遺言書は家庭裁判所で検認が必要!正しい開封のしかたと手順について
監修者ベストロイヤーズ法律事務所
弁護士 大隅愛友
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遺品を整理している途中に、故人が自筆で書いた遺言書を見つけるケースは珍しくありません。
ただし、すぐに開けて中身を確認しないようにしてください。開封するには、適切な手順が必要になるためで、法的な問題を引き起こす可能性もあります。
遺言者の意思を尊重し、適切に遺産を相続するためにも、「遺言書の検認」や「開封の手順」を理解し、正しい手続きを行うことが求められます。
本記事では、相続問題に詳しい弁護士が、遺言書の開封に至る手続き、「検認」と「開封」の方法に焦点を当て、そのポイントと注意点を詳しく解説します。
1 遺言書の開封のしかた~家庭裁判所で検認が必要
1-1 遺言書は相続人の立ち会いのもとで開封を
遺言書は家庭裁判所で、相続人が立ち会いのもとで開封しなければなりません。
生前の意思を綴った遺言書の取り扱いには法律上のルールが設けられており、特に開封に関しては厳密に定められているのです。
これは遺言者の意思が正確に反映され、正しく遺産分割が行われるためです。
そのため、「遺言書を見つけたから」「生前から預かっていたから」という理由で、遺言書を勝手に開けてしまわないようにしなければなりません。
遺言書の開封は、その手続きが法律で規定されているだけでなく、適切に行わなければペナルティ(過料)が課せられる可能性があるからです。
ただし、すべての遺言書が家庭裁判所での開封手続きを必要とするわけではなく、法律により、開封手続きが必要となる遺言書の種類が明確に定められています。
1-2 遺言書は家庭裁判所で検認してから開封する
遺言書の扱いには、法律で定められたルールが存在し、家庭裁判所で『検認』の手続きを経てから開封されることになっています。
「検認」とは、遺言書が本人によるものか、遺言書がすり替えられていないか、勝手に書き換えられていないかなど、その信憑性を確認する作業のことを指します。
注意点としては、検認手続きは遺言書の有効性を判断する手続きではないということです。遺言書の有効性を争う場合には、検認とは別の手続きが必要となります。
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遺言書の開封は、この検認を経てから行われます。家庭裁判所において検認を経た遺言書は、相続人全員の立ち会いのもとで行われます。
家庭裁判所に検認の申し立てが行われると、家庭裁判所から相続人全員に通知がなされ、立ち会いが求められることになります。
1-3 検認が必要となる遺言書、必要のない遺言書
遺言書には、「自筆証書遺言」、「秘密証書遺言」、「公正証書遺言」の3種類があります。
これらの種類によって、遺言書の開封前の検認手続きの必要性は異なります。
①自筆証書遺言とは
自筆証書遺言は、遺言者が自筆で書いて、自分で保管している遺言書のことを指します。
この遺言書の記載内容には法律で定められたルールがありますが、そのルールに従って記載されていないものも多く、また、偽造や改ざんされるリスクも存在します。
そのため、自筆証書遺言は家庭裁判所の検認が必要とされています。
ただし、遺言者が自筆証書遺言保管制度を利用していれば、家庭裁判所での検認は不要となっています。
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自筆証書遺言保管制度とは、自筆証書遺言を法務局によって画像データ化し、安全に保管する制度のことを指しています。
②秘密証書遺言とは
次に、秘密証書遺言は、公証役場で作成し、公証人が遺言書の存在を証明するもので、遺言者本人が保管する遺言書のことを指しています。
この遺言書は、遺言書の存在は証明できるものの、法的なルールを完全に守って作成されていないものも多く見受けられます。
偽造や改ざんのリスクは低いですが、内容が正確に記載されているかの確認のため、家庭裁判所での検認が必要となります。
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③公正証書遺言とは
最後に、公正証書遺言ですが、これは公証人が立ち会いのもとで作成された遺言書のことを指し、原本は公証人が保管します。
この形式の遺言書は公証人の指導のもとで作成されるため、遺言書の内容に間違いはなく、偽造や改ざんのリスクもありません。
そのため、公正証書遺言は家庭裁判所での検認は不要とされています。
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2 遺言書を検認せずに勝手に開封した場合
2-1 遺言書を勝手に開封したら罪になる?
