相続人廃除の制度とは?相続させない遺産管理の方法を弁護士が解説!
監修者ベストロイヤーズ法律事務所
弁護士 大隅愛友
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「遺産を1円も相続させたくない」。特定の相続人にそのような思いをもたれる方も少なくありません。
実は、特定の人を相続人から廃除する「相続人の廃除」という手続があります。
相続廃除は対象となる相続人への影響が非常に大きいことから、それ相応の理由が必要であり、気をつけるべき点も多いです。本記事では相続対策方法の1つである相続廃除について手続の方法や注意点を解説します。
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1 相続廃除とは
相続廃除は、特定の相続人から一切の相続権を奪う制度です。
被相続人が生前に(まだ相続が発生していない段階で)相続人の相続権を奪うことが可能です。ただし、相続人の廃除が認められる可能性は20%程度といわれています。
1-1 相続廃除の対象者
相続廃除の対象者は遺留分をもつ推定相続人です。遺留分とは、法律上で保障される最低限の相続割合を指します。下記の人は遺留分をもつ推定相続人に該当するため、審判で相続廃除が可能です。
- 配偶者
- 子ども
- 直系尊属(両親・祖父母)
兄弟姉妹などは遺留分をもたず、相続廃除の対象にはなりません。
【関連記事】遺留分は兄弟にはない|その理由と遺留分なしでも財産を相続する方法
1-2 相続廃除ができる条件
ただ単に「仲が悪いから。」「疎遠になってしまったから…。」といった理由だけでは、相続廃除は認められないこともあります。民法892条には相続人の廃除事由について規定されています。
- 推定相続人が被相続人に虐待や重大な侮辱を行った
- 推定相続人に著しい非行があった
上記のような場合、被相続人は推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求できるというものです。相続廃除は戸籍にも記載されます。
2 相続廃除の手続
相続廃除の申立は、生前であれば被相続人本人が家庭裁判所で行います。
遺言書で特定の推定相続人の廃除を記載していた場合には、遺言執行者が家庭裁判所に申立をします。
申立があると、被相続人と廃除の対象になる相続人それぞれの主張を家庭裁判所が聞き取り、廃除を認めるかどうかは裁判官が審判します。
2-1 被相続人が生前に申立を行う流れ
被相続人が生前に家庭裁判所へ申立を行うには、下記の必要書類を準備します。
- 推定相続人廃除の審判申立書
- 被相続人の戸籍謄本
- 対象となる相続人の戸籍謄本
- 収入印紙800円(相続人1人につき)
- 所定の郵便切手(数千円程度)
被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に上記を提出し、相続人の廃除について審判を行ってもらいます。審判後、廃除が確定したら下記の書類を10日以内に役場へ提出します。
- 推定相続人廃除届(役所の窓口で受け取れます)
- 審判の確定証明書
- 審判書の謄本
審判の確定証明書と審判書の謄本は審判後に交付されます。
2-2 遺言執行者が申立を行う流れ
遺言執行人による申立も、被相続人のときと大きく変わりません。遺言の場合は、被相続人の生前に、廃除対象の相続人に知られる可能性が低くなります。
一方で、遺言執行人は審判を見届けられず、上述のとおり廃除が認められる可能性は低くなる点に注意が必要です。遺言によって相続人の廃除を行う場合には、下記の内容を遺言書に記載しておきましょう。
- 遺言執行者
- 特定の相続人について相続廃除をする意思表示
- 相続廃除をするにあたる具体的な理由
【関連記事】遺言執行者を弁護士にするメリットは?役割や選任の方法について弁護士解説
3 相続廃除の注意点
相続廃除を考えていくうえでは注意しておくべき点があります。とくに代襲相続が行われてしまうと、被相続人の望みを実現できなくなることもあります。また、相続廃除は相続欠格と異なる点も注意しておきましょう。
【関連記事】相続欠格となる5つの事由~その効果や手続き、相続廃除との違いについて説明
3-1 代襲相続
相続廃除で最も注意をしなければならないのが代襲相続です。
代襲相続とは、本来の相続人に代わって子や孫が相続する制度です。
廃除された相続人に子どもがいた場合、その子どもが代襲相続できます。つまり、代襲相続によって廃除された相続人の家族に財産が相続されてしまいます。代襲相続も防ぎたい場合は、代襲相続人となる人も相続廃除をしなければなりません。代襲相続人についても、相続廃除が認められる事由は必要であり、これはかなり難しいとされています。
【関連記事】代襲相続とは?相続の範囲やできるできない、トラブルまで詳しく解説
3-2 遺留分
遺言書では、特定の相続人を指名して財産の大部分を相続させられます。
特定の相続人に相続させたくないがため、遺言書で財産を渡す相続人を指名する方法を思いつく人もいるでしょう。
しかし、遺言書の相続は遺留分が認められます。
たとえば、子ども2人(長男・長女)が相続人であり、長男へ相続させたくないため遺言書に「財産はすべて長女に相続させる。」という旨を記載したとします。このとき、長男には遺留分が4分の1あるため、遺留分侵害請求を行うことで遺産の4分の1を受け取ることが可能です。一方で、相続廃除は遺留分を認めないため、1円も相続させたくないなら相続廃除が選択肢にあがります。
【関連記事】遺言書の全財産が無効になるケースとは?1人に相続させることは可能?
【関連記事】(遺言書)遺産を一人だけに相続させたい|ケース例や注意点を解説!
3-3 相続欠格
相続人の権利がなくなる相続欠格という制度があります。被相続人の意思ではなく、下記のような事由に該当して相続権を失います。
- 故意に被相続人や他の相続人を殺害した場合
- 被相続人の遺言書を偽造や破棄した場合
上記のような事由は、法律に従って相続権が失われます。
【関連記事】相続欠格となる5つの事由~その効果や手続き、相続廃除との違いについて
4 相続人の廃除は取消可能
一度相続廃除が認められた場合でも、家庭裁判所で被相続人が手続(廃除の審判の取消)を行うことで、再び相続人に戻すこともできます。
たとえば、著しい非行を繰り返した息子を一度相続廃除したものの、改心して謝罪をしたことで許してあげたいと気持ちが変わることもあります。相続廃除は相続権の一切を剥奪する最終手段ともいえるでしょう。「やっぱり・・・」と思い直したときは、申立をして審判で取消もできるのです。
なお、廃除の審判の取消について遺言書に書いておき、遺言執行者が請求することも可能です。取消が認められると、相続権を剥奪されていた相続人は、相続開始から相続人となります。
5 相続廃除を弁護士に依頼するメリット
上述のように、財産を渡したくない相続人がいたとしても相続廃除を認めてもらうのは非常に難しいです。審判を受けるためには、相続廃除に相応しいと客観的に認められるような証拠を準備しておく必要があります。
不安なときは、弁護士に依頼をすることで、審判で廃除が認められるようアドバイスしてもらえます。
また、認められにくい相続廃除の制度を利用しなくても、特定の相続人に財産が渡らない他の方法を提案してもらえるかもしれません。
たとえば、生前贈与や離婚・離縁といった方法もケースによっては考えられます。弁護士に相談をすることで自分の状況にあった最適な方法を一緒に探してもらえます。
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