あおり事故とは?追突事故の対処法を交通事故に詳しい弁護士が徹底解説
監修者ベストロイヤーズ法律事務所
弁護士 大隅愛友
監修者ベストロイヤーズ法律事務所
弁護士 大隅愛友
慰謝料の増額、後遺障害認定のサポートを中心に、死亡事故から後遺障害、休業損害の請求に取り組んでいます。
交通事故の被害者救済のために、積極的に法律・裁判情報の発信を行っています。
全国からご相談を頂いております。ご希望の方はお電話またはwebでの無料相談をお気軽にご利用ください。
運転中に他の車から接近し、追い越しや急な車線変更など、危険な行為をされたことはありませんか?
これらの行為は「あおり運転」と呼ばれ、道路上での大きな問題となっており、自己中心的かつ危険な運転は、交通事故を引き起こす可能性もあります。
本記事では、交通事故問題に詳しい弁護士が、あおり運転の特徴について、対処法や追突事故が起きた場合の対応などを踏まえて解説します。
1 あおり運転とは?具体的なケースや対処法
「あおり運転」は、道路交通法改正によって厳罰化されていますが、まだまだ被害が絶えない状況であり、被害を受けた場合には落ち着いて対処することが大切です。
1-1 あおり運転とは?具体的なケース
「あおり運転」とは、車間距離を極端に詰める、強引な追い越しや急停止、故意に威嚇するなどといった、他者に危険を及ぼす可能性のある運転行為全般を指します。
このような行為は、ドライバーに精神的なストレスを与えるだけではなく、大事故を引き起こしてしまう可能性もあります。
具体的なケースとして、次のような行為があります。
- 無理な追い越し
- 車間距離の詰めすぎ
- 急な車線変更
- 急ブレーキをかけて後方車両の追突を誘発する
- パッシングやクラクションで威嚇する
- 道路上で急停止する
これらの行為は全て「あおり運転」の具体例であると言え、交通事故のリスクを増大させるものと考えられます。
1-2 あおり運転にあわないための対処法
あおり運転の被害に遭わないためには、他のドライバーを不快にさせないような運転を心がけておく必要があります。
例えば、突然の進路変更や割り込み、急発進、急ブレーキは、他の車両に対して混乱を招くことになり、あおり運転を引き起こす可能性があります。
周囲の流れに合わせてスムーズに運転することが大切です。
また、自動車道や高速道路において、追い越し車線を走り続けることは他の車両をイライラさせる要因となります。
さらに、適切な車間距離を保つようにして、他のドライバーに対して心理的な負担をかけてしまうような行為や、急ブレーキなどの緊急時に対処できるように意識しておくことも大事です。
近年においては、ドライブレコーダーが設置されている車両が増えましたが、あおり運転を受けた際や事故発生時の証拠収集に役立ちます。
また、「ドラレコ搭載車両」などのステッカーを車体に貼ることで、他のドライバーに対して注意を促すこともできます。
2 あおり運転による追突事故の過失割合
あおり運転が引き起こす事故の一つに「追突事故」があります。実際に、追突事故が起きた際、過失割合がどのように認定されるのか、いくつかの事例をもとに解説します。
2-1 追突を回避できなかったケース
あおり運転によって追突事故が起きた場合、追突した側に100%の過失があると認定される可能性が高くなります。
これは、道路交通法第26条1項において『車間距離の保持』について定められており、前方車両が急停止した場合でも追突を避けることができる距離を保って走行しなければならないといった内容が明記されているからです。
【関連記事】もらい事故の慰謝料の特徴|慰謝料増額のための4つの方法を徹底解説
2-2 追突された側に過失が認定されるケース
あおり運転によって追突された場合でも、過失が認定されるケースが存在します。
その一例としては、前方車両が無理な急停止を行うことや、不適切な信号無視や道路標識の無視など、交通ルールに違反する行為をした場合が考えられます。
もちろん、急に子供が飛び出してきたときや、道路上に障害物があるなど、安全のために急ブレーキを踏む必要があった場合、急ブレーキは適切な行動となります。
