むちうち(頸椎捻挫)で休業損害は受け取れる?休業期間や注意点を解説!

監修者ベストロイヤーズ法律事務所
弁護士 大隅愛友
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慰謝料の増額、後遺障害認定のサポートを中心に、死亡事故から後遺障害、休業損害の請求に取り組んでいます。
交通事故の被害者救済のために、積極的に法律・裁判情報の発信を行っています。
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交通事故にあい、むちうち(頸椎捻挫)症状に悩む方は多く、症状を理由に仕事を休まなければならない人もいるでしょう。
日常生活を送れるようになるまでは、定期的な通院が必要です。
その間、仕事を休業しなければならない場合、収入が減ったり途絶えてしまったり金銭面で心配なこともありますよね。条件が揃えば、むちうちは休業損害が認められます。
本記事では、むちうちにおける休業損害のポイントや注意点について解説します。
1 むちうちで仕事を休んだら休業損害が認められる
むちうちで仕事を休まなければならなくなった場合や、通院ため遅刻や早退せざるを得なくなった場合は、休業損害を受け取れます。
むちうちは、交通事故などによって首周辺の筋肉や靭帯に強い力がかかったことによって引き起こされ、主な症状は首・腰の痛みやしびれ、吐き気やめまいといったものです。
症状がよくなるまでに必要とされる期間は約2か月〜3か月とされていますが、個人差があり、長い人だと半年以上症状が続くケースもあります。
2 むちうちで休業損害が認められる人
休業損害の請求が可能なのは主に下記のような人です。
- 給与所得者
- 自営業者
- 主婦・主夫(専業・兼業問わない)
アルバイト・パート勤務の学生や、就職に遅れが生じた学生なども、場合によっては請求できます。
休業損害額の基本式は、「事故前の平均賃金日額×休業日数」です。しかし、それぞれの労働形態で算出方法が異なるので、その点も解説します。
2-1 給与所得者
サラリーマンや公務員などの給与所得者は事故前3か月の給与を基準に「事故前の平均賃金額」を計算します。
ただし、算出基準には自賠責保険の自賠責基準、任意保険会社の基準、裁判所の判例にもとづく裁判基準(弁護士基準)の3つからいずれかの基準が採用されます。
基準 |
平均賃金日額 |
自賠責基準 |
6100円(実収入を証明することで上限19000円まで) |
保険会社基準 |
保険会社が独自に設定する。自賠責基準とほぼ同額もしくは多少高額になる程度。 |
裁判基準(弁護士基準) |
事故前3か月間の収入÷事故前3か月間の実労働日数 ※実労働日数を90日として計算することもある。 |
自賠責基準では、実際の収入を証明しても上限が日額19000円までです。一方で、裁判基準(弁護士基準)は上限がなく、最も高額かつ適正額となります。
なお、有給休暇を利用し、給与に影響がでなかったとしても受け取ることが可能です。
2-2 自営業者
自営業者の平均賃金日額は、「前年度の確定申告の申告所得÷365」となります。よって、休業損害は下記のとおりです。
前年度の確定申告の申告所得÷365×休業日数
なお、申告した所得と実際の所得が異なっていることや、そもそも申告していないこともあるでしょう。
そういった状況でも、休業損害は受け取れる可能性があるので弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。
2-3 主婦・主夫
専業主婦(主夫)や兼業主婦(主夫)の方も家事・育児に支障がでていれば、休業損害を受け取れます。
とくに専業主婦(主夫)は就労していないため、休業損害を受け取れないと決めつけてしまう人もいるので注意が必要です。専業主婦(主夫)の場合、休業損害額は賃金センサスの平均収入から算出をするケースが多いです。
兼業で、ある程度の収入がある主婦(主夫)の場合は、実収入をもとに算出します。
【関連記事】主婦(主夫)でも休業損害を受け取れます|損をしない3つのポイントを弁護士が徹底解説
3 むちうちで休業損害が認められる期間
むちうちで休業損害が認められる期間は、事故発生から医師が「完治」または「症状固定」と診断した日までとなります。
一般的なむちうちの場合、事故から1か月間は急性期であり、強い痛みがでやすいです。
この期間は頚部の安静がとくに重要で、後遺症にも関わる期間のため、仕事は休むのがよいでしょう。
1〜3か月目までは亜急性期で、修復期間になることが多く、慢性期に入るのは3か月目以降です。
