高速道路で事故に巻き込まれた!事故後の対処法を弁護士が解説
監修者ベストロイヤーズ法律事務所
弁護士 大隅愛友
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慰謝料の増額、後遺障害認定のサポートを中心に、死亡事故から後遺障害、休業損害の請求に取り組んでいます。
交通事故の被害者救済のために、積極的に法律・裁判情報の発信を行っています。
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高速道路の事故は、大きな事故に結びつきやすいといわれています。
それは、ニュースで大きく報じられる交通事故の多くが、高速道路で発生したケースであることからも分かるでしょう。
飲酒運転のトラックに追突されて幼い姉妹が命を落とした「東名高速飲酒運転事故」や、あおり運転事故に巻き込まれて夫婦が死亡した「東名高速夫婦死亡事故」、そして最近では故障して停車していたバスにトラックが衝突し、バスの周囲にいた3人の方が亡くなった事故など、枚挙にいとまがありません。
一般道路よりもスピードを出して走る高速道路では、車線変更などちょっとしたハンドルミスで事故につながりやすく、ドライバーは注意が必要です。高速道路で事故に遭ってしまった方、または、万が一事故に巻き込まれた時に備えて対処方法を覚えておきたい人はぜひ一度ご確認ください。
この記事では、高速道路上での事故について、事故直後でとるべき行動からケガを負った場合の対処法まで解説します。
1 高速道路で起きる主な事故の種類
高速道路で起きやすい主な事故の種類には、以下のものが挙げられます。
・追突事故
・逆走
・あおり運転
高速道路での事故は一般道での事故と比べて、スピードが出た状態で事故が発生することが多く、物損事故で済むケースは少なく、多くは怪我を伴う人身事故が多いことが特徴です。
1-1 追突事故
前方を走っている車(または停止している車)に、後ろから追突することによって発生した事故は、追突事故と呼ばれています。
高速道路では車は一般道路よりも高速で走るため、ブレーキを踏んでから停車するまでの距離が長くなりがちです。例えば、渋滞などで前方の車が低速で走行している場合や、隣を走っていた車が急に車線変更をして前を走行した時などは、追突事故を起こす可能性が高くなります。
【関連記事】追突事故でむちうちになったらどうすればいい?弁護士が教える対処法と損害賠償のポイント
1-2 逆走
進行方向と逆に走行することを、逆走といいます。
逆走は、反対方向から走ってくる車と正面衝突するリスクの高い危険な運転行為です。特にスピードを出して走っている高速道路では、大きな事故につながる可能性が高まります。
1-3 あおり運転
あおり運転とは、他車の走行を妨害するような運転のことです。
あおり運転自体に明確な規定はありませんが、
・前の車に急接近する
・後続車に対して蛇行運転をして進路を妨害する
・周囲を走行している車に対して挑発する
・前を走っている車に対して執拗にパッシングする
といった運転行為が該当するとされています。
東名高速夫婦死亡事故のように、あおり運転によって強制的に道路上に停車させられた場合は、後続車に追突されるリスクが高く非常に危険です。
【関連記事】あおり事故とは?追突事故の対処法を交通事故に詳しい弁護士が徹底解説
2 高速道路上で事故に巻き込まれた時の対処法
高速道路上で事故を起こしてしまった、または巻き込まれてしまった場合は、落ち着いて行動することが大切です。以下、事故にあった時どのように行動すればよいのかについてご紹介します。
2-1 ①路肩に車を停める
高速道路上で交通事故にあった時に最優先することは、自分と同乗者の安全確保です。
以下の順番で、車を安全な場所に移動させましょう。
・ハザードランプを点灯させる
・ゆっくりと減速しながら車を路肩に移動させる(急ブレーキはNG)
・三角表示板や発炎筒(燃料漏れの危険がある場合は避ける)などを設置する
2-2 ②負傷者がいたら救護する
負傷者がいる場合は、車を移動させた後救護します。
最初に負傷者の意識の有無を確認しますが、体を揺さぶることは避けましょう。脳にケガを負っている可能性があるためです。負傷者に声をかけて、反応を観察してください。
負傷者が動ける場合は安全な場所に移動させますが、難しい場合はその場にとどまり救護を待ちます。
2-3 ③安全な場所に避難する
停止している車の周りや車内にいると、後続車に追突されるおそれがあります。事故が起きたら慌てて外に出ず、安全確認をしてからドアを開けましょう。外に出たら、ガードレールの外側などできるだけ安全を確保できる場所に移動します。
2-4 ④警察と道路管制センターに連絡する
高速道路で事故が起きた場合は、警察署と道路管制センターに連絡します。
・警察署:110番
・道路管制センター:非常電話(高速道路上に設置されています)