しかし、あおり運転を挑発するようなケースや追突事故を誘発する目的であれば、過失が認定される可能性があるために注意が必要です。
3 あおり運転に対する交通法規・罰則について
悪質なあおり運転は社会問題となったこともあり、2020年6月の道路交通法改正によって厳罰化されることになりました。
3-1 あおり運転と認められる妨害運転とは
- 対向車線への接近や逆走(通行区分違反)
- 不必要な場面での急ブレーキ(急ブレーキ禁止違反)
- 車間距離を極端に詰める(車間距離不保持)
- 急な進路変更や蛇行運転(進路変更禁止違反)
- 左車線からの追い越しや強引な追い越し(追越し違反)
- 妨害や嫌がらせ目的でのハイビーム(減光等義務違反)
- 不必要なクラクション(警音器使用制限違反)
- 急な加減速や幅寄せ、蛇行運転(安全運転義務違反)
- 高速道路での低速走行(最低速度違反(高速自動車国道))
- 高速道路での不必要な場面での駐停車(高速自動車国道等駐停車違反)
【関連記事】高速道路で事故に巻き込まれた!事故後の対処法を弁護士が解説
3-2 あおり運転の罰則
2020年6月に道路交通法が改正され、あおり運転に対する罰則が厳罰化されました。
これにより、あおり運転とされる行為をした者は、その行為の危険性に応じて重い罰則が科せられるようになりました。
①交通の危険のおそれがある妨害運転に対する罰則
交通の危険のおそれがあると認定される妨害運転に対しては、
- 3年以下の懲役または50万円以下の罰金
※道路交通法第117条
- 違反点数25点加算
- 運転免許取消し(欠格期間2年、前歴や累積の違反点数がある場合には最大5年)
※道路交通法第103条、道路交通法施行令38条
といった罰金刑や運転免許の取消しが科せられます。
ここで言う『交通の危険のおそれがある妨害運転』とは、運転手が他の車を威嚇したり、追い回したり、極端に近づいたりする行為などを指します。
②著しい交通の危険がある妨害運転に対する罰則
危険性が高いと判断される妨害運転に対しては、より厳しい罰則が科されます。具体的には、
- 5年以下の懲役または100万円以下の罰金
※道路交通法第117条
- 違反点数35点加算
- 運転免許取消し(欠格期間3年、前歴や累積の違反点数がある場合には最大10年)
※道路交通法第103条、道路交通法施行令38条
懲役刑や罰金刑、そして運転免許の取消しが科せられます。
著しい交通の危険があると判断される妨害運転とは、他の車を無理に停車させる、危険な運転で他の車を追い越す、などの行為が含まれます。
③危険運転致死傷罪に対する罰則
- 15年以下の懲役(人を負傷させた場合)
- 1年以上の有期懲役(人を死亡させた場合)
※自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条
このように、人を負傷や死亡させた危険運転致死傷罪に対する罰則も定められています。
4 あおり運転にあった場合の対処法について
自身があおり運転の対象となった場合、感情的になりパニックに陥るかもしれません。
しかし、冷静な判断と適切な行動によって、自身の安全を守ることが重要です。
4-1 できるだけ距離を置く
あおり運転をしてくる車両との間にできるだけ距離を置くことが重要です。
道を譲ることが可能であれば、無理に進路を変更したり保持したりしようとせずに、相手に道を譲るようにし、先に行ってもらうようにします。
無理な急発進や、クラクションを鳴らすような、相手を逆上させてしまわないようにすることが大事です。
4-2 路肩に停車する
あおり運転が続く場合や、安全に進行できない状況であれば、安全な路肩に停車するようにしましょう。
ただし、停車する際には、他の車両の通行を妨げない場所を選び、なるべく人目の多い場所に停車することが大切です。
4-3 ドアや窓をロックして警察へ通報する
停車した場合や、あおり運転をしてくる車両が非常に接近してくる場合は、車内への不審者の侵入を防ぎ、安全を確保するためにドアや窓をすべてロックします。
