親の借金を相続放棄したらどうなる?6つの注意点や流れ、揉め事を避ける方法について弁護士が解説

監修者ベストロイヤーズ法律事務所

弁護士 大隅愛友

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親の借金を相続するかどうか、これは多くの人にとって重要な問題です。

相続というと、財産や資産を思い浮かべがちですが、借金もまた、相続の対象となることがあります。

では、もし親が残した借金がある場合、相続放棄を選ぶことはできるのでしょうか?

また、その選択にはどのような影響があるのでしょう?

本記事では、親の借金を相続放棄する際の流れ、それに伴うデメリットやトラブル、そして進め方について、弁護士の視点から詳しく解説していきます。

相続放棄は、相続人が故人の負債だけでなく資産を放棄する決断を意味しますが、その決断がどのような結果をもたらすのか、一般の方にもわかりやすく説明します。

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1 相続放棄とは?親の借金を相続放棄したらどうなるの?

1-1 相続放棄によって相続人の立場を失う

相続放棄は、故人から相続する権利と義務の全てを放棄する制度です。故人の資産だけでなく、負債も含まれます。

相続発生時に家庭裁判所で手続きを行い、この手続きを経ることで、相続人としての地位を自ら放棄することができます。

相続放棄を行った場合、相続人は故人からの遺産を一切受け取ることができなくなります。

故人の財産がプラスであっても、マイナスであっても同様です。

つまり、故人が負債を残していた場合、それを相続する必要がなくなる一方で、財産や資産を受け取ることもできなくなります。

そのため特に、故人の負債がプラスの財産を上回る場合に利用されることが多いです。

相続放棄は、相続が開始したことを知った日から3ヶ月以内に行う必要があります。

手続きは、故人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述書を提出し、これが受理されることで正式に認められます。

また、個々の相続人の権利であるため、他の相続人が反対していても、個人が単独で行うことが可能です。

相続放棄を行った場合、その人は遺産分割協議に参加することはできませんし、他の相続手続きに関与することもできなくなります。

これにより、相続人としての全ての権利と義務から解放されるわけです。

1-2 相続対象になる負債

相続というと、故人が残した資産や財産を受け継ぐイメージが強いかもしれませんが、実際には負の財産、すなわち借金やローンなどの負債も相続の対象となります。相続人が故人の負債を相続する場合、故人に代わってその返済責任を負うことになるのです。

具体的に相続の対象となる負債には、以下のようなものが含まれます。

  • 銀行や金融機関からの借入金(例えば住宅ローンなど)
  • クレジットカードの未決済分
  • 未払いのツケ払い
  • 支払いが滞っている家賃
  • 納付されていない税金や健康保険料
  • 交通事故などで生じた未払いの損害賠償債務
  • 事業に関連する買掛金や未払いのリース料

これらの負債は、相続人が責任を持って支払わなければならない場合があります。

万が一、相続人自身もこれらの債務を支払うことが困難な場合、自己破産という選択肢も考えられます。

しかし、相続放棄を行うことで、これらの負債から免れることが可能です。

相続放棄は、故人が残した負債を引き継ぐ義務から解放されるという大きなメリットを持っています。

ただし、注意点として、故人の借金の保証人になっている場合は、相続放棄を行ってもその支払い義務から逃れることはできません。

保証人としての責任は別途存在するため、この点を十分に理解しておく必要があります。

1-3 相続放棄した借金はどうなる?

相続放棄を行うと、放棄した相続人は故人の借金に関する返済義務を負わなくなります。

しかしながら、借金そのものが消滅するわけではありません。

相続放棄によって負の遺産(借金)の責任が免除されるのは、放棄した相続人に限られるため、他の相続人が存在する場合は、彼らが放棄された部分の借金を引き継ぐことになります。