連絡先には、事故の発生場所や負傷者の有無などを伝えます。落ち着いて、できるだけ正確に答えることを心がけましょう。
2-5 ⑤加害者情報を確認する
事故後に行われる示談や賠償金の請求に備えて、加害者の情報は必ず確認するようにしましょう。
具体的には、
・加害者自身の情報(住所・氏名・連絡先など)
・加害者が乗っていた車のナンバー
・加害者の勤務先の住所や連絡先
・加害者が加入している保険会社の名前
・事故現場での加害者とのやりとり
などです。
また、事故後のことを考えて、事故の様子や車の状況などを撮影しておくことも重要です。可能であれば行いましょう。
2-6 ⑥保険会社に連絡する
自ら加入している保険会社に連絡し、事故に巻き込まれたことを報告します。加えて、今後の対応についてアドバイスをもらいましょう。もし事故の状況から車を移動できないという場合は、保険会社からレッカー車を手配してもらえる可能性があります。
3 交通事故でケガをした場合の対処法
交通事故は、起きた直後だけでなくその後の行動も大切です。特にケガを負った場合は、賠償金請求などの手続きが必要となりますので、適切に行動しましょう。高速道路で事故に巻き込まれた後の対処法は以下のとおりです。
3-1 ①病院で診察を受ける
自覚症状の有無にかかわらず、事故後は速やかに病院で診察を受けましょう。
「大した事はなさそうだから診察を受けなくてもいい」と、自己判断することは禁物です。また、加害者から事故現場で「物損事故にしてほしい」などと持ちかけられても、安易に同意するのは避けましょう。
【関連記事】交通事故その場で示談してはいけない理由|事故後の対処法も弁護士が解説
その時は何もなくても、後で症状が出る交通事故その場で示談してはいけない理由|事故後の対処法も弁護士が解説ことがあります。事故後しばらくしてケガをしていることが分かり、慌てて賠償請求をしても「遅い」とみなされるかもしれません。そうすると、治療費は被害者の自己負担になりますので、注意が必要です。
【関連記事】(交通事故)痛くないのに通院・検査してよいの?不正請求を疑われない注意点
3-2 ②必要に応じて入通院する
ケガの治療で入通院が必要だと医師から言われることがありますが、その場合は指示に従って治療します。治療を怠ると、後遺症が残ったり、加害者から治療に十分な治療費を支払ってもらえなかったりする可能性が高くなります。
治療は、医師から「完治」または「症状固定」と診断されるまで続けます。
3-3 ③後遺症が残った場合は後遺障害等級認定の申請をする
交通事故によるケガで後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定の申請をします。
これは、交通事故によって後遺障害が残ったと公的に認めることを目的とした制度です。後遺障害等級に認定されることによって被害者は、後遺症の重度に応じた賠償金の請求が可能になります。
【関連記事】交通事故の後遺障害認定の期間は|遅い場合の効果的な対応方法
【関連記事】後遺障害が認定されたらどうなる?認定や示談の流れ、弁護士に依頼するメリットについて
4 事故に巻き込まれた場合に請求できる賠償金の種類
交通事故でケガを負った被害者が、加害者に対して請求できる賠償金にはいくつか種類があります。賠償金を大きく分けると以下のとおり。
・積極損害
・消極損害
・慰謝料
・物的損害
各賠償金について見てみましょう。
4-1 積極損害
積極損害とは簡単にいうと、交通事故によって被害者が支払わなければならない支出(損害)のことをいいます。
例えば、事故でケガをして通院すると治療費がかかります。この治療費が、積極損害です。
その他積極損害には以下のものが挙げられます。
・入院費用:交通事故のケガに伴う入院にかかる費用
・付添看護費:事故にあった被害者の介助に伴い発生する費用
・葬儀費用:被害者の葬儀にかかる費用
など
【関連記事】死亡事故の葬儀関係費用は賠償金として支払われます
4-2 消極損害
事故の被害者が受ける損害の中で、人身事故にあわなければ得ていたであろう収入があります。それを消極損害といいます。
主な消極損害として
・慰謝料:4-3で別途解説します。
・逸失利益:死亡または後遺症が残らなければ得られたはずの収入
・休業損害:事故によるケガの治療がなければ休職せずに得られたはずの収入
が挙げられます。
【関連記事】主婦(主夫)でも休業損害を受け取れます|損をしない3つのポイントを弁護士が徹底解説
4-3 慰謝料
慰謝料とは、被害者が事故によって受けた精神的苦痛に対して支払われる賠償金のことです。
被害者は、事情に応じて加害者に対し以下の慰謝料を請求できます。
・入通院慰謝料:入通院により被害者が受けた精神的苦痛に対する賠償金
・死亡慰謝料:死亡したことにより被害者が受けた精神的苦痛に対する賠償金
・後遺障害慰謝料:後遺障害が残ったことにより被害者が受けた精神的苦痛に対する賠償金
【関連記事】もらい事故の慰謝料の特徴|慰謝料増額のための4つの方法を徹底解説
4-4 物的損害