安全に停車した後は、すぐに110番通報を行い、警察に事態を伝えましょう。
その際、現在の状況や相手の車種・ナンバープレート、現在地、進行方向など、具体的な情報を伝えることが重要です。
なお、安全に停車できないような状態であれば、走行中であっても通報を検討することが大切です。
走行中の携帯電話の使用は道路交通法によって禁止されていますが、緊急やむを得ない場合においては通報が可能となっています。
【関連記事】運転中に携帯を持っただけで違反になる?スマホに対する罰則について弁護士が解説
4-4 ドライブレコーダーやスマートフォンでの動画撮影
ドライブレコーダーの設置や、スマートフォン等での動画撮影は、あおり運転の証拠収集に有効です。
ただし、撮影は安全を確保した状態で行い、運転中の撮影は避けるようにし、同乗者がいる場合には撮影してもらうようにします。
5 あおり運転で追突事故が起きてしまった場合
あおり運転により追突事故が起きてしまった場合、適切な対応を行うことが求められます。
まずは、ケガ人の救護や現場の安全確保、警察への通報、そして適切な治療を行うことが重要です。
さらに、後になってトラブルに発展しないよう、賠償問題についての適切な対応や弁護士への相談が重要となります。
5-1 まずはケガ人の救護、警察への通報を
あおり運転による追突事故が起きた場合、まずはケガ人がいる場合は救護を行い、現場の安全確保を行います。
その上で、すぐに警察へ通報し、事故の詳細を伝えましょう。また、ケガをした場合はすぐに適切な治療を受けることが重要です。
【関連記事】(交通事故)痛くないのに通院・検査してよいの?不正請求を疑われない注意点
通報を行う際には、事故の詳細(場所、時間、状況)をはじめとして、あおり運転を行った車両の情報(車種、色、ナンバープレートなど)を伝えます。
また、場合によっては自身や他の証人の証言、ドライブレコーダーなどの証拠を提出する必要があります。
事故後、後遺障害の認定が出たら相手方に対して損害賠償請求を行います。
【関連記事】後遺障害が認定されたらどうなる?認定や示談の流れ、弁護士に依頼するメリットについて
【関連記事】後遺障害診断書のもらい方~手続きや取得のポイント
5-2 あおり運転で追突事故が起きたのなら弁護士に相談・依頼
あおり運転による追突事故が起きた際、相手方との損害賠償問題でもめてしまうことや、提示された損害賠償金が適切でないと感じた場合は、交通事故問題を専門としている弁護士に相談を行うことをおすすめします。
また、事故の過失割合が適切に評価されているかどうかを弁護士に相談することも重要です。
あおり運転による事故では、一般的には追突した側に全面的な過失が認定されますが、具体的な事故状況や証拠によっては過失割合が変動することもあります。
弁護士は損害賠償請求や過失割合の確認、事故の詳細調査など、専門的な知識と経験を活かしてサポートすることができますので、早めに相談して、適切な対応を行うことが重要です。
【関連記事】交通事故で弁護士に依頼する9つのメリット|デメリットや慰謝料増額も徹底解説
6 まとめ:あおり運転には冷静に対処・弁護士へも相談しましょう!
本記事では、あおり運転とは何か、その具体的なケース、対処法、あおり運転による追突事故の過失割合、違反する交通法規、罰則について詳しく解説しました。
あおり運転は、危険性を伴う行為であり、重大な交通事故を引き起こす可能性があるため、その危険性を認識し、適切な対処法を身につけることが重要です。
特に、あおり運転による追突事故が起きた際の対応や、損害賠償問題が発生した場合には、個々の状況により異なるため、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
慰謝料の増額、後遺障害認定のサポートを中心に、死亡事故から後遺障害、休業損害の請求に取り組んでいます。
交通事故の被害者救済のために、積極的に法律・裁判情報の発信を行っています。
全国からご相談を頂いております。ご希望の方はお電話またはwebでの無料相談をお気軽にご利用ください。