次の相続人が存在し、その人が相続を受け入れる場合、故人の借金はその相続人に移ります。

また、全ての相続人が相続放棄を行った場合、借金の返済義務は連帯保証人に移ることになります。

これは、借金の法的責任が次の責任者に移るということです。

さらに、相続放棄によって引き継がれなかった財産は最終的に国庫に帰属します。

故人の財産にプラスの資産がある場合、まずは債権者に対してそれらの資産が分配されます。その後、残った財産が国庫に納められることになります。

つまり、全員が相続放棄を行った場合でも、即座に財産管理の義務がなくなるわけではないということです。

相続財産管理人が選任されるまでの期間、相続放棄した者には一時的に財産の管理義務が発生することがあります。

財産が適切に管理され、債権者などへ適正に処理されるための措置なのです。

1-4 遺産分割協議でのトラブルを回避できる

相続人となった場合、遺言書がない状況下では、他の相続人と一緒に遺産の分割方法を決める「遺産分割協議」を行うことが一般的です。

しかしこの協議において、相続人間の意見の相違からトラブルが発生することがしばしばあります。

このような相続トラブルは長期化すると、時間や労力の無駄遣いにつながるリスクがあります。

しかし、相続放棄を選択することで、こうした遺産分割協議におけるトラブルや紛争に巻き込まれるのを避けることが可能です。

相続放棄を行うと、法的に相続人としての地位を失うため、遺産分割協議に参加する必要がなくなります。

これにより、相続に伴う複雑な手続きや他の相続人との意見の衝突を避けることができるのです。

ただし、相続放棄を行う前に、他の相続人に対して自分の意志を明確に伝えることが大切です。

これは、将来的な誤解やトラブルを防ぐために重要です。

また、一度行った相続放棄は撤回することができないため、この決断を下す前には、遺産の状況や自身の家庭の事情を総合的に検討し、慎重な判断が求められます。

2 相続放棄に生じる6つの注意点

2-1 負債だけではなく資産や財産の相続権も放棄することになる

相続放棄に関して、民法では「相続放棄をした人は、初めから相続人ではなかったとみなされる」と定めています(民法939条)。

この規定により、相続放棄を行った人は、故人の負債を引き継がずに済むメリットがある一方で、故人が残したプラスの財産、例えば現金や不動産なども一切相続することができなくなります。