結論から申し上げますと、罪にはなりませんが、ペナルティはあります。
遺言書の開封は、上記でお伝えした通り、家庭裁判所において相続人が立ち会いのもとで行われる必要があると法律によって定められています。
この手続きを経ないで遺言書を開封した場合、民法では5万円以下の過料に処される可能性があります。
なお、遺言書の検認が必要であると認識していたにもかかわらず開封した、あるいは検認が必要であることを知らずに開封した場合でも、ペナルティに問われる可能性があります。
つまり、動機が故意であるかどうかは関係なく、過料の対象となる可能性があるので注意が必要です。
2-2 勝手に開封した遺言書は無効になる?
"検認が必要な遺言書を勝手に開封した場合、その遺言書は無効になるのではないか"と、疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
結論を申し上げますと、検認が必要な遺言書を知らずに開封したとしても、その遺言書が無効になることはありません。
また、遺言書を検認なしに開封したからといって、相続人が、その資格を失うこともありません。
ただし、故意に偽造や改ざん、隠蔽などの行為をした場合には、相続人の権利を失うことになりますので注意が必要です。
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さらに、遺言書を勝手に開封してしまったからといって、そのまま検認手続きを省略して良い訳でもありません。
遺言書を開封した場合においても、開封前と同様に、開封後も必ず検認を行う必要があります。
検認を受けなければ、相続手続きを正式に進めることができなくなります。
そのため、遺言書を開封してしまった場合でも、必ず適切な手続きを踏んで検認をすすめる必要があります。
遺言者の意志を尊重し、自身の法的な権利を守るためにも、検認手続きは欠かせない取り組みであると、理解しておかねばなりません。
3 遺言書の検認手続きの手順
(画像は家庭裁判所HPから)
3-1 検認の申し立てに必要となる書類と費用
遺言書の検認手続きを進める際には、必要な書類の準備と手続きにかかる費用の支払いが求められます。
具体的に必要となる書類については以下の通りです。
①遺言書の検認の申立書(裁判所ホームページでダウンロード可能)
②遺言者のすべての戸籍謄本(除籍謄本・原戸籍)
③相続人全員の戸籍謄本
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④遺言者の子が死亡している場合、その子のすべての戸籍謄本(除籍謄本・原戸籍)
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⑤死亡している相続人がいる場合、その人のすべての戸籍謄本(除籍謄本・原戸籍)
⑥その他裁判所が必要と認める追加書類
また、手続きには費用がかかります。
検認の申し立ての費用は、収入印紙代として800円が必要になります。
収入印紙は、検認の申立書に貼付します。
さらに、家庭裁判所から相続人への連絡には郵便切手が必要になります。
相続人の人数によって費用は異なりますが、その費用も準備しておかねばなりません。
3-2 家庭裁判所で検認を申し立てる
遺言書の検認申し立ては、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。
申し立てに際しては、前述した必要な書類(検認の申立書、遺言書、遺言者と相続人全員の戸籍謄本、当事者目録など)を家庭裁判所に提出します。
検認の申し立てによって家庭裁判所はこれらの書類を受理します。
後日、裁判所から相続人全員に対して検認期日の通知が送られます。
3-3 遺言書の検認期日の通知
検認の申し立てが家庭裁判所に受理された後、遺言書の検認期日があらかじめ相続人全員に通知されることになります。
検認期日とは、検認を行う日程のことを指しています。
遺言書の検認手続きを申し立てた段階では、その遺言書がすぐに検認・開封されるわけではありません。
申し立て後、検認期日が通知されたら、検認期日に相続人全員が家庭裁判所に出席し、遺言書が実際に検認され、開封されることになります。
3-4 検認の実施、相続人の立ち会いのもとで開封
遺言書の検認は、家庭裁判所によって設定された指定された期日に、相続人全員が出席して行われます。
この段階で、持参した遺言書が正式に開封され、その内容が確認されることになります。
相続人全員が立ち会うことによって、遺言書の状態(形状や筆跡、署名、日付、加除訂正など)とその内容について、公正に確認することができます。
検認が完了すると、その結果を記した「検認調書」が作成されます。
検認完了後、遺言書は通常、申し立てた人に返却されます。その後、「検認済証明書」の発行を申請することができます。
この証明書は、遺言書が正式に検認されたことを証明する公的な文書であり、相続手続きを進めるために必要となります。
