遺言執行者を弁護士にするメリットは?役割や選任の方法について弁護士が解説
監修者ベストロイヤーズ法律事務所
弁護士 大隅愛友
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亡くなった人の意志が適切に継承され、遺産が円滑に相続人に引き渡されるためには、遺言執行者が重要な役割を果たします。
しかし、相続手続きは一般的に煩雑で、法律的な知識を必要とするだけでなく、亡くなった方や相続人同士の感情的なつながりが絡むため、精神的な負担も大きいものです。
このような手続きを円滑に進めるためには、弁護士の支援が必要な場合も少なくありません。
遺言執行者を任命することで、そのようなサポートを得ることが可能となります。
本記事では、相続問題に詳しい弁護士が、遺言執行者について、その役割と選任の方法、そして遺言執行者として弁護士を選任するメリットに焦点を当てて詳しく解説します。
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1 遺言執行者について
1-1 遺言執行とは
遺言執行とは、遺言者の死亡により効力が生じる遺言の内容を実現する行為を指します。
遺言とは、遺言者が自身の死後にどのように財産を分けるか、または特定の人物に何を遺贈するかといった意志を、法的に効力を持つ形で記録したものです。
遺言者が亡くなると、その遺言には法的な効力が生じます。これにより、遺言に記載された内容に基づき、相続人や遺贈人は相続財産を受け継ぐこととなります。
しかし、遺言者はすでに亡くなっているため、自ら遺言を実行することはできません。
ここで重要となるのが遺言執行者です。遺言執行者は遺言者に代わり、遺言の内容を適切に実現するための行動をとります。
1-2 遺言執行者とは
遺言執行者とは、遺言者が死亡した後、その遺言の内容を実現するために行動する人のことを指します。
遺言執行者は、多くの場合、遺言者が遺言書において指名する形で選任されます。
遺言者が遺言執行者を選任することにより、遺言者自身が信頼する人物が遺言の内容を実行することになります。
遺言執行者は遺言者の意志を実現し、相続人や遺贈人に対する責任を果たすために重要な役割を担っています。
1-3 遺言執行者の役割・義務
遺言執行者には、さまざまな権限と義務が課せられています。
民法において、遺言執行者には遺言の内容を実現するために、必要な一切の行為をする権限が認められています。
具体的には、相続人調査、相続財産調査、預貯金の払い戻しや分配、株式や自動車の名義変更、不動産の登記申請手続き、子どもの認知、相続人の廃除とその取り消しなど、幅広い権限が認められています。
また、遺言の内容を相続人に通知する義務や相続財産の目録を作成する義務など、さまざまな法的義務が課せられています。
遺言執行者は、独立した立場にあり、相続人の意見や要望に影響されることなく、遺言者の遺志に基づいて遺言の内容を実現することが求められます。
2 遺言執行者の選任について
2-1 遺言執行者を選任するメリット
遺言執行者は必ず選任しなければならないものではありませんが、多くのメリットがあります。
遺言執行者は遺言者の遺志を実現するために、さまざまな行為を行う権限が与えられています。
相続人調査や相続財産調査、遺産分配の手続き、必要な場合には不動産の登記申請手続きなどが含まれます。
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そのようなことから、遺言執行者を選任することで、相続人が遺産分配の手続きを行う手間が省けるというメリットがあります。
相続人が多忙で手続きが行えない場合や、手続きの方法がわからない場合などは、遺言執行者 が手続きを行うことで問題を解決できます。
特に、相続人の廃除や子供の認知など、一部の行為は遺言執行者しか行うことができません。このような場合、遺言執行者を選任することは必須となります。
以上のように、遺言執行者を選任することは遺言の内容をスムーズに実現するための重要な手段となります。
2-2 遺言執行者を選任すべきケース
遺言執行者を選任することは、遺言者の意志が実現するための重要な手続きとなり、具体的に選任すべきケースが存在します。
相続人が多忙で手続きが行えない場合や、遠方に居住していて手続きが難しい場合には、遺言執行者を選任すれば、遺言の執行ができますので手間が軽減されます。
相続人による法的な手続きが難しい場合や、自身で遺産分配などを行うことが難しい相続人がいる場合、相続人間での意見が合わずに遺言が適切に実行できない場合などにおいても、遺言執行者によって遺言の内容を実現することが可能です。
さらに、遺言書によって子どもの認知を行う場合、遺言執行者しか認知の届け出を行うことができません。
このようなケースにおいては、遺言執行者を選任しなければなりません。
また、遺言によって相続廃除する必要がある場合、あるいは生前に相続人廃除を行い、遺言でそれを取り消したい場合も、遺言執行者を選任する必要があります。
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2-3 遺言執行者は誰を選任すればいい?
