲渡する

自分の相続分を他の相続人へ譲渡する、あるいは放棄することが可能です。

譲渡する場合には有償・無償を選ぶこともできるため、てっとりばやく相続問題から身を引きたいときに有効でしょう。

「相続分譲渡証明書」を譲渡人と譲受人の間で作成し、遺産分割調停があるのなら管轄の裁判所へ提出します。

一方で、「遺産は不要」「借金を引き継ぎたくない」と思っているなら、相続放棄をすることも可能です。

ただし相続放棄には期限が決まっており、相続人が自分のために相続が発生したと知ってから3ヶ月以内に手続きをしなければなりません。

相続放棄をする場合には、被相続人が居住していた家庭裁判所へ手続きを申し出ましょう。

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5 【まとめ】遺産分割調停(相続調停)は無視すると不利になる

遺産分割調停(相続調停)を無視しても、ほとんどの場合に5万円未満の過料をかされることはないですが、無断での欠席はおすすめしません。

あくまで法律上は「正当な理由がある場合」に過料が発生しないことになっているため、無視はせず欠席や延期希望の旨を家庭裁判所へ伝えることが大切です。

無視をするということは、自分の主張を伝える機会を逃すことになるため、自分が有利な結果になるとは考えにくくなってしまいます。

本当は出席したくても、体調や健康面の理由で移動ができないのであれば、代理人に依頼することも可能です。

無視ではなく、どうしたいのか意思を家庭裁判所へ伝えましょう。

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