【交通事故】慰謝料請求に重要な入通院日数の数え方と計算方法を弁護士が解説!
監修者ベストロイヤーズ法律事務所
弁護士 大隅愛友
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慰謝料の増額、後遺障害認定のサポートを中心に、死亡事故から後遺障害、休業損害の請求に取り組んでいます。
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交通事故の被害者になった際、相手に慰謝料を請求できますが、そこで重要になるのが入通院日数や入通院期間です。
慰謝料の計算には入通院日数・期間に加えて、算出基準も重要です。算出基準には、自賠責基準と保険会社基準、裁判基準のいずれかが用いられますが、それぞれ算出される金額に差がでます。
本記事では、交通事故後の入通院日数の重要性や数え方、3つの基準での慰謝料計算などについて解説していきます。
1 入通院日数と入通院期間が重要な理由
交通事故後にどれくらいの頻度で、どれくらいの期間病院へ足を運んだのかは、後の慰謝料請求に影響します。入院した場合も同様にその日数が重要です。
慰謝料の種類ごとに入通院日数・期間が重要な理由を解説します。
1-1 入通院慰謝請求
交通事故後に受け取れる慰謝料に「入通院慰謝料」があります。
傷害慰謝料ともいわれますが、交通事故で負ったケガが完治するまでの間に受けた精神的苦痛に対する慰謝料です。
ケガの痛みを抱えて日常生活を送ることや、週に何度も時間をつくって通院をしなければならないのは精神的苦痛といえます。入通院慰謝料は基本的に入通院期間および入通院日数から計算されるため、適正額の慰謝料か判断するには、通院日数や通院期間について理解しておくことが大切です。
入通院慰謝料は、入院または通院がたとえ1日であったとしても請求できます。
1-2 後遺障害慰謝料請求
後遺障害は症状が完治せず、手のしびれや痛みなどの症状が残ってしまうことで、症状によって1級〜14級の等級が設けられています。
後遺障害と認定されると、入通院慰謝料に加えて後遺障害慰謝料の請求が可能です。
【関連記事】後遺障害が認定されたらどうなる?認定や示談の流れ、弁護士に依頼するメリットについて
後遺障害慰謝料は最も等級の低い14級でも、認定されれば相場110万円の慰謝料請求ができます(裁判基準適用時)。
後遺障害認定を受ける際、指標の一つとなるのが入通院日数・期間です。目安となる通院期間については、入通院日数60日以上、入通院期間6か月以上といわれています。
【関連記事】高次脳機能障害は弁護士で変わります|交通事故の後遺障害の等級認定から交渉までお任せ
2 入通院日数・期間の数え方
入通院日数は実際に通院または入院に要した日数をカウントしていきます。
事故当日の受診から数えられます。治療や検査をしてもらった日はもちろん、薬や湿布の処方だけでも日数に含めることが可能です。治療目的の場合であれば、リハビリの日も含められます。ただし、下記2つは注意が必要です。
・同日に2か所以上の病院に行ったとしても、1日としてカウントされる
・症状固定(これ以上症状の改善が見込めない状態)後のリハビリは通院日数に含めない
入通院期間は、治療を開始した日から完治または症状固定と判断されるまでのすべての日数です。たとえば、4月2日に通院をはじめ、週2回通院し、6月30日に症状固定と診断された場合の通院期間は3か月(90日)です。
3 入通院日数に応じた交通事故慰謝料の計算方法
入通院慰謝料の算出には、入通院日数・入通院期間の他にどの基準をもとに算出するかが重要になります。基準は下記の3つがあります。
①自賠責基準
②保険会社基準
③裁判基準(弁護士基準)
それぞれの基準について算出方法を解説します。
3-1 自賠責基準
自賠責基準では4,300円に「通院期間」か「通院日数の2倍」いずれか少ない方を掛けて計算します(令和2年に自賠責保険の支払基準の改定により、日額4,200円から4,300円に引き上げられました。)。たとえば、半年間(180日)通院して通算40日通院した場合の慰謝料計算は下記のようになります。
日額4,300円×(40日×2)=344,000円
95回通院した場合は、「通院日数の2倍」=190が半年間の180日を超えるので、下記のような計算式になります。
日額4,300円×180=774,000円
自賠責基準は、治療費や交通費、慰謝料など支払える金額の上限が120万円に設定されています。そのため、たとえば120万円の枠が治療費で50万円使われていたとしたら、どれだけ通院したとしても慰謝料は70万円以下になってしまいます。
3-2 保険会社基準
事故の相手が任意保険に加入している場合に多いのが、保険会社の基準で計算された慰謝料です。保険会社が独自に設定している基準のため、各保険会社によって差があります。額については自賠責基準よりは少し高くなりますが、後述する裁判基準のおおむね6割〜7割程度になることが多いです。
