バイクのすり抜けによる交通事故、過失割合はどうなる?弁護士が解説
弁護士 (弁)ベストロイヤーズ法律事務所
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交通事故の被害者救済のために、積極的に法律・裁判情報の発信を行っています。
自動車よりも車幅が狭いバイクは、スルッと車のわきをすり抜けられるため、車の運転手としてはキモが冷える想いをすることもあるでしょう。
自動車の運転手の死角に入ってしまうことがあり、バイクのすり抜けは交通事故の原因にもなりえます。
バイクと自動車が衝突したとき、バイクの方が弱者であると捉えられることから、自動車に過失割合が大きく振り当てられることが多いです。
しかし、バイクのすり抜けには厳しいルールが設定されており、法律やルールに違反している場合には、バイクの過失が100%になることもあります。
たとえば、直進していただけの前方を走る自動車と、その横をすり抜けようとしたバイクの衝突事故の場合、バイクの過失が100%になる判例がほとんどです。
今回は、バイクのすり抜けによる交通事故時に、バイクに過失が認められるケースや、過失割合の目安を詳しくご紹介します。
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1 バイクのすり抜けとは?追い越し・追い抜きの違いとルール
バイクのすり抜けとは一般的に、「追い越し」と呼ばれる動き方を意味します。
「追い越し」とは、「進路を変えて前方車両の前に出ること」を意味します。
つまり「追い越し」は、2車線以上ある道で、自分の前を走っている車両の前に出るために、右側の車道へ一度出てから前方車両を抜き、もともと走っていた車線に戻ることです。
一方で「追い抜き」とは、「進路変更をすることなく進行方向前に走る車を抜かす」ことを意味します。つまり「追い抜き」とは、もともと隣の車線の前方を走っている車両よりも前に出ることであり、自分が走っている車線は変えません。
とはいえ、「追い越し」や「追い抜き」の違いとして厳密に道路交通法が定められているわけではなく、あくまで行為に区別をつけるための呼び方とされています。
バイクのすり抜け事故は、後方を走っていたバイクの追い越しや、対向車線で追い抜きをしたバイクとの衝突によるケースが多いです。
2 バイクのすり抜けによる交通事故|法律違反・違法のケースとは?
道路には、バイクでの追い越しが禁止されている場所があります。
追い越し違反をした場合には、反則金が課せられます。
|
反則金+違反点2点 |
---|---|
大型車 |
12,000円 |
普通車 |
9,000円 |
二輪車 |
7,000円 |
小型特殊車 |
6,000円 |
原付 |
6,000円 |
すり抜け禁止の場所でバイクがすり抜けをおこなった場合には、バイク側に反則金や違反点の罰則が課せられます。
また、過失割合についても、すり抜けをしたバイクに100%の過失が認められることが多いです。
2-1 【バイクすり抜け事故】ルールを確認しよう
追い越し可能な場合に起きた事故でも、正しいルールを守っているかどうかは過失割合に大きく影響します。
正しいルールとは、下記の通りです。
・追い越し時には原則、前の車両の右側を通って進路変更する
・前方車両が道路の中央や右寄りを走っていれば左側を通行しても良い
・前方車両が右折をしているときには左側を通行する
・車線変更を伴わなわない場合は左側通行できる
ここからは、法律違反となるすり抜けのケースを詳しくご紹介していきます。
3 【バイクのすり抜け事故】過失割合が高くなる法律違反とは?
バイクに限らず、すり抜けおよび追い越しが禁止されている場所やケースは、下記の通りです。
①追い越し禁止の標識がある
②センターラインが白色あるいは黄色の実線である
③定められた特定の場所である
④渋滞中や赤信号での割り込み
それぞれの追い越しケースについて、詳しくご紹介します。
3-1 追い越し禁止の標識がある
追い越し禁止の標識がある場合には、当然ですが標識にしたがう必要があります。
補助標識の有無によって意味が異なることは、免許の取得時に学習したはずですが覚えているでしょうか?
