交通事故で保険会社から同意書が届いたけど...注意点を踏まえて弁護士が解説
監修者ベストロイヤーズ法律事務所
弁護士 大隅愛友
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交通事故に遭遇し治療に取り組んでいる中で、保険会社から届くさまざまな書類の中で、同意書に署名を求められることがあります。
これは、保険会社が複雑な事故の処理を進めるために、必要な手続きを行うためのもので、被害者にとっては手間を省くことに繋がります。
しかし、同意書に署名する場合には、十分にその書類の内容を理解し、送付してからも適切に対応することが求められるのです。
本記事では、交通事故問題に特化した弁護士の視点から、保険会社から送られてくる同意書について、同意書の内容や種類、同意する際の注意点などを詳しく解説します。
1 交通事故で保険会社から届く同意書とは?
1-1 保険会社から届く同意書とは?その目的と重要性
交通事故後の手続きは非常に複雑かつ大事なものであり、その中でも特に重要なのが保険会社から送られてくる「同意書」です。
同意書に署名することによって、治療費の支払いや後遺障害等級の申請手続き、その他保険に対するもろもろの対応を、保険会社に任せて必要な手続きを行うことができるようになります。
しかし、同意書は、事故の処理を保険会社にすべて任せるという大きな決定をすることになるため、同意する内容には十分注意が必要です。
同意書の内容によっては、自身にとって不利益に繋がることもありますから、弁護士に相談することがおすすめできる場合もあります。
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1-2 保険会社から届く同意書の種類
保険会社から送られてくる同意書には、『一括対応のための同意書』『個人情報を取得することの同意書』の二種類があります。
①「一括対応」のための同意書
この同意書は、保険会社がすべての手続きを一括で行うためのものです。
治療費の支払いや後遺障害等級の申請手続き、その他保険に対するもろもろの対応を保険会社にすべて任せることができます。
この同意書に署名をすると、一時的な治療費の負担をせずに済み、煩雑な手続きを自身で行う必要もなくなります。
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② 個人情報を取得することの同意書
この同意書は、保険会社があなたの個人情報を取得し、それを事故の処理に利用するためのものです。
この同意書に署名をすると、被害者の診断書や治療の内容、治療の経過、事故の詳細など、事故の処理に必要な個人情報を、第三者である保険会社が取得可能となります。
保険会社は、それらの情報をもとにして、事故の処理を進めることができるのです。
2 同意書の種類とその特徴
2-1 一括対応のための同意書
「一括対応のための同意書」とは、保険会社が提供しているサービスの一つであり、事故の処理を一括で行うために必要となる書類です。
交通事故による治療に取り組んでいる中で、保険会社からさまざまな書類が送付されるようになりますが、その中に含まれる同意書のひとつになります。
保険会社は、署名された同意書を受け取ることによって、被害者に代わって、医療機関への治療費の支払い、自賠責保険会社への請求手続き、後遺障害等級認定の申請手続きなど、事故に関するさまざまな手続きを行うことができます。
被害者にとって同意書に署名するメリットはとても大きいです。
まず、事故に関する複雑な手続きを保険会社に任せることができるため、被害者自身が手続きに時間と労力を割く必要がなくなります。
また、治療費の負担がなくなるため、経済的な負担も軽減されます。
さらに、一括対応の内容に治療費の支払いに関するものがあるからと言って、今後の示談に不利になるということもありません。
治療費の支払いと示談は別の問題であり、一括対応の同意が示談に影響が及ぶことはないのです。
ただし保険会社は、交通事故において被害者側の過失が大きい場合には、被害者に対する一括対応をしない可能性もあります。
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2-2 個人情報取得のための同意書
さらに、保険会社から送られてくる書類の中には、「個人情報取得のための同意書」があります。
これは、保険会社が事故に対する処理をすすめていくために、被害者の個人情報を取得できるようにするためのものです。
個人情報の取得に同意が得られると、保険会社は被害者の医療情報を医療機関から取得し、事故の処理に利用することができます。
被害者の心身の状態や治療の経過、事故の詳細など、事故の処理に必要な情報を保険会社が取得することができます。
保険会社が直接医療機関に治療費を支払うためには、診断書や診療報酬明細書などといった情報が医療機関から開示されなければなりません。
しかし、これらの情報を開示するためには、被害者自身の同意が必要となるのです。
そのため、個人情報取得のための同意書があれば、保険会社は医療機関に対して診断書等の経過書類や明細書などを請求することができるのです。