3-3 裁判基準(弁護士基準)
弁護士が慰謝料請求をする際は、最も高額で裁判でも用いられる裁判基準を採用するのが一般的です(弁護士基準とも呼ばれています)。
裁判基準での計算方法はケガの症状と治療期間で算出されます。
具体的には、日弁連交通事故センター東京支部が発行する通称「赤い本」に掲載される入通院慰謝料の算定表を用いて計算を行います。入通院慰謝料の算定表には「重症用」(別表Ⅰ)と「軽症用」(別表Ⅱ)の2種類があり、入院期間と通院期間で慰謝料を考えていくケースが多いです。
別表Ⅰは骨折や脱臼などの場合に採用。
別表Ⅱはむち打ちや軽い打撲、腰椎捻挫などの場合に採用。
たとえば、交通事故で骨折をしたケースで、治療は通院のみで通院期間は6か月であった場合に請求する慰謝料は116万円です。もし、6か月のなかで最初の1か月は入院をしていた場合は、入院1か月と通院5か月が交わる点、つまり141万円を慰謝料として請求します。
例外:通院日数3.5倍で計算される弁護士基準
通院期間が長期で通院日数が少ない場合、通院期間から算出するのではなく、通院日数に3.5倍したものを慰謝料算定期間とするケースがあります。
長期の経過観察が必要となる骨折などではこのルールが適用されることもあります。たとえば、通院期間は6か月で通院日数が15日であった場合、15日×3.5=52.5日(=1.75か月)となり、このルールを適用した裁判基準の慰謝料は46万円です(計算式=28万円+((52万円ー28万円)×0.75)=46万円)。
通院日数3.5倍で計算した場合は、通常の裁判基準での算出額より大きく減額されてしまいます。保険会社も場合によっては3.5倍での計算を主張してくるかもしれません。
しかし、通院日数3.5倍のルールは絶対的なものでなく、ケガの状態や治療内容も考慮されて適用されるかが決まります。3.5倍という値もあくまで目安にすぎません。通院日数3.5倍で計算するかどうかはケースバイケースです。
4 弁護士に依頼するメリット
4-1 保険会社とのやりとりや交渉を任せられる
交通事故被害者になった際に適正額の慰謝料を受け取るためには、保険会社と様々なやりとりや交渉を行う必要があります。
弁護士に依頼すれば、これらのやり取り・交渉を任せることが出来ます。
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【関連記事】追突事故を弁護士へ依頼する3つのメリット|適正な慰謝料増額のために
4-2 裁判基準での請求が可能
弁護士に依頼をすることで、裁判基準での慰謝料請求が可能です。
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また、後遺障害認定などについても相談にのってもらえるので、思った額以上の慰謝料を請求できるかもしれません。
【関連記事】後遺障害診断書のもらい方~手続きや取得のポイント
もし民事裁判で争うことになった場合、ほとんどのケースで相手も弁護士をたててくるため、こちらも弁護士を代理人にたてないと不利になります。保険会社と交渉をする際には弁護士にも相談をしておくことで安心して、交渉から慰謝料請求までをすすめられます。
【関連記事】交通事故の裁判でかかる費用と費用倒れにならないための判断方法
4-3 慰謝料の増額・加算
飲酒運転事故の場合等の特別な事情がある場合には、弁護士へ依頼することで、例外的に慰謝料の増額が可能となる場合があります。
もらい事故等のよくある事故についても、例外的な事情があれば、慰謝料の加算の可能性があります。
【関連記事】飲酒運転の交通事故の示談金の相場|慰謝料の金額を増額できます
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5 まとめ
交通事故後に適正額の慰謝料を請求するには入通院日数・期間が非常に重要となります。
症状の有無にかかわらず、通院の頻度については医師と相談して自己判断でやめてしまわないようにしましょう。
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同様に重要となるのが、慰謝料額の算出基準です。自賠責基準や保険会社基準での慰謝料は適正額よりも低い場合が多く、受け取ってしまうと損をしてしまうかもしれません。慰謝料請求の際は、裁判基準で慰謝料請求を行うことが大切です。
弁護士に依頼を行うことで、裁判基準での慰謝料請求はもちろん、後遺障害認定などについてもアドバイスやサポートをしてもらえ、安心して適正額の慰謝料請求ができますよ。
慰謝料の増額、後遺障害認定のサポートを中心に、死亡事故から後遺障害、休業損害の請求に取り組んでいます。
交通事故の被害者救済のために、積極的に法律・裁判情報の発信を行っています。
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