遺言執行者の選任は、遺言者が意志を反映させるためにとても重要です。その選任に当たっては以下のような点を考慮する必要があります。
遺言執行者は、未成年者や破産者といった一定の条件を満たさない人物は除かれますが、誰でもなることが可能です。
また、相続人の中から選任することも可能です。
ただし、相続人が遺言執行者となる場合には、相続人間での意見の対立や反発が起きるリスクが存在します。
そのため、遺産の分割や管理などの複雑な手続きが伴う場合、相続人間の紛争を避けるためにも、第三者を遺言執行者に選任することが推奨されます。
弁護士などの専門家を遺言執行者に指名することで、遺産分割など遺言の執行に伴う複雑な手続きをスムーズに進めることができます。
また、弁護士は中立的な立場であるため、相続人間の紛争を防ぐことも可能です。
3 遺言執行者を選任する方法
3-1 遺言執行者を選任する方法
遺言執行者を選任する方法は3つ存在します。
① 遺言書において、遺言執行者を指定する
遺言者が遺言執行者として特定の人物を指定し、その名前や住所を記載しておくことで選任することができます。
遺言執行者になることについての事前の同意は必要ありませんが、事前に承諾を得ておけば、遺言者の死後、スムーズに遺言の執行が行えます。
②遺言執行者を決めてくれる第三者を指名する
遺言者が直接遺言執行者を指名する代わりに、遺言執行者を選任する第三者を指名することも可能です。この場合、遺言者が指名した第三者が適切な遺言執行者を選任します。
③家庭裁判所に請求し遺言執行者を選任する
遺言執行者が遺言書に指定されていない、または指定された遺言執行者が死亡した場合には、相続の利害関係人が家庭裁判所に請求して遺言執行者を選任することが可能です。
3-2 遺言執行者を選任するために必要な書類
遺言による遺言執行者が指定されていない場合や、指定された遺言執行者が亡くなったときには、家庭裁判所に申し立てをして遺言執行者を選任することができます。
この申し立てをすることができるのは相続人をはじめ、遺言者の債権者や遺贈を受けた者などの利害関係人です。申し立ては遺言者の最後の住所地の家庭裁判所に行います。
必要な書類は以下の通りです。
1.申立書
2.申立添付書類
・遺言者の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本(全部事項証明書)
・遺言執行者候補者の住民票または戸籍附票
・遺言書写しまたは遺言書の検認調書謄本の写し
・利害関係を証する資料(戸籍謄本など)
3-2 遺言執行者を選任するために必要な費用
遺言執行者を選任するためには、家庭裁判所への申し立ての際に、収入印紙代および郵便切手代が必要になります。
①収入印紙800円分(執行の対象となる遺言書1通につき)
②郵便切手代(相続人への連絡用)
4 遺言執行者を弁護士にするメリット
4-1 相続手続きがスムーズに
相続手続きは、遺産の分割や配分はもちろんのこと、多岐にわたる業務が必要となり、法律の知識や専門的なスキルを必要とします。
特に、遺産が複雑であることや、相続人で意見が分かれる場合などは、手続きが複雑化し、多大な時間と労力を必要とすることが多いです。
このような状況において、弁護士を遺言執行者に選任しておけば、さまざまなメリットが得られます。
弁護士は、相続手続きに必要な法律知識を有しており、多岐にわたる手続きを適切にスムーズに進めることができます。
また、紛争が発生した場合でも中立的な立場から解決策を提案し、円滑に手続きを進めることができます。
さらに、遺産分割の複雑な手続きやトラブルの解決など、多大な労力と手間を伴う作業を任せておくことができます。
4-2 精神的な負担が軽減される
遺言執行者を選任する際に、相続人が選任されると、不信感や不満が他の相続人から生じることがあります。
特に、遺産の分割方法や手続きの進め方などについて相続人間で意見が一致しない場合、相続人間の対立やトラブルが発生する可能性が高まります。
遺言執行者は、遺産の分割や管理、税金の手続きなど、多くの業務を担当します。
これらの業務は専門的な知識や経験を要するため、専門的な知識を持たない人が遺言執行者になると、膨大な時間や労力が必要となり、大きな精神的負担となることが予想されます。
この問題を解消するためには、第三者の中立的な立場から遺言の執行を行う弁護士を遺言執行者に選任することが効果的です。
弁護士は法律に関する専門知識を持っており、遺言執行者としての業務を効率的に遂行することが可能です。また、相続人間のトラブルも最小限に抑えることが可能となります。
4-3 生じている相続の問題を解決できる
すでに相続において問題が生じている場合、弁護士を遺言執行者に選任することで、適切に解決することが可能となります。
相続問題は、遺産の分配方法をはじめ、特定の相続人とコミュニケーションを取ることが困難になることなど、さまざまな要因によって生じます。
これらの問題は、感情的な対立を含むことも多いため、相続人が遺言執行者となった場合、問題の解決が難しく、遺言の執行が遅れる可能性があります。
しかし、弁護士を遺言執行者に選任しておけば、法律の専門家であるため、適切な解決策を提供することができます。
4-4 遺言書作成から依頼できる
弁護士は遺言執行者として選任できるだけではなく、遺言書の作成段階から関わることが可能です。
遺言書の作成に関するアドバイスや、遺言の内容が法的に適切であるかどうかの確認、さらには遺言の文言や表現のアドバイスなど、弁護士の専門知識が遺言書作成の全ての過程で発揮されます。
また、弁護士は過去の相続問題や遺言執行の経験から、遺言書作成に当たっての問題や考慮すべき点を指摘することもできます。
これにより、遺言者は自分の意志を正確に反映し、相続問題を未然に防ぐ遺言書を作成することが可能になります。
遺言書の作成から依頼している弁護士が遺言執行者である場合、すべての遺産を把握し、遺言者の意志を深く理解しているため、遺言の執行がスムーズに進めることができます。
そのため、遺言者は安心して遺言書の作成とその後の遺言執行を任せることができます。
これは遺言者だけでなく、相続人にとっても負担を軽減することにもつながります。
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5 まとめ
遺言執行者は、遺言者が遺言書に記された意志を実行する重要な役割を果たします。
ただし、相続人の中から選任することによって、相続トラブルの引き金となる可能性があるため、相続の専門家である弁護士を選任することがおすすめです。
遺言の執行をスムーズに行うことができるだけでなく、相続人間のトラブルを防ぐことや、遺言執行に伴う精神的な負担の軽減が挙げられます。
また、相続問題が既に発生している場合でも、弁護士ならば法的手段を用いて問題を解決し、遺言の執行を実現することが可能です。
以上の理由から、遺言執行者に弁護士を選任することは、遺言の適切な実行と相続の円滑な進行を実現する上で効果的な方法であると言えるでしょう。
現在、遺言は千葉県内に限定して受付をしています
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