被害者側で治療費を全額負担したうえで保険会社に支払った金額を請求することも可能ではありますが、それには手間と一時的な費用負担が発生します。
特に交通事故で負傷し、治療とともに手続きを行わねばならないのは、大きな手間となってしまいます。
さらに、交通事故の程度によっては、治療費が高額になってしまうケースが多く、全額負担であるならば支払いが困難になるのではないでしょうか。
そのため、個人情報取得のための同意書に署名することは大きなメリットとなります。
3 同意書に署名する、あるいはしないとどうなる
3-1 同意書に署名する場合
交通事故に遭遇した際、保険会社から送られてくる同意書に署名しても不利益を被るようなことはありません。
医療機関への支払いやさまざまな手続きを、すべて保険会社に任せることができるようになります。
① 一括対応のための同意書に署名する場合
一括対応のための同意書に署名すると、次のような行為を保険会社に任せることができます。
- 医療機関への治療費の支払い
- 自賠責保険会社への請求手続き
- 後遺障害等級認定の申請手続き、など
これらの手続きは、被害者自身が行うと非常に時間と労力がかかるものですが、一括対応のための同意書に署名することによって、被害者自身の負担を大幅に軽減することが可能となります。
② 個人情報取得のための同意書に署名する場合
個人情報取得のための同意書に署名すると、被害者の診断書や診療報酬明細書を保険会社が医療機関に直接確認して、事故処理に利用することができます。
診断書や診療報酬明細書は被害者の個人情報になりますので、保険会社が医療機関から情報を受け取るには、被害者からの同意が必要になります。
この同意によって、被害者自身が診断書や診療報酬明細書を取得し、それを保険会社に提出するという手間が省けます。
また、保険会社が直接医療機関とやり取りを行うことで、被害者自身が医療機関との交渉や調整を行う必要がなくなります。これもまた、被害者自身の負担を軽減することができます。
3-2 同意書に署名しないと
では、同意書に署名しないと、どのような影響があるのでしょうか。
同意書に署名しない場合、病院に対する治療費の支払いをいったん自己負担する必要があります。交通事故の治療費は高額になることが多いため、これは大きな負担となる可能性があります。
また、すべての手続きを自身で行わねばならないという点も大きな負担となります。
自賠責保険会社に対する自賠責負担分の請求や後遺障害等級認定の申請など、治療に取り組みながらこれらの手続きを行うのは、大きな負担となる可能性があります。
ただし、個人情報取得のための同意書が、医師に対する医療照会や治療状況の確認を確認するための同意まで求めている場合には注意が必要です。
この同意によって保険会社は、直接医療機関に問い合わせして被害者の症状などを確認できるようになります。
これは、治療費の支払いを続けるのか、打ち切るのか判断するためのものです。
これらの確認の中で「症状固定」と判断することになれば、一括対応による治療費の支払を打ち切ってしまうことがあります。
もちろん医師によって、それ以上治療を継続しても効果が見込めないと判断されれば、症状固定として治療を終了することになります。
しかし、医師と保険会社の見解が異なる場合も少なくありません。保険会社は、症状固定時期を早め、治療費を早い段階で打ち切りたい、認定等級をできる限り下げたい、と考えるものです。
そのため、個人情報の取得に関する同意の中で『医療照会・医療調査のための同意』まで求めてくるのです。
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4 同意書を送り返す際の注意点
4-1 同意書を求める理由を理解する
同意書に署名して送り返すことは、被害者の手間を省き、事故処理をスムーズに進めるための良い方法であるのは間違いありません。
しかし、その背景には保険会社の思惑が存在することを理解しておかねばなりません。
同意書に署名して送り返すことは、保険会社が被害者に代わって事故の処理を行い、治療費の支払いや後遺障害等級の申請手続きなどを行ってくれるという点において、とても大きなメリットとなります。
ただ、それが必ずしも被害者にとって最善の選択であるとは限らないケースがあります。
保険会社は、被害者の治療状況を把握し、治療費の支払いを打ち切るタイミングをコントロールするために同意を求めるケースがあるからです。
4-2 同意書の内容をよく理解する
特に『個人情報取得のための同意書』に関しては注意が必要です。
中でも、医師に対する医療照会や治療状況の確認を確認するための同意まで求める場合には、
- 症状固定の時期を正確に把握したい
- 後遺障害等級認定の際に被害者の情報を活用したい
と考えているケースが多いと言えるからです。
この同意書に署名すると、保険会社はあなたの医療情報を取得し、それを事故処理に利用することができます。
これによって、保険会社は被害者の治療状況を把握し、治療費の支払いを打ち切るタイミングをコントロールすることができるようになります。
さらに、保険会社側の担当者は医師に対して、保険会社側に有利な回答を得るような質問をすることもあります。
これによって、被害者が受けるべき適切な治療や補償が制限されてしまう可能性があるのです。