この点は、相続放棄の大きなデメリットとして認識する必要があります。

相続放棄は、故人の借金や負債だけでなく、あらゆる資産や財産の相続権も放棄することを意味します。

したがって、相続放棄をすると、故人の財産全体に対する権利を失うことになり、後になって故人の資産の存在を知ったとしても、その相続権を取り戻すことはできません。

このため、相続放棄を検討する際には、故人が残した負債だけでなく、資産の全体像を把握し、慎重な判断を行うことが非常に重要です。

2-2 相続放棄には期限が存在する

相続放棄を行うには、そのための期限が法律で定められています。

民法においては、相続開始を知った日から3ヶ月以内に相続放棄の手続きを完了させなければなりません。

この3ヶ月という期間は「熟慮期間」と呼ばれ、相続人が慎重に相続放棄を検討するために設けられています。

この期限を過ぎてしまうと、法的には単純承認(相続を受け入れたとみなされる状態)が成立します。

その結果、故人が残したプラスの財産だけでなく、マイナスの財産(借金など)も全て引き継ぐ必要が生じ、これを後から取り消すことはできません。

もし相続放棄の期限に間に合わない場合、家庭裁判所に期間の延長を請求することは可能ですが、これが必ずしも認められるとは限りません。

相続放棄の手続き自体は、期限内に始めていれば、その完了が期限後であっても問題ありません。

相続財産の調査が難航して、3ヶ月以内に相続放棄をするかどうかの判断が困難な場合もあります。

このような状況では、期限内に手続きを進めるために、弁護士などの専門家に相談することが推奨されます。

2-3 相続放棄したら撤回は認められない

相続放棄を一度行うと、原則的には撤回はできません。

相続放棄が一度認められると、次順位の相続人がその地位を継承します。

もし相続放棄が容易に撤回できるようになってしまうと、相続に関する法律関係が不安定化し、結果的に混乱を招く恐れがあります。

ただし、相続放棄が強迫や詐欺などによって行われた場合には、例外的にその取り消しが認められることがあります。

このような場合は、相続放棄が不当な圧力や誤解に基づいて行われたと認められる場合に限られます。

多くの人は、相続放棄をした後に「やはり相続を希望する」と考えることがあります。

特に、後から予期せぬ高額の資産が発見された場合、「相続放棄は間違いだった」と感じることもありえます。

このため、相続放棄をする前には、故人が残した財産をしっかりと調査し、相続放棄が結果的に損失につながらないかどうかを慎重に判断することが非常に重要です。

2-4 残された相続人が借金の返済義務を負うことに

相続放棄を行うと、その人の借金の返済義務は自動的に次の順位の相続人に移行します。

一人の相続人が相続放棄をすると、その結果、残された他の相続人が返済義務を負うことになります。

仮に全ての法定相続人が相続放棄をした場合、最終的には連帯保証人がその責任を負うことになります。

相続放棄は、放棄した人の相続人としての地位を終了させます。これにより、自動的に次順位の相続人がその相続権を継承します。

しかし、相続放棄を検討している人が、事前に他の相続人と相談を行わなかった場合、次順位の相続人は突然、予期せぬ借金を負うことになる可能性があります。

特に注意すべきなのは、家庭裁判所からは相続放棄の事実について次順位の相続人への通知は行われず、また、相続放棄した人にもその旨を伝える義務がないことです。

そのため、多くの場合、次順位の相続人は債権者からの請求が始まるまで、自身が借金の相続人になっていたという事実を知らないことがあります。

これは、予期せぬ返済義務に直面し、混乱やパニックに陥る原因となることが少なくありません。

したがって、相続放棄を検討する際には、他の相続人との事前の相談や情報共有が非常に重要です。

突然の負担を他の相続人に強いることを避け、相続に関するトラブルや紛争を予防するためにも、必要な配慮と言えます。

2-5 法定単純承認が成立したら相続放棄が認められない

相続において「法定単純承認」という制度があります。

これは、相続人が故人の財産を使用したり、処分したり、損壊したりすることにより、無意識のうちに相続を承認してしまう状態を指します。

例えば、故人の預貯金を自分のために使用した場合、これは法定単純承認が成立したと見なされ、以降は相続放棄を行うことができなくなります。

したがって、注意深く行動する必要があります。

しかし、単純承認に該当する可能性のある行為をした後でも、相続放棄が受理されるケースは存在します。

判例において「家庭裁判所は、却下すべき明白な場合を除き、相続放棄の申述を受理すべき」とされています。