基本的には、追い越し禁止の標識があるときには追い越し行為自体をしないことが、運転手にとってベストな判断です。
▼補助標識がない場合
補助標識がない「追い越し禁止」の標識がある場合には、センターラインより右側にはみ出さなければ追い越すことは可能です。
たとえば、前方者が左側に避けてくれた場合には、センターラインより内側で動けるのであれば、追い越しても問題ありません。
ただし、2車両が並んでもぶつからないほど広い道路は珍しく、追い越してセンターラインを超えた場合には違反として罰金対象となるため、正しく状況判断をしましょう。
▼「追い越し禁止」の補助標識がある場合
文字通り、どのような追い越しも禁止です。
道路のセンターラインより右側にはみ出さない場合にも、追い越し行為自体が禁止されています。
3-2 センターラインが白色あるいは黄色の実線である
センターラインを見ることで、追い越しのルールが把握できます。
・白色の破線:追い越し可能
・白色の実線:実線内の追い越し可能
・黄色の実線:実線内の追い越し可能
つまり、白色と黄色の実線が引いてある場合にはいずれも、実線をはみ出して追い越しすることが禁止されています。
白色の実線の場合には、道路の横幅が6m以上であることを示しているため、わざわざセンターラインを超えて追い越しをする必要がないことを意味しています。
黄色い実線の場合には道路の横幅が短いため、無理に追い越しをすると接触事故に発展するため注意が必要でしょう。
3-3 定められた定められた特定の場所である
道路の一定の場所は、追い越しや追い抜きが禁止されていることがあります。
・曲がり角付近
・トンネル
・急こうばいの下り坂
・上り坂の上場付近
・路側帯
・指定の場所から30m以内の場所
なお、よく間違いが起こるのが「路肩」と「路側帯」の違いです。
外側に歩道がある「路肩」であればすり抜けは可能ですが、外側に歩道がない「路側帯」には、バイクを含む車両の侵入が禁止されています。
また、「指定の場所から30m以内の場所」とは具体的に、下記があげられます。
・踏切
・交差点
・横断歩道
・自転車横断帯
上記を違反してバイクが自動車を追い越しをした場合、バイク側の過失が100%あるいは重くなる傾向があります。
3-4 渋滞中や赤信号での割り込み
バイクを含む車両は、前方車両が徐行や停止をしている場合には、続いて徐行や停止をしなくてはいけないと定められています。
つまり、渋滞中で車が停車しているとき、その間をすり抜けて前に出る行為は禁止です。
さらに、信号待ちをしている車の前に割り込む場合、停止線を超えると「信号無視」の扱いとなり、罰則対象となります。
車間の狭い場所へ無理に侵入しよとする「割り込み」行為は、原則として禁止されているものと考えましょう。
4 バイクのすり抜けによる過失割合をケースごとに紹介
バイクのすり抜けによる自動車との接触事故と言っても、さまざまなケースがあります。
代表的な例を、それぞれの過失割合とあわせてご紹介します。
①停止中の自動車の横をバイクがすり抜け接触
②左折車両とバイクのすり抜け接触
③バイクのすり抜け時に車の扉が開き接触
④対向車線からバイクがすり抜け右折車両と接触
ケースごとの過失割合やポイントを、詳しくお伝えします。
4-1 停止中の自動車の横をバイクがすり抜け接触
停止している自動車の横をバイクがすり抜けたことで、接触事故が起きるケースです。
この場合、自動車側に過失が認められない場合には、「自動車:バイク」の過失は「0:10」となります。
ただし、自動車がいちじるしく通行の邪魔をしていた場合などには、自動車側にも過失が認められることがあります。
4-2 左折車両とバイクのすり抜け接触
自動車の左側をすり抜けようとしていたバイクが、左折する自動車と接触する事故です。
バイクが巻き込まれる事故では、「自動車:バイク」の過失割合が「8:2」となる傾向があります。
自動車は運転時、周りに注意をしなくてはいけないという義務があります。
自動車の左折によりバイクを巻き込んでしまう事故では、自動車の不注意が指摘されやすく、バイクよりも過失割合が大きくなることが多いです。
4-3 バイクのすり抜け時に車の扉が開き接触
路上で自動車の扉を開けた瞬間や、開けていたときにバイクがすり抜けを試みてぶつかった場合の事故は、車側の不注意であるとされることが多いです。
基本的には、「車:バイク」の過失割合が「9:1」となります。
車が停止中のすり抜け事故の場合にはバイクの過失が10となる一方で、車が停止していても扉を開けていた場合には、過失割合がほとんど逆転するので注意。
なお、下記のような点は車の過失割合が大きくなります。
・夜間:+5点
・直前にドアを開けた:+5点
・合図がなかった:+10点
一方で、バイク側に過失割合が大きくなるのは、下記のようなケースです。
・ドアが開くと予想できた:+5点
・15km以上のスピード違反:+5点
・30km以上のスピード違反:+10点
・著しい前方不注意:+10〜20点
前方不注意に関しては、どのような事故の場合にも加味される要素です。
4-4 対向車線からバイクがすり抜け右折車両と接触
自動車が右折しているときに、対向車線からバイクがすり抜け飛び出てきたケースでの衝突事故です。
原則的な過失割合は「自動車:バイク」が「7:3」となります。
ただし、バイクがいちじるしく前方を確認していなかった場合や、徐行していなかった場合など、過失が認められる場合には加点対象です。
5 【まとめ】バイクのすり抜けの交通事故は基本の過失割合がない
バイクのすり抜けで交通事故が起きた場合、基本の過失割合はなく、状況に応じて適切な過失割合がわりふられます。
車を運転する以上、常に周りに注意をして動くことは義務付けられていますが、バイク側の違反で事故が発生することもあるものです。
バイクのすり抜けにより事故が発生した場合には、車側に過失がないと判断される可能性もありえます。
焦らずまずは車や負傷者を安全な場所に避難させ、警察や救急車へ連絡し、冷静に対応しましょう。
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交通事故の被害者救済のために、積極的に法律・裁判情報の発信を行っています。