物的損害とは、車の破損など物的な損害のことです。
人身事故の場合、被害者のケガなどに対する賠償金の他に、物的な損害に対しても賠償金が支払われます。
5 高速道路で事故にあった場合の留意点
高速道路で事故にあった場合は、以下の点に留意しましょう。
・原因者負担金がある
・賠償金は異なる方法で請求できる
・過失割合が適切かどうかを確認する
5-1 原因者負担金がある
事故が起きたことによって公共物が破損してしまった場合、その修理費は原因を作った人が負担しますが、これを原因者負担金といいます。
例えば、高速道路で事故を起こしガードレールを壊したとしましょう。加害者は、後日道理管理者(高速道路の管理は国土交通大臣)から修理費を請求されます。
高速道路で事故が起きた時に、車両通行止めによる渋滞が発生することがあります。その場合も原因者負担金が請求されると思う人もいますが、物的な損害が発生しないケースでは、原因者負担金が請求されることはありません。
5-2 加害者への賠償金は「裁判基準」で請求しましょう
交通事故にあってケガをした場合、被害者は加害者に対して賠償金を請求できますが、請求の仕方によって金額が異なることをご存じでしょうか。
賠償金の請求方法には
・自賠責基準
・任意保険基準
・裁判基準(弁護士基準)
の3種類があり、それぞれ異なる基準で賠償金を計算します。
自賠責基準とは、自賠責保険会社を通じて賠償金を請求する際に用いられる、算定基準のことです。「必要最低限の補償」を目的としている保険であることから、自賠責基準で算出される賠償金は3つの基準の中で一番低い傾向にあります。
任意保険会社は、独自の算定基準を用いて賠償金を計算しますが、それを任意保険基準といいます。賠償金額は自賠責基準よりも高めですが、次にご紹介する弁護士基準よりも低い金額になる場合がほとんどでしょう。
裁判基準(弁護士基準)は、弁護士が賠償金の計算に用いる算定基準です。弁護士基準は、過去の判例を基に賠償金を計算しますが、3つの基準の中で一番高額になるといわれています。
どの基準を用いるかについてはケース・バイ・ケースですが、適切な金額の賠償金を得たいのなら、裁判基準(弁護士基準)に基づいて請求を行います。任意保険基準は、保険会社の利益が先行するため低く見積もられがちです。
弁護士基準を選択した場合は、弁護士費用が発生します。けれども、受け取れる可能性のある賠償金が弁護士費用を上回るようであれば検討してみましょう。
5-3 過失割合が適切かどうかを確認する
過失割合とは、被害者と加害者に課せられる事故の責任の割合を指します。
事故の後、被害者と加害者の間で示談が行われますが、加害者側の保険会社は、慰謝料などの賠償金額を提示します。
その際気をつけるのは、過失割合です。任意保険会社は独自の調査で得た結果を基に過失割合を決めて、被害者に賠償金額を提示します。その際、相手が決めた過失割合に納得できないかもしれません。その場合被害者は、納得できない旨を任意保険会社に伝え、変更を主張します。
過失割合の交渉には、
・自分で保険会社と話し合う
・加入している保険会社に任せる
・弁護士に委任する
の方法があります。
納得のいく結果を得たいのなら、専門家に任せるのが無難でしょう。保険会社にするか弁護士にするかは、依頼主次第です。ただし、できるだけ正確に過失割合を割り出してほしいと望んでいる場合は、弁護士を選ぶのが無難でしょう。
弁護士は、費用がネックになるかもしれません。けれども、弁護士費用特約つきの保険(弁護士特約)に加入している場合は、費用をかけずに依頼できる可能性があります。
【関連記事】「弁護士特約の利用は保険会社が嫌がる」ことなの?3つの理由と対応方法
また、交通事故の相談は無料としている弁護士も少なくないので、不安に思うことがあれば無料相談の利用を検討しましょう。
6 まとめ:高速道路での事故は一般道での事故とは異なります。二次災害の予防を優先!
高速道路で事故に巻き込まれた場合の対処法について説明しました。
スピードを出して走る高速道路での事故で大切なのは、二次災害を予防することです。
自身の安全を確保することを最優先とし、適切に行動しましょう。
ケガを負った場合は、事故後の対応にも慎重になる必要があります。ケガをしっかり治すことと賠償金を適切に請求することを念頭に、必ず医療機関で診察を受けることが大切です。
賠償金を請求する場合は、請求額の計算や加害者側との示談など、時間的・精神的な負担が被害者にかかりがちです。自力では限界があるという場合は、弁護士に相談することも選択肢に入れるとよいでしょう。
高速道路で事故が起きた時の対処法について、本記事が参考になれば幸いです。
慰謝料の増額、後遺障害認定のサポートを中心に、死亡事故から後遺障害、休業損害の請求に取り組んでいます。
交通事故の被害者救済のために、積極的に法律・裁判情報の発信を行っています。
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