これは、単純承認事由が明らかでない場合、つまり単純承認に該当するか否かが不明瞭な状況では、相続放棄の申述が受理される可能性があることを意味しています。

例えば、「賃貸借契約の解約」は単純承認に該当するか否かについて意見が分かれる行為です。

そのため、解約を行った場合でも、相続放棄の申述をすることで、それが受理される可能性が高くなります。

なお、単純承認事由の存在により相続放棄が無効であると考える相続人や相続債権者がいる場合、その効果については訴訟を通じて争うことができます。

相続放棄の有効性に関する争いが生じることもあり得ますが、誰からも相続放棄の無効を主張されなければ、相続放棄の効果は維持されます。

2-6 不動産の管理義務は元の相続人になる場合が

相続放棄を行っても、特定の状況下では不動産の管理義務が残ることがあります。

例えば、唯一の相続人がいる場合や、全ての相続人が相続放棄をした場合には、不動産の管理義務が残されることがあります。

この義務を怠ると、建物の破損などによって第三者が被害を受けた際、損害賠償責任を負う可能性が生じます。

そのため相続放棄後でも、故人の財産に不動産が含まれている場合、特に注意が必要です。

全ての相続人が相続放棄した場合、民法940条に基づき、元の相続人(相続放棄をした人)にはその不動産の管理義務が課されます。

相続財産管理人が選任されるまでの間、元の相続人が不動産を適切に管理する必要があります。

相続放棄をした人は、所有者ではなくなったとしても、その土地を自分の財産と同様に管理する義務があります。

全員が相続放棄をした財産は、法的に法人化され、その後、相続財産管理人が売却処分などの手続きを行います。

しかし、相続財産管理人の選任が完了するまでの期間、元の相続人には財産の管理義務が残ります。

3 相続放棄の流れ

3-1 相続財産調査

相続放棄を検討する上で重要な取り組みの一つが、被相続人の財産の全体像を正確に把握することです。

資産と負債の両方を綿密に調査することで、相続放棄をすべきかどうかの判断が可能になります。

相続財産調査には以下のようなものがあります。

  • 故人の家を探し金融関連の書類や貴重品などの確認
  • 被相続人名義の銀行口座の残高や取引履歴の照会
  • 証券会社や証券保管振替機構で株式などの証券関連の資産を照会
  • 故人のオンラインバンキングや投資関連の情報を探す
  • 貸金庫内に保管されている貴重品や重要書類の確認
  • 故人宅に届く郵便物から負債に関する督促状などの有無を確認
  • 留守番電話に残されたメッセージから負債に関する連絡がないかを確認

これらを調査することで、被相続人の資産と負債の実情を詳細に把握でき、相続放棄をするかどうかの判断基準が明確になります。

3-2 相続方法を選択する

被相続人の財産調査を完了した後は、どの相続方法を選択するかを慎重に検討する必要があります。

選択肢としては「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の三つがあります。

「単純承認」は故人のプラスの財産とマイナスの財産(負債)の両方を相続する方法です。単純承認を選択すると、故人が残した全ての財産に対する権利と責任を引き受けることになります。

「限定承認」は、故人の残した資産と負債を差し引いた上で、最終的にプラスになる場合のみ相続する方法です。

もし負債が資産を上回る場合は、その負担は生じません。相続放棄と異なり、負債が資産を上回らない限りは、故人の資産を引き継ぐことができます。

資産がある場合は、相続放棄よりも限定承認を選択することが、より有利になる可能性があります。ただし、限定承認を行うには、相続人全員が「限定承認の申述」を行う必要があります。

「相続放棄」を選択すると、故人の負債だけでなく、全ての資産を相続する権利も放棄します。負債が資産を大きく上回る場合に適した選択ですが、一切の資産も手に入らないため注意が必要です。

これらの相続方法を検討する際には、故人の財産の全体像を総合的に評価し、自身や他の相続人の状況も考慮することが重要です。

3-3 相続放棄の申述

相続放棄を行うには、家庭裁判所で正式な「相続放棄の申述」を行う必要があります。

【必要書類】

  • 相続放棄の申述書
  • 標準的な申立添付書類

※被相続人の住民票または戸籍附票

※申述人(放棄する人)の戸籍謄本

※被相続人の死亡記載のある戸籍謄本や除籍謄本

※申述人が代襲相続人(孫・ひ孫等)の場合,被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本

必要に応じて、他の戸籍謄本類も必要になることがあります。

【申述に必要な費用】

  • 収入印紙800円分(申述人1人につき)
  • 連絡用の郵便切手(書類の送付に使用されます)

