遺骨トラブルはどうやって防ぐの?祭祀財産の承継について弁護士が徹底解説!
監修者ベストロイヤーズ法律事務所
弁護士 大隅愛友
監修者ベストロイヤーズ法律事務所
弁護士 大隅愛友
使途不明金や不動産の評価等の専門的な遺産調査や、交渉・裁判に力を入れて取り組んでいます。
相続の法律・裁判情報について、最高品質の情報発信を行っています。
ご相談をご希望の方は無料相談をお気軽にご利用ください。
相続トラブルというと、遺産分割や遺言の争いがイメージされますが、実は、亡くなった人の遺骨をめぐって親族間でトラブルになることがあります。
誰が遺骨を引き取るべきか判断するのは非常に難しいケースも多いです。
本記事では、よくある遺骨トラブルや祭祀財産の承継者について、相続に詳しい弁護士が解説します。
現在、遺骨トラブルの相談受付はしておりません
ただいま鋭意準備中です。
何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
1 よくある遺骨トラブル
遺骨をめぐって親族間でトラブルになることも少なくありません。よくあがる例としては下記のようなものがあります。
・遺骨の所有者が誰になるのか
・分骨をしたい・したくない
・納骨の方法で親族の意見が不一致
遺骨や供養に対する思いは、宗教や人それぞれの価値観で大きく異なります。そのため、遺骨を扱う場面ではトラブルになりやすいのです。
1-1 所有者に関するトラブルがもっとも多い
遺骨をめぐるトラブルでもっとも多いのは、遺骨を誰が所有するかで遺族がもめるパターンです。
たとえば、両親がいる状態で夫を残して他界してしまった場合、誰が遺骨を引き取るかで両親と配偶者である夫がもめるようなパターンです。
この場合、通常は慣習によって判断されるため、配偶者である夫が遺骨を受け取って子孫に引き継いでいくべきと考えるのが自然でしょう。
しかし、慣習は民法で明確に定められておらず、絶対的なルールではありません。そのため、所有者に関する事例が遺骨トラブルの大部分を占めています。
2 遺骨は祭祀承継者の所有物になる
遺骨は誰のものになるのかという問題についてですが、基本的には「祭祀承継者」が管理を行うべきものと考えられます。過去の最高裁判所の判例をみても、祭祀承継者が遺骨の引き渡し請求をできると判示しています。
2-1 祭祀承継者とは
祭祀承継者とは、祭祀財産を引き継いで管理する人のことを指します。
祭祀とは、お通夜や葬儀・法要など、亡くなった人を祀ることです。祭祀財産は、祖先を祀る儀式に必要な財産のことです。
たとえば、位牌や仏具などの「祭具」や、墓地や墓石などの「墳墓」、「系譜」(いわゆる家系図)などが含まれます。
祭祀財産については、金銭的価値のある「財産を受けとる」といったものではなく、お墓や仏壇の管理に必要なものです。遺骨は厳密には祭祀財産には含まれませんが、墓地に納骨することとなれば、墓地や仏壇と一緒に祭祀承継者が管理をすべきと考えられます。
2-2 祭祀財産と相続財産は別物
祭祀財産は相続財産とは異なり、遺産分割の対象になりません。
【関連記事】遺産相続トラブルの兄弟間における事例7選|予防や解決策も詳しく解説
預貯金や不動産などの相続財産とは別物として扱われることになります。相続財産については、金銭的な価値のある財産になるため遺産分割協議や遺産分割調停などを経て、相続人同士で遺産を分けることが可能です。
【関連記事】遺産分割調停の流れ~メリット・デメリット等について弁護士が解説
一方で祭祀財産については、基本的には1人の承継者がすべてを引き継ぎます。そして、祭祀承継者は祭祀の主宰者となります。
これは、相続財産のように分割が行われてしまうと、亡くなった人を祀る役割が誰にあるかわかりづらくなり、「祖先を祀る」ことそのものがなされない可能性があるからです。
3 祭祀主宰者の決まり方
民法897条1項では、「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定に関わらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。」と記されています。
つまり、被相続人からの指定がない場合は、地域の慣習に従って定めるということです。
さらに、民法897条2項では、「前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める」と記されており、家庭裁判所が指定できることも書かれています。
それぞれの決まり方についてみていきましょう。
3-1 被相続人が指定する
まず1番に優先されるのは、被相続人が指定した人です。
遺言書などで祭祀財産を誰に渡すかが記載されていれば、基本的には指定された人が承継者になります。祭祀財産については、遺言書のように法律に沿ったものでなくても、手紙やメモでも「指定した」と認められるケースがほとんどです。
【関連記事】遺言書の書き方~自筆で書く遺言のポイントと注意点を弁護士が解説
【関連記事】遺言執行者を弁護士にするメリットは?役割や選任の方法について解説
3-2 慣習に従う
被相続人からの指定がない場合は、慣習によって祭祀承継者が定められることになります。
たとえば、戦前から続く家父長制が強く根付いている地域では、「長男が財産のすべてを受け継ぐべき」という考えが浸透しています。こういった地域では、長男が祭祀承継者となることが多いです。
ただし、上述したように、慣習については民法で明確に定められていないため、実際には相続人同士が慣習の考え方をもとに話し合って決めていくことになります。
3-3 家庭裁判所が指名する
被相続人の指定がなく、慣習に従って決めることも難しい場合は、家庭裁判所が祭祀承継者を指定します。
承継者の指名は、被相続人との身分関係だけでなく、被相続人との生活関係も考慮されます。
被相続人との生活関係において、「もし被相続人に意思表示の場があったら、承継者と指定した可能性があったかどうか」を踏まえて指定されます。つまり、被相続人と生活のなかで親密な関わりがあり、被相続人が感謝など特別な感情を抱く可能性のあった人物が選ばれるということです。
たとえば、血はつながっていなくても、内縁の妻や養子縁組をした養子などが祭祀承継者となることもあります。
【関連記事】養子縁組の相続|メリット・デメリットを弁護士が徹底解説!
