電車に飛び込み家族が亡くなった|損害賠償の相続放棄を解説
監修者ベストロイヤーズ法律事務所
弁護士 大隅愛友
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大切なご家族が電車に飛び込み自殺してしまった場合、ご遺族に対して鉄道会社から損害賠償請求がされる可能性があります。
鉄道会社や乗客への影響が大きい場合は、数千万円以上の損害になることもあります。そういった際、ご遺族は亡くなった方の財産や損害賠償を相続するかどうかの選択が可能です。
この記事では、電車に飛び込んで亡くなったご家族の損害賠償を請求された場合の相続放棄について解説します。
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1 電車への飛込による損害賠償債務
電車に飛び込んで自殺をした場合、鉄道会社や乗客はさまざまな損害を受けます。
そして鉄道会社に非がない場合は、民法709条の不法行為に該当する可能性があり、鉄道会社が損害賠償請求すればその債務は遺族が背負わなければなりません。
1-1 人身事故を起こした際に考えられる損害
電車での人身事故を起こした場合に考えられる損害は、下記のようなものがあります。
・電車が遅延したことによる払い戻し
・乗客の振替輸送費
・列車が破損した場合の修理費
・復旧にかかった人件費
損害額は事故が起きた時間帯や場所によって異なりますが、数百万円〜数千万円になることが多いです。損害が発生すれば、鉄道会社や弁護士などからご遺族に連絡が入ります。郵送で請求が送られてくるケースもあります。
しかし、鉄道会社から請求されないケースもゼロではありません。ご遺族が故人の身元を明かすことに同意しなければ、個人情報保護の観点から鉄道会社は故人の遺族が誰なのかわかりません。また、鉄道会社はイメージダウンを避けるために、そもそも請求を行わないケースもあります。
1-2 飛び込み自殺以外で損害賠償債務が発生するケース
飛び込みによる自殺以外でも鉄道会社が損害を受けるケースはあります。自殺のように意図的でなくても、事故を起こした本人の過失と認められる場合などです。たとえば、不注意による踏切での事故でも、状況によっては損害賠償の請求がなされる可能性はあります。
ただし、鉄道会社も人身事故のすべてに損害賠償を請求するわけではなく、示談をして和解を図ることも多いです。
2 損害賠償債務の相続
損害賠償は相続の対象のため、相続人となるご家族がその債務を引き継ぐ形になります。
損害賠償は本来電車に飛び込んだ本人が支払うべきものです。しかし、本人は亡くなっているため配偶者やご両親などご家族に引き継がれます。自殺家族となってしまい、鉄道会社から損害賠償を請求された場合、損害額を支払えるかどうかが重要なポイントです。
上述したように損害賠償額の相場は高いですが、貯金など故人の遺産で支払える場合は資金の工面をしていく必要があります。反対に、経済的に賠償が不可能な場合は相続放棄を検討していくことになります。
2-1 損害賠償を支払う場合
亡くなった方の遺産で損害賠償が支払える場合は、相続手続きをして賠償金を準備していく流れです。銀行が故人の死亡を確認した時点から、相続人が決まるまで故人の口座は凍結されてしまいます。そのため、故人や相続人の戸籍謄本などの必要書類を準備して相続の手続きを行い、賠償金の資金を準備していきます。
示談で減額されるケースもある
示談によって鉄道会社と和解するケースもあります。鉄道会社が損害額を減額して請求をし、ご遺族が損害賠償を支払うケースです。
具体的には、損害の全額ではなくご遺族の家計状況や支払能力等をふまえて鉄道会社と話し合い、賠償額を決定します。
2-2 相続放棄をする場合
鉄道会社から請求された損害賠償が高額で、支払いが困難な場合は相続放棄を検討しましょう。
相続放棄とは、亡くなった方の財産も負債もすべて相続しない選択です。損害賠償債務は相続の対象になります。飛び込みで亡くなった方が支払うべきであった損害賠償については、その相続を放棄すればご遺族に支払い義務がなくなります。
相続放棄すると、貯金や不動産などの資産を受け取れませんが、借金や債務なども相続しません。相続放棄は個人の判断で行え、他の相続人がどのような判断をするかは関係なく行えます。
①相続放棄の期限は3か月
相続放棄するかどうかの判断は、「熟慮期間」と呼ばれる3か月の期限があります。相続開始を知った時点から3か月を過ぎてしまうと相続放棄できないのが原則です。ただし、財産の調査に時間がかかる場合は、裁判所に申請をすることでこの期間を延長できます(相続放棄の熟慮期間の伸長の制度)。
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②プラスの財産が賠償金額を上回る場合もある
賠償金を支払っても相続財産がプラスで残るようなケースもあるので、相続放棄の判断は慎重に行わなければいけません。
相続放棄をしてしまうと、本人名義であるすべての資産の相続権が第2順位の相続人へ回ります。たとえば、亡くなった方名義の家に住んでいた場合、相続放棄をすると不動産を相続できないので家を出ていかなければなりません。
相続放棄するかどうかの判断が難しい場合は、弁護士など専門家と一緒に考えることで適切な判断ができます。
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③相続放棄の手続きは家庭裁判所で行う
相続放棄の手続きを行うのは家庭裁判所です。具体的には、相続人が相続放棄する旨を申し出た際に、家庭裁判所へ書面による申立てを行います。申立書には、相続人の氏名や住所、相続放棄をする旨の意思表示を記載します。
④介護者の場合は相続放棄ができない
認知症などで介護を受けている人が人身事故を起こした場合、損害賠償請求は介護者へなされる可能性があります。
事故を起こした本人が認知症などで「責任無能力者」とされると、監督義務者が損害賠償債務を負うことになり、監督義務者である介護者が鉄道会社に支払いをしなければなりません。これは、民法714条に定められています。
介護者は相続人ではないため、支払が難しい場合は自己破産が選択肢に入ります。実際、2007年に認知症の91歳の男性が誤って線路に入り、JR東海の列車にはねられて死亡する事故がありました。この時、第一審では介護者であった妻と子に720万円の支払を命じられました。
3 生命保険は受取人の財産|相続放棄をしても受け取れます
損害賠償を相続放棄したとしても、生命保険金は受け取れます。
生命保険の保険金は受取人の財産とみなされる(受取人の固有の権利)ため、そもそも相続の対象にはなりません。たとえば、夫が飛び込みによって亡くなった場合、生命保険の受取人となっている妻は相続放棄をすることで、損害賠償の支払いをすることなく夫の生命保険は受け取れます。
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4 弁護士に相談するメリット
突然家族を失った悲しみのなか、鉄道会社から損害賠償が請求されると通常の思考・判断は難しいものです。そういったなかで請求への対応や、相続の手続きを行うのは疲労困憊になってしまいかねません。
弁護士に相談することで、状況に応じて適切な判断で解決をすすめてもらえます。さらに、複雑な手続きもサポートしてもらえ、精神的な負担を軽減できるでしょう。もし、ご家族が飛び込み自殺をしてしまったら、弁護士に相談することをおすすめします。
5 まとめ:電車飛び込みによる損害賠償は相続の対象。相続放棄は慎重に!
電車飛び込みによる損害賠償は基本的に相続の対象となり、配偶者やご両親などのご家族が債務を背負うことになります。しかし、相続放棄をすることで損害賠償の支払債務を逃れ、亡くなった方が契約していた保険会社から生命保険も受け取れます。
相続放棄は期間制限もあり、また、一度きりしかできない手続です。
不安な点があれば弁護士へ相談することを検討しましょう。
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