4 相続放棄での揉め事を避け円滑に進めるために

4-1 相続財産調査の重要性

相続においては、故人の財産全体を正確に把握することが非常に重要です。

故人が借金を抱えているように見える場合でも、詳細な調査を行うと、高額な不動産などの資産が含まれていることが判明するケースも少なくありません。

このような状況では、財産の総額がプラスであることがわかることもあるのです。

したがって、借金が明らかになった場合でも、すぐに相続放棄を決断せず、冷静に全体の財産状況を客観的に分析することが重要です。

正確な財産調査には、故人の銀行口座の確認、不動産の評価、保険金の有無の確認などが含まれます。

こうした情報を総合的に考慮して、相続放棄を行うかどうかの判断を下すことが、トラブルを未然に防ぐための鍵となります。

相続放棄をするかどうかを慎重に決定することが、結果的に最善の選択を導くことにつながるのです。

そのため、弁護士などの専門家の協力を得ると有効です。

弁護士は財産調査の効率的な方法を知っており、また、相続放棄をするべきか否かについてのアドバイスも提供してくれます。

4-2 事前に次順位の相続人に連絡と丁寧な説明をしておく

相続放棄を検討する際には、次順位の相続人への事前の連絡と説明が重要です。

相続放棄をすることで、次順位の相続人が突如として債権者からの請求に直面する可能性があるためです。

このような混乱を避けるためにも、相続放棄の意向をきちんと伝えておくことが肝心です。

特に、普段からあまり交流がない次順位の相続人に対して特に大切な配慮となります。

もしも、あまり交流がなく連絡が困難な場合であれば、弁護士を通じて連絡を行うことが有効です。

弁護士が介入することで、情報が正確に伝達されるだけでなく、法的な側面からも適切な説明がなされるからです。

これにより、相手方が状況をより明確に理解し、納得する可能性が高まります。また、法律的な誤解を避けるためにも、弁護士による説明は非常に重要なのです。

4-3 相続放棄の手続きが完了するまで財産には手をつけない

相続放棄のプロセス中には、故人の財産を使用したり処分したりする行為に極めて注意が必要です。

これは、「法定単純承認」という制度の存在によるものです。

法定単純承認とは、相続人が相続財産を使う、処分する、損壊するなどの行為をした場合、法的に相続を承認したと見なされ、その結果として相続放棄ができなくなる制度です。

例えば、故人の預貯金を自己の利用目的で使用した場合、相続放棄ができなくなる行為とみなされる可能性があります。

故人の財産に軽率に手をつけると、相続放棄を行う権利を失う恐れがあるため、慎重に行動することが求められているのです。

そのため、相続放棄の手続き中や検討中であっても、借金の催促に対して故人の預貯金を使用することは避けるべきです。

そのような状況に直面した場合は、 相続放棄を進めている最中であるという事実を通知し、支払いを一時的に保留してもらうのが望ましいです。

保留が認められない場合には、自身の預貯金から支払うことを検討する必要があります。

5 相続放棄についてよくある質問

5-1 相続放棄に期限はありますか?

相続放棄を行う際には期限が法律で定められており、民法第915条第1項に基づき、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に相続放棄の手続きを行わなければなりません。

この期限は厳格に適用され、原則として3ヶ月を過ぎると、相続放棄をすることはできなくなります。

このため、相続の事実を知ったら、可能な限り迅速に動くことが重要です。

3ヶ月という期限内に適切な手続きを完了させるためには、必要な書類の準備や家庭裁判所への申請などを迅速に進める必要があります。

また、相続放棄の判断や手続きは複雑なものが含まれることも多いため、不明点がある場合は速やかに相続問題に精通した弁護士に相談することが推奨されます。

5-2 離婚した親の借金は相続されますか?

親が離婚した場合でも、親と子の法的な関係は消滅しないため、子どもは依然として親の法定相続人です。

このため、親子間で疎遠になっていたとしても、子どもには相続権が残っており、それには親の負債を含むすべての財産の相続権が含まれます。

そのため、親が離婚後に負った借金であっても、法的にはその子どもに返済の義務が継承されます。

実際に、音信不通の状態だった親が亡くなった後に、突然債権者から借金の返済を求められるケースは少なくありません。

このような状況を避けるためにも、相続の開始を知った時点から3ヶ月以内に相続放棄の手続きを進めることが重要なのです。

5-3 相続放棄ができないケースは?

相続放棄は、一定の条件下では行うことができない場合があります。

  • 被相続人が存命中(相続放棄は、被相続人が亡くなった後にのみ可能)
  • 相続財産を使用・処分してしまった(法定単純承認が成立し相続放棄ができなくなる)
  • 相続された借金を一部でも返済してしまった(単純承認と見なされる)
  • 相続の開始を知ってから3ヶ月を過ぎてしまった(単純承認が成立する)

これらのケースを理解し、相続放棄を検討する際には、それぞれの状況を適切に考慮することが重要です。

6 まとめ

この記事では、相続放棄について詳しく解説しました。相続放棄は、故人からの負債だけでなく、資産の相続をも放棄する手続きです。

借金を背負わずに済むメリットがありますが、プラスの財産も相続できなくなりますので、故人の財産を丁寧に調査し、他の相続方法(単純承認、限定承認)を選択するかを検討することが重要です。

ただし相続放棄の判断と手続きは複雑であるため、相続問題に精通した弁護士の助言を求めることをおすすめします。

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監修者

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代表弁護士 大隅愛友

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