4 祭祀承継者は相続を断れない
祭祀継承者となった場合、祭祀財産を相続放棄することはできません。
遺産を相続放棄する場合であっても、祭祀財産だけは承継することになります。つまり、お墓などの管理と合わせて遺骨も引き取ることになります。
ただし、祭祀財産を引き継いだ後に墓じまいをするのは可能です。お墓の管理が難しい場合には、適切な手続きを経て墓地を管理者へ返却し、遺骨は寺院などで永代供養してもらうこともできます。
【関連記事】相続放棄の費用|一度きりの手続きは安心の弁護士へ
5 遺骨トラブルを避けるために
遺言書で祭祀承継人を指定しておくことで遺骨に関するトラブルを回避できる可能性は高まります。
【関連記事】誰でもできる終活ノートの作り方!手順や留意点を弁護士がやさしく解説
祭祀承継者に負担がかかる場合は、相続財産についても遺言書で負担が軽減されるようにしておくとよいでしょう。
たとえば、「祭祀承継者を長男とするが、お墓の管理のためにかかる費用分、次男と三男より財産を多く分け与える」といった例があげられます。
ただし、相続財産が絡む場合、遺言書は法に沿った形式のものでなければ効力を発揮しません。
【関連記事】遺産を一人だけに相続させたい|遺言のケース例や注意点を解説
【関連記事】遺言書の全財産が無効になるケースとは?一人に相続させることは可能?
遺言書の書き方に迷った際は、弁護士など法律の専門家に相談することで実現可能性の高い遺言書の書き方をアドバイスしてもらえます。
【関連記事】公正証書遺言の作成に必要な書類は?費用やメリットを弁護士が分かりやすく解説
6 どうしても遺骨の所有を主張したい場合は
遺言もなく、親族間で話し合いが決着しない場合は家庭裁判所が間に入って「祭祀承継者指定調停」を行います。
調停でも決着しない場合は家庭裁判所の審判によって祭祀承継者が決まります。
遺骨の所有について主張していきたい場合は、この審判において家庭裁判所に対して自分が祭祀承継者としてふさわしい理由を主張していく必要があります。そのためには、下記の2つについて資料を提示しながら客観的に証明をしていかなければなりません。
・被相続人と生前に一定以上の信頼関係があったこと
・被相続人が意思表示をしたとしたら、あなたを祭祀承継者に指名した可能性があったこと
思いや被相続人との続柄を主張するだけでは不十分なのです。客観的な証明に不安がある場合は、専門的知識のある弁護士にサポートを依頼することをおすすめします。
7 まとめ
誰が遺骨を引き取るのか、分骨をするのかといった点は遺族で思いが違うこともあり、トラブルになりやすいです。
しかし、遺骨は基本的に祭祀承継者が管理するものと考えられています。
祭祀継承者が誰か相続人同士で話がまとまらないときには家庭裁判所が指定し、指名を受ければ原則断れません。遺骨トラブルを避けるためには、生前に遺言書を書いておくことが有効な手段です。
遺言書や相続について迷った際は、弁護士に依頼することで状況にあったサポートを受けられるので安心です。
現在、遺骨トラブルの相談受付はしておりません
ただいま鋭意準備中です。
何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
使途不明金や不動産の評価等の専門的な遺産調査や、交渉・裁判に力を入れて取り組んでいます。
相続の法律・裁判情報について、最高品質の情報発信を行っています。
ご相談をご希望の方は無料相談をお気軽にご利用ください。