4-3 求められる内容によっては注意が必要
交通事故による必要な治療は、客観的に症状固定と認められる時期までは治療を継続する必要があります。
そのため、保険会社が求める同意によっては、安易に同意しない方が良いケースもあります。
上記でもお伝えした通り、被害者の医療情報を取得することによって、治療費の支払いを早期に打ち切るタイミングを検討し、後遺障害等級認定の際にもできる限り低くしたいという思惑があるからです。
保険会社が医療照会や医療調査のための同意まで求めている場合には、安易に同意すると、被害者が受けるべき適切な治療や補償が制限されてしまう可能性があります。
そのため、同意書に署名する前には、その内容を十分に理解し、必要であれば弁護士の意見を求めることが重要なのです。
5 弁護士に相談するメリット
5-1 弁護士に相談することの重要性
保険会社から同意書を求めてくる目的を十分に理解しておかねばなりません。
被害者に対しては手続きの手間を省くというメリットを提示しつつ、保険会社自身の支出を抑えるための手段として同意書を利用しているのです。
交通事故の場合、どれだけ辛い思いをしているとしても、どうしても外部から受傷程度が判断しにくい怪我が多くなっています。
そのため、保険会社としては同意書を得て、早期に症状固定にして治療を切り上げさせようとする動きが生じるのです。
しかし、被害者にとって治療継続の必要があるのであれば、医師に対して保険会社側に有利な回答を得るような医療照会の状況など、生じさせてはなりません。
その対処として、医療照会に関する同意をしないことをはじめとして、同意した場合にも保険会社が医療照会する場合には被害者側も同席する、保険会社による医療照会が行われた場合にも回答書を交付してもらう、などが考えられます。
しかし、そのような対処を交通事故による治療を継続しながら、被害者側が行うのは難しいと言わざるを得ません。
そのため、交通事故問題に特化した弁護士に相談することが適切です。
弁護士は専門的な知識と経験を持っており、被害者の権利を守るための適切なアドバイスを提供できます。
また、弁護士が間に入ることで、保険会社との交渉もスムーズに進むことが期待できるのです。
5-2 治療が継続できることや慰謝料の金額が上がる可能性が
交通事故問題に特化した弁護士であれば、治療中から適切なアドバイスができます。
交通事故の法律や判例に詳しいため、被害者が自身で行うよりも適切な対応が可能です。また、弁護士は被害者の立場から最善の結果を追求します。
まず、被害者に代わって保険会社と交渉できます。
交通事故の示談交渉は、相手の保険会社も交渉のプロですから、専門的な知識を必要とします。
しかし弁護士に相談しておけば、適切な交渉を行い、被害者の利益を最大限に守ることができるのです。
また、治療中から後遺障害等級認定の申請や示談までサポートを受けられます。
治療の進行状況や症状の変化に応じて法律的な観点から症状固定の時期を判断し、適切なタイミングで後遺障害等級認定の申請を行うことができます。
【関連記事】後遺障害が認定されたらどうなる?認定や示談の流れ、弁護士に依頼するメリットについて
医師の見解と、法的な症状固定の時期が必ずしも一致するわけではないからです。
治療の必要性があるのであれば、治療を継続すべきです。弁護士は被害者の健康状態を最優先し、必要な治療が受けられるようにサポートします。
そのため、慰謝料などの金額が上がる可能性も高くなります。
被害者の損害を詳細に算定し、それを基に保険会社との交渉を行います。その結果、被害者が受け取る慰謝料などの金額が増える可能性があります。
以上のように、交通事故に遭った際には弁護士に相談することで、被害者の利益を最大限に保護することが可能です。
特に、同意書の内容について不安がある場合や、治療の進行に伴う後遺障害等級認定の申請など、専門的な知識を必要とする場面では、弁護士の支援が大きな助けとなります。
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6 まとめ
交通事故に遭った際に保険会社から送られてくる同意書に署名すると、保険会社は被害者に代わって医療情報を取得できるようになり、治療費の支払いや後遺障害等級認定の申請が可能となります。
しかし、同意書に署名することは必ずしも被害者にとって最善の選択とは限りません。特に、医療照会や医療調査の同意まで求められる場合には注意が必要です。
保険会社から同意書に署名を求められた際には、送り返す前に内容をよく理解し、必要であれば弁護士に相談することが重要です。
同意書が届いて不安である場合には、交通事故問題に対する専門的な知識と経験を持つ弁護士に相談し、サポートを受けることが最良の選択となるからです。
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慰謝料の増額、後遺障害認定のサポートを中心に、死亡事故から後遺障害、休業損害の請求に取り組んでいます。
交通事故の被害者救済のために、積極的に法律・裁判情報の発信を行っています。
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