そのため、むちうちで休業損害が認められる期間の目安としては3か月程度とされています。
ただし、1〜2か月の間に「完治」や「症状固定」と診断があった場合、休業損害が認められるのはその時点までとなります。
4 むちうちで休業損害請求をする際の注意点
むちうち症状で休業損害を請求していくうえで注意点があります。注意点を見落とすと休業損害が受け取れなかったり、額が下がったりするリスクがあります。
4-1 医師の診断書を必ずとる
休業損害を受け取るためには、医師の診断書が必要です。
むちうちの場合、診断名は「外傷性頚部症候群」「頸椎捻挫」「頚部挫傷」などになります。
診断書の作成費用は3000円〜5000円程度かかりますが、領収書を保管しておくことで相手保険会社に請求可能です。
4-2 仕事より治療を優先する
むちうちは症状が軽いこともあり、繁忙期などといった理由で治療を後回しにして仕事を優先にする人をまれに見かけますが、これはNGです。
【関連記事】(交通事故)痛くないのに通院・検査してよいの?不正請求を疑われない注意点
まずはお体が第一です。そして、仕事を優先したため、事故から初診が遅れたり通院期間に空白ができたりすると、通院状況の点から休業損害の期間と認められなくなります。
結果、適正額の休業損害はもちろん、その他受け取るべきであった慰謝料も受け取れなくなる可能性もあります。
5 弁護士に依頼するメリット
事故にあいむちうちになった際、弁護士に相談することで、受け取れる損害賠償の大幅アップが見込めたり、精神的な負担が軽減されたりとさまざまなメリットがあります。
【関連記事】交通事故を弁護士へ相談するベストのタイミングは?
5-1 裁判基準(弁護士基準)で損害請求ができる
弁護士が休業損害を請求する際は、裁判基準(弁護士基準)を採用するケースが多いです。
上述したように、裁判基準は最も高額であり、受けた損害の適正額です。
自賠責基準や保険会社の基準を受け入れてしまうと、損害の適正額よりも下回り自分が損をしている可能性もあります。弁護士に依頼することで、請求できる休業損害の増額が期待でき、損失を回避できます。
5-2 保険会社への対応が楽になる
保険会社と休業損害の期間で争いになることがよくあります。
上述したように、むちうちはおおむね3か月が休業損害を受け取れる目安です。
しかし、症状によってはそれ以上の期間通院が必要で、仕事ができない日が続くこともあります。
保険会社も営利企業であるため、なるべく自社が支払う額は低くおさえたいものです。保険会社から「もう症状固定の時期なので、休業損害の期間は終了です。」などと伝えられることもあります。
【関連記事】交通事故の「治療費の打ち切り」とは?不払いへの3つの対応方法を弁護士が解説
そういった際にも弁護士に保険会社対応の窓口を任せられます。保険会社も交渉のプロであるため、一般の方が対応するのは精神的に負担がかかるものです。
弁護士であれば、保険会社からの交渉にも適切に対応し、正しい休業損害の期間を主張し、適正額の休業損害を請求できます。
5-3 後遺障害が認定されやすくなる
むちうちは後遺障害14級9号、症状が重い場合は12号13級に認定されることがあります。
後遺障害認定を受けると、後遺障害慰謝料も請求でき、適正額の損害賠償を受け取れます。
しかし、後遺障害認定には医師が作成した後遺障害の診断書やCTやMRIなどの検査画像の提出を求められるなど、負担がかかるものです。
【関連記事】後遺障害診断書のもらい方~手続きや取得のポイント
後遺障害認定の申請に精通している弁護士に依頼すれば、そういった書類をスムーズに準備でき、認定される可能性を高められます。
6 まとめ
むちうちになると身体的、精神的ともにダメージを追ってしまいますが、正しい手順を踏むことで休業損害が認められます。
仕事を優先してしまうと適正額の休業損害を受け取れない、もらえるはずだった額が受け取れない等のリスクがあるとお伝えしました。
弁護士に依頼することで相手保険会社とのやりとりを軽減したり、損害額の増額が見込めたりします。
自分が加入している保険に弁護士特約が付いていれば費用がかからないことも多く、一度自分の保険を見直すことをおすすめします。
【関連記事】「弁護士特約の利用は保険会社が嫌がる」ことなの?3つの理由と対応方法
慰謝料の増額、後遺障害認定のサポートを中心に、死亡事故から後遺障害、休業損害の請求に取り組んでいます。
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