なお、検認手続きは、遺言書の内容が家庭裁判所によって認められるというものではなく、遺言書の開封とその内容の公正な確認が目的となるのです。
4 遺言書の検認・開封の注意点
4-1 封印されていない遺言書の対応
遺言書が封印されていない場合や、封筒に入っていない場合、あるいはメモの状態で見つかった場合でも、その遺言書の検認は必要となります。
遺言書は、遺言者自身が作成し、封印して保管することが多いですが、必ずしもそのような形式を取られていないケースも多く存在します。
しかし、遺言書が作成され、遺言者の真の意志を反映していることを確認するためには、その検認が必要となるのです。
検認手続きは、遺言書が作成されたことを証明することができ、偽造や改ざんを防ぐためのものです。
そのため、遺言書の形式に関わらず、遺言者の意志を確認し、遺言の内容を公正に実行するためには、遺言書の検認手続きを行うことが重要となります。
4-2 複数の遺言書が見つかった場合
遺言者が複数の遺言書を作成していた場合、最新の日付がつけられた遺言書が有効であるとされています。
ただし、遺言書が重複していない内容については、それぞれの遺言書に記載されている内容が有効となる可能性があります。
そのため、多数の遺言書が見つかり、それぞれの内容が不明確であることや、解釈が難しい場合、遺言書の検認の際にはすべての遺言書を持参するようにします。
その上で、家庭裁判所で遺言書ごとの有効性や、遺言書間の関係性などを判断してもらうと良いでしょう。
4-3 検認に相続人が立ち会えない場合
家庭裁判所から検認期日の通知を受け取った相続人は、その日に裁判所に出席し、遺言書の検認や開封に立ち会うことが求められます。
ただし、出席は法的な義務ではありません。もし相続人が検認期日に立ち会えない場合でも、特別な問題は生じません。
出席は相続人の自由であり、相続人が全員揃わなくても遺言書の検認は行われます。欠席する場合に、裁判所へ事前に連絡する必要もありません。
出席できなかった相続人は、検認調書を後から確認したい場合、家庭裁判所に申請を行えば閲覧することも可能です。
ただし、検認の申立人については、遺言書などを持参し、裁判所に提出する必要があるため、検認期日の出席が義務付けられています。
また、相続人は検認期日に出席しなくても、後から遺言書の内容について無効を主張することや、争うことは可能です。
検認手続きはあくまで遺言書の状態を確認するためのものであり、その内容の有効性を決定するものではないためです。
さらに、検認手続きは弁護士に依頼して代行させることも可能です。
特に相続に関する争いが既に生じている場合や、問題の速やかな解決が必要である場合には、検認やその後の相続手続き全般を弁護士に依頼することがおすすめです。
弁護士に依頼することで、手続きの負担を軽減し、適切な法的対応をとることが可能になります。
4-4 検認の申し立てを忘れた場合
遺言書の検認手続きを行わないと、その後の遺産相続手続きでさまざまな問題が生じる可能性があります
まず、法的なリスクです。
検認を経ないで遺言を執行することや、遺言書を勝手に開封した場合、違法行為となり、5万円以下の過料が課される可能性があります。
次に、遺産相続手続きに関するリスクがあります。
遺産相続手続きには、遺言書の「検認済証明書」の提出が求められます。
被相続人の金融機関での預金や証券などの名義変更や解約、不動産登記の所有権移転などの手続きで必要となります。
そのため、検認をしていないと、これらの手続きが進められなくなる可能性があります。
さらに、遺言書に偽造や改ざんが疑われるリスクもあります。
遺言書を勝手に開封した場合、遺言書自体は無効になることはありませんが、他の相続人から遺言書が偽造や改ざんされたと疑われる可能性があります。
その結果、無効を訴えられて法的なトラブルに発展してしまう可能性があります。
以上のように、遺言書の検認を忘れた場合にはさまざまなリスクが伴います。
遺言書を見つけたら、必ず検認手続きを行い、法的な問題を避け、遺産相続手続きをスムーズに進めるようにしましょう。
5 まとめ
本記事では、遺言書の検認手続きについて、遺言書を正しく開封する具体的な方法やさまざまな注意点を踏まえ、詳しく解説しました。
遺言書の検認は、家庭裁判所において適切に開封して内容を確認し、遺産相続手続きを円滑に進めるために欠かすことのできない手続きです。法的な問題を避け、遺産相続をスムーズに進めることが可能になります。
ただ、封のない遺言書や複数の遺言書が見つかることや、すでに相続問題でトラブルが生じているようなケースなどについては、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
使途不明金や不動産の評価等の専門的な遺産調査や、交渉・裁判に力を入れて